トピック
H-1Bに10万ドル!? 金曜夜の大号令で広がった「働けない不安」
金曜の大統領布告でH-1Bビザ手数料が215ドル→10万ドルへ(発効は翌0:01)。米テック各社の現場は一気に緊張、「今は絶対に米国外へ出ないで」と従業員に通達が飛び交いました。のちに「新規申請のみ対象、1回限り」とホワイトハウスが補足したものの、現場は大混乱。サンフランシスコ発の国際線で搭乗済みのインド人乗客が一斉に降機を要求して遅延したケースまで出ています。
H-1Bの基礎(日本の読者向けにさくっと)
-
対象:大学卒以上の高度専門職を雇うための就労ビザ
-
規模:昨年は約40万件が承認(うち更新が26万件)
-
職種:IT関連が中心。国籍は**インド71%、中国11.7%**が上位
-
今回の肝:企業は**「H-1B採用」か「10万ドル納付」か**を迫られる設計
日本でいえば「高度人材・特定技能の受入枠に突然巨額の負担がのる」イメージです。グローバル採用が当たり前の外資・日系米法人にとっては人件費と採用計画の大再設計が必要になります。
金曜→日曜までの“ジェットコースター”
-
金曜夜:布告。アマゾン、マイクロソフト、グーグルなどが社内メモで国外渡航の回避を要請
-
土曜:「新規のみ・一度限り」の補足が出るも、すでに帰国前倒しの買い直しで航空券に8,000ドル超を投じた人も
-
日曜:混乱は鎮静化傾向。ただし現場の渡航ガバナンスは厳格化へ
会社・社員・家族、それぞれのダメージ
-
企業:10万ドル負担は採用コストの激増。新規H-1B採用の内定保留・見直しが現実味
-
社員:渡航保険の適用範囲や、出入国タイミングでの就労資格リスクなど、心理的負担が増大
-
家族:配偶者・子どもの在留・学業にも波及。休暇・冠婚葬祭の渡航判断が一層シビアに
インドとの関係と、サプライチェーンへの影
-
インド政府は即反発。「家族・生活が壊れる」として協議を要求。
-
ITアウトソーシング(オフショア開発)の拠点配置や米国内のラボへの人材シフトが進む可能性。
-
コストは上昇:人材確保の逼迫でプロダクト開発の遅延・賃上げ圧力も。
実務チェック(雇用側・個人側)
雇用側
-
直近の**ビザパイプライン(新規/更新/トランスファー)**を棚卸し
-
採用方針:在米人材優先→H-1Bは必要最小限で戦略配分
-
予算の見直し:10万ドル負担込みの採用ROIを再試算
-
リスク分散:カナダ・メキシコ拠点やリモート越境の再設計
個人(H-1B保持者・応募者)
-
渡航は会社と事前合意、弁護士レターを常備
-
家族の在留・学校スケジュールも再確認
-
非常時の航空券・宿泊のセルフ手配ルールを整備
-
保険:キャンセル・遅延補償、ビザ関連トラブル対応の特約を確認
まとめると、今回は「制度自体の是非」以前に、アナウンスのタイミングと現場運用のギャップが市場・人材に直撃した格好です。対岸の火事ではなく、日系企業の米国子会社でも即日対応が求められるテーマでした。
まとめ
今回のH-1B騒動は、テック人材への“入口”に10万ドルという巨大なゲートを置くインパクトでした。翌日の補足で**「新規のみ・一度限り」と整理されたものの、現場の不確実性は露呈。採用現場は採用単価の急騰を前提に、在米人材の活用や近隣国拠点を組み合わせる多層的な人材戦略に舵を切るはずです。個人にとっては、渡航計画の“社内承認+弁護士確認”の二重化、そして保険・書類のアップデートが必須に。
一方で、Eコマースの世界では正反対の風景が広がっています。Etsy/eBayなどのハンドメイド市場はAIを採用し、レコメンド改善や自動応答で出品者の事務負担を圧縮**。モノづくりの“時間”を取り戻し、小さな作り手でも売れる可能性が広がっています。とはいえ、競合が増えるほど写真・説明・ストーリーの完成度が差を生むのも事実。AIは下支え、勝負はブランド体験で決まる——これがECの現在地です。
マクロでは、物価高×雇用不安のなか保存が利く“昭和的”食材が売れる現象が進行。ハンバーガーヘルパーの売上14.5%増は象徴的で、米国消費の節約モードを映します。所得やビザ、保険、物流といった生活を取り巻く“周辺コスト”の上昇が、消費選好をじわじわ塗り替える。企業は人材確保の設計を、個人は収支とスキルの再設計を——今こそ“働く”“売る”“備える”を同時に見直すタイミングです。
気になった記事
ハンドメイドECの現在地:Etsy・eBayがAIで“売れる導線”を作り替える
EtsyはLLM(大規模言語モデル)で商品データの整備・推薦を強化、eBayは画像AIで購入連鎖(シャツ→合うパンツの提案)を促すなど、巨大在庫を“見つけやすさ”で武器化。
-
規模:Etsyは年商28億ドル超、買い手9,550万人/売り手800万人(うち女性が80%)
-
AIの狙い:
-
買い手…膨大なSKUの中から直感的に出会える導線へ
-
売り手…問い合わせ自動化や出品テンプレで制作時間を確保
-
-
出品者の勝ち筋:
-
写真は“用途起点”(着用・設置・ギフトのシーンを必ず1枚)
-
タイトルは検索語を先頭に(素材・用途・サイズ)
-
説明は“贈る相手”で書き分け(母の日/新居祝い 等)
-
FAQをAI前提で整備(納期・関税・返品)
-
レビュー導線(同梱カード+QRでレビュー依頼)
-
日本のメルカリShopsやminneでも、AIサジェスト×運用型クリエイティブの考え方はそのまま使えます。“撮る・書く・返す”の型を先に作るのがコツです。
小ネタ2本
小ネタ①:米国スーパーに“昭和ストック”が帰ってきた
ハンバーガーヘルパーが14.5%増。ほかに米・ツナ・サーディン・豆・箱マックが好調。物価高×雇用不安のなか、安い・長持ち・失敗しないが支持を拡大。日本でも乾物・レトルト・冷凍の“まとめ買い回帰”が進むかも?
小ネタ②:超大型追悼式——100,000人超が集ったチャーリー・カークの葬儀
会場はNFLのスタジアム級。政権幹部・著名人が並び、保守運動の結束を象徴する場に。政治ムードは一段と緊張感を増し、メディア・表現の自由を巡る論争も過熱。政策・規制の振れ幅を意識した情報収集が必要です。
編集後記
金曜夜の布告→土曜の補足——たった24時間で、渡航予定や家族の予定がひっくり返る。働く人の人生は、制度の一文でいとも簡単に揺さぶられるのだと、改めて背筋が伸びました。いっぽうでEtsyやeBayのAI導入は、“作る人”の時間を取り戻す前向きな変化。不確実性が増すほど、私たちが握れるハンドル(制作の型、販売の型、生活の備え)を太くしておくことが効きます。
個人的には、今回の騒動で「社内・弁護士・家族」の三者合意という当たり前の手順を、危機時には**“前倒し”で回す必要性を痛感しました。
コメント