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中国が米国産大豆を“スルー”した日
「No soy de Estados Unidos(米国産はいらない)」——中国バイヤーの冷たい一言で、アメリカ農家は凍りつきました。秋の収穫期が始まった9月、中国は米国産大豆を一粒も買わなかったのです。記録上、初の事態。まさに**ソイパocalypse(大豆黙示録)**が始まりました。
背景にあるもの
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中国は報復関税で米国産大豆の価格競争力を無効化。
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アルゼンチンが輸出税を下げて、ちゃっかり最大の受益者に。
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米国農家は「倉庫に積むしかない」状況に追い込まれ、価格は1カ月で3%以上下落。
豆ひとつで揺れる世界経済
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米国の大豆輸出の半分以上を買ってきたのは中国。
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昨年は126億ドルの売上を誇った“ドル箱”。
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しかし今年9月18日時点で注文量は前年比37%減。
アメリカ農家にとって大豆は命綱。その市場を奪われれば「農場が丸ごと倒れる」レベルの打撃です。
農家の叫び
米国大豆協会の会長は「アルゼンチンに20億ドルの信用枠?その金をなぜ俺たちに回さない!」と政権に怒りの矛先を向けました。農家のフラストレーションは臨界点です。
今後の焦点
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来月のトランプ×習近平会談で「農産物カード」が主役に。
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トランプ政権は「関税収入で農家支援」案を検討中。
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しかし2018年の前回貿易戦争で失ったシェアはいまだ回復していない。
つまり今回のゼロ購入は単なる商取引ではなく、政治的メッセージ。「米国なしでもやっていけるぞ」という中国のデモンストレーションなのです。
まとめ
今回の大豆ゼロ購入は、単なる「輸出が減った」話ではありません。むしろ「食」が地政学の最前線にあることを象徴しています。
大豆は畜産飼料と食用油の基盤。中国にとっては「豚肉の値段」と直結し、庶民の食卓を守る生命線です。そのため調達先を一気に切り替えるのは、経済だけでなく政治的カードにもなります。
米国農家は補助金や融資で当座をしのぐかもしれません。しかし市場シェアを奪われれば戻るのは難しい。日本の自動車が一度アメリカ市場から締め出されれば、韓国や中国がすぐに代替するのと同じ構造です。
今回の勝者はアルゼンチン。一時的にせよ「救世主」として中国市場を押さえました。しかし経済基盤が脆弱なアルゼンチンにとって、この恩恵が長期的に続くかは不透明。
結局のところ、最大のリスクを背負うのは米国の農家。倉庫に積み上がる大豆の山は、単なる農産物ではなく「貿易戦争の証拠品」です。
私たちにとっても無関係ではありません。大豆は豆腐や納豆、味噌、しょうゆの原料。米国が中国に売れなければ、日本や他国に価格調整の波が回ってくる可能性があります。
要するに「食卓と外交はつながっている」。今回のソイパocalypseはその現実を突きつけています。
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コミー起訴でトランプ「他にもいる」発言
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小ネタ2本
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編集後記
大豆ニュースを読んで思ったのは、「豆一粒が外交を動かす」ということ。普段、豆腐や味噌汁を口にしながら国際政治を想像する人は少ないでしょう。でも、その裏で国家間の綱引きがある。
面白いのは、米国農家が苦しむ一方でアルゼンチンが臨時ボーナスを得て、中国は「交渉カード」を強化するという三者三様の構図。まるでカードゲームのように、大豆がテーブルの上を動き回っています。
日本も無縁ではありません。米中摩擦が激化すれば、調達価格や為替に波が立ち、私たちの食費に跳ね返る。つまり「国際ニュースは家計簿につながっている」。これを忘れると、「気づいたら納豆が1パック300円」なんて未来が来るかもしれません。
結局のところ、豆はただの豆ではない。「食」と「外交」の接点を映すリトマス紙なのです。
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