景気を支えるのは富裕層?米国消費の“片足立ち”現象

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トピック

富裕層が経済を下支えするアメリカの現実

アメリカ経済は今、奇妙なバランスの上に成り立っています。全体的には「消費堅調」と報じられるものの、その実態を掘り下げると トップ10%の高所得層が消費を牽引 している構図が浮かび上がります。

ムーディーズ・アナリティクスのチーフエコノミスト、マーク・ザンディ氏によると、2025年第2四半期の消費支出のうち、富裕層(上位10%)が占めた割合は49.2%。わずか1四半期で0.7ポイント上昇しており、格差の拡大を示しています。

高所得層が消費を支える背景

  • 株価の過去最高更新、住宅価格の上昇 → 富裕層の資産効果が拡大。

  • 中低所得層の収入はインフレで実質伸びず、消費は横ばい。

  • 富裕層は「株・不動産」という非流動資産を背景に、景気減速の中でも積極消費。

小売売上の実態

  • 全体の小売売上は前月比+0.6%(予想の2倍以上)。

  • **Eコマースが+2%**と絶好調。

  • 外食(レストラン・バー)も+0.7%で、夏のテラス席は満席。

  • 一方、デパート・家具などは減少傾向。

しかし裏側には…

  • 自動車ローンやクレジットカードの延滞が増加。

  • 雇用は減速モードに入り、失業不安が拡大。

  • 「資本主義への信頼」が揺らいでいるとの調査結果も。

つまり、景気は“足腰しっかり”というより、「富裕層の片足立ち」状態。もし株価下落や大規模レイオフが起これば、その片足が折れ、一気に不況に転落するリスクがあります。


まとめ

アメリカ経済の強さは、これまで「消費の底堅さ」に支えられてきました。しかし今回のデータから見えてくるのは、その土台がきわめて偏っているという事実です。

中低所得層の消費はインフレやローン返済の負担で伸び悩み。逆に株高・住宅高の恩恵を受けた高所得層が消費を拡大し、見かけ上の堅調さを演出しています。富裕層が支える経済は一見頼もしいように見えますが、リスクは大きい。なぜなら、彼らの消費行動は株価や資産価値に強く依存しているからです。

もし株式市場が反落すれば、高所得層の財布の紐は一気に締まります。その時、もともと消費に余力のない中低所得層には代替できる力がなく、景気は急速に冷え込むでしょう。これは「消費の二極化」が進んだ日本にも当てはまるテーマです。日本でも、資産効果を持つ一部層が高額消費を牽引する一方、多くの家庭が生活防衛モードにあるという構図は似ています。

今回の教訓はシンプルです。「一部の層の支出に頼る景気は不安定」。政策的には、中間層の所得底上げや社会保障の強化が必要でしょう。企業や投資家にとっては、ターゲット戦略を明確にすることが重要。高所得層向けのプレミアム市場は短期的に有望ですが、中低所得層の購買力を軽視すると、長期的な市場基盤を失うリスクがあります。

アメリカ経済は依然として“消費大国”ですが、その実態は「二極化の拡大」と「不安定なバランス」。今後の景気の行方は、株価だけでなく「誰がどれだけ消費できるのか」にかかっています。


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編集後記

今回のデータで「消費の二極化」が改めて浮き彫りになりました。個人的に感じるのは、米国の景気を支えているのは「みんなの消費」ではなく「一部の消費」だということです。これって実は日本でも同じで、旅行や高級品の売れ行きは好調なのに、スーパーでは値引き商品がすぐに売り切れる。両方が同時に存在しているのが現実です。

経済記事って数字が多くて冷たい印象になりがちですが、その裏に「誰が笑って、誰が苦しんでいるか」が必ずあります。今回のテーマをきっかけに、読者の皆さんも「自分の消費は景気にどう影響しているのか」を少し考えてみてはいかがでしょうか。お金の使い方って、意外と社会全体に響いているんですよね。

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