トピック
「資本主義って本当に正しいの?」──米国世論の変化が示す新しい現実
アメリカでは「資本主義=正義」という空気が長年続いてきました。しかし、最新のギャラップ調査によると、資本主義を「好意的」と見る人は**54%**まで低下。2000年代以降で最も低い数字となりました。
数字で見る「信頼の揺らぎ」
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2010年の初調査では、約60%が資本主義を肯定。以降2021年までほぼ安定。
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2025年調査では54%に低下。一方で社会主義肯定派は39%前後で推移。
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政治別では…
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共和党支持者:資本主義支持74%、社会主義14%。
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民主党支持者:資本主義支持42%、社会主義支持66%(初めて過半数が社会主義を支持)。
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なぜ資本主義離れが進むのか?
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雇用環境の不安定化:表面的には労働市場はタイトだが、若者の賃金上昇は停滞。
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アメリカンドリームの揺らぎ:「努力すれば報われる」という物語が信じにくくなっている。
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大企業への不信感:
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小規模ビジネス支持は95%、自由市場支持は81%。
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一方、大企業支持はわずか37%。2012年の58%から急落。
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政治的背景
民主党の一部では「社会主義的政策」への支持が広がり、NY市長予備選では民主社会主義者の候補が勝利。ただし、ウォール街に近い中道路線の民主党主流派とは依然ギャップがあります。
日本への示唆
日本でも「格差」「中抜き」「大企業優遇」への不満は広がっています。アメリカで進む「資本主義再考」の流れは、やがて日本にも波及する可能性があります。
まとめ
今回の調査は、「資本主義の神話」がアメリカで揺らぎつつあることを如実に示しました。とくに民主党支持者の間で社会主義への支持が広がったことは注目に値します。社会主義と聞くと冷戦時代のイメージが強いですが、実際には「医療や教育の公共支援をもっと手厚く」という現実的なニーズが背景にあります。
同時に、資本主義全体が否定されているわけではありません。人々は依然として小規模ビジネスや自由市場を支持しています。つまり「資本主義の形を問い直している」のです。日本でも、スタートアップや地元商店を応援する気持ちは強い一方、大企業の不祥事や価格カルテルには厳しい目が向けられます。
また、大企業支持が急落している点は、テックジャイアントへの不信と重なります。GAFAの独占的ビジネスモデルや、労働者を切り捨てるような姿勢は「資本主義の負の部分」として受け止められています。これは日本の大企業が「終身雇用」を手放し、効率化を進める流れにも似ています。
興味深いのは、共和党支持者は依然として資本主義支持が強いのに対し、民主党支持者は真逆の方向に進んでいることです。アメリカ国内の「資本主義 vs 社会主義」の対立構図は、今後の大統領選挙や議会運営を大きく左右するでしょう。
資本主義をどうアップデートするのか? それが米国政治の焦点であり、同時に世界全体に問いかけられている課題です。
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編集後記
今回のテーマは「資本主義の人気低下」でしたが、これは単純に「社会主義への転向」ではなく、生活実感に合った制度を求める声だと思います。若者にとって「努力=報われる」という構図はもはや幻想であり、奨学金の返済や住宅価格の高騰を前に、別の仕組みを模索せざるを得ないのです。
個人的には、この動きは日本にとっても他人事ではないと感じます。私たちも「終身雇用」「年功序列」といった旧来型の資本主義を見直しながら、新しい働き方や地域ビジネスをどう支えるかを考えるタイミングに来ています。
ニューヨークのAirbnb規制のように、規制強化が「一部の問題は解決するが本質は変わらない」ケースも多くあります。結局は「誰のための制度なのか」を突き詰めることが重要なのだと思います。
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