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アルゼンチン・ミレイ大統領、トランプにすがるも前途多難
アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領をご存じでしょうか?就任当初、チェーンソーを掲げて「既得権益を切り倒す!」と叫んだことで話題を集めた彼ですが、いまや経済の崩壊危機に直面しています。
国の外貨準備は急速に減少し、失業率は悪化。さらに汚職疑惑も重なり、支持率は急落中。そんなミレイが頼ったのは、盟友ドナルド・トランプ前米大統領でした。
トランプの「支援するが、救済はしない」スタンス
国連総会の場でトランプと会談したミレイは、全面的な支持を得たものの「財政支援(ベイルアウト)は不要」と突き放されました。
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米財務省は「安定化のためのあらゆる選択肢」を検討、直接融資も示唆。
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世界銀行は40億ドルの追加資金を前倒しで提供予定。
しかし、これは氷山の一角にすぎません。
ミレイ経済政策の問題点
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就任時に掲げた「インフレ退治」は一応成果あり:2023年26% → 先月1.9%へ。
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だが「ペソ高政策」が裏目に出て、輸出競争力を失い経済成長は急減速。
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外貨準備はわずか200億ドル、先週だけで11億ドルを費やし為替介入。
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来年には95億ドルの債務返済が待ち構える。
政治的リスク
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企業倒産や失業増加で国民の不満が爆発。
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10月の中間選挙を前に支持率は急落。議会での影響力低下が必至。
経済を立て直すどころか「時間稼ぎ」にしか見えない施策。ミレイのチェーンソー政治は、切り倒すどころか自らの足元を切り崩しているようです。
まとめ
今回のニュース群から見えるのは、「政治と経済の不安定さ」が世界に広がっている姿です。
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アルゼンチン:ミレイ大統領はインフレを抑えた功績を強調するも、ペソ高維持で外貨準備を浪費。支持率は急落し、選挙にも黄信号。トランプとの関係強化は一時的な安心材料にすぎません。
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エクソンの新株主制度:個人投資家の票を経営陣に同調させる仕組みは、企業に有利に働く一方、気候変動対策を求める株主提案の芽を摘む可能性があります。日本企業でも「物言う株主」が注目されるなか、影響は無視できません。
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アメリカ政治と社会:ジミー・キンメルの番組復活や、トランプの国連演説など、政治とエンタメが入り混じる状況。民主主義の土台である「言論の自由」がどこまで守られるかが問われています。
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世界経済:OECDは米国成長率が2024年2.8% → 2025年1.8% → 2026年1.5%へ減速すると予測。トランプの関税政策や雇用低迷も不安要素に。
結局、テーマは「不安定さへの対応力」です。経済危機に直面するアルゼンチン、株主の声を封じたいエクソン、政治エンタメ化するアメリカ、そして減速する世界経済。それぞれが突きつける問いは同じです――「混乱の中で誰が信頼を勝ち取れるのか?」。
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エクソン、株主投票を「自動化」し活動家を排除?
エネルギー大手エクソンモービルが導入する新制度が話題になっています。個人株主が「取締役会の推薦に自動で同調する」仕組みにオプトインできるようにするのです。
背景
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個人株主は全体の40%を占めるが、投票率は25%程度にとどまる。
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この「サイレント株主」を経営陣の票に取り込む狙い。
影響
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ESG(環境・社会・ガバナンス)関連の株主提案が通りにくくなる。
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「気候変動対策を求める声」を弱める結果につながる懸念。
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ブラックロックなど大手運用会社も類似制度を試験導入。
一方で「株主活動はなくならない」との声もあり、法的な挑戦が起きる可能性も指摘されています。
小ネタ①
ジミー・キンメルの番組が復活、トランプは訴訟を示唆
米人気司会者ジミー・キンメルの番組がディズニー親会社の判断で一時停止されましたが、わずか1週間で復活。彼は「私の意見に反対しても、発言の権利を守ってくれた」と共和党議員に感謝を述べました。
一方トランプはSNSで「前回ABCを訴えた時は1600万ドルもらった。今回も儲かりそうだ」と発言。政治とエンタメの境界がますます曖昧になっています。
小ネタ②
トランプ、国連で「この組織に意味あるのか?」と挑発
6年ぶりに国連総会で演説したトランプ前大統領。各国を痛烈に批判し、「国連に存在意義はあるのか」と挑発しました。
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気候変動を「詐欺」と切り捨て
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移民・エネルギー政策を批判
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ただしゼレンスキー大統領と会談後は「ウクライナは勝てる」と発言
国連の場を使っても、自身の選挙戦に直結するアピールを欠かさないあたり、やはりトランプらしい姿勢です。
編集後記
今回の記事を書きながら感じたのは、「世界中が同じような問題に直面している」ということです。アルゼンチンではペソ高政策が裏目に出て経済が崩壊寸前。アメリカでは株主民主主義が企業寄りに傾き、言論の自由は政治ショーに消費される。そしてOECDの警告が示すように、世界経済も減速の波に飲み込まれつつあります。
結局、強権的なリーダーシップも、斬新な制度設計も、万能薬ではない。大切なのは「持続可能性」と「信頼の積み上げ」だと思います。数字を操作しても、制度をいじっても、人々の生活や未来への期待はごまかせない。
混乱の時代に必要なのは派手なパフォーマンスではなく、地道な信頼の構築。次の選挙や次の四半期ではなく、次の世代を見据えた政治と経済。そんな視点を持つリーダーがどれだけ出てくるか――そこに未来の明暗がかかっているのではないでしょうか。
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