トピック
政府閉鎖は本当に経済を揺るがすのか?
米国では再び**政府閉鎖(shutdown)**が現実味を帯びています。ニュースで大騒ぎになるたびに「市場が大混乱に陥るのでは?」と不安が広がりますが、過去のデータを見ると実はそう単純ではありません。
歴史が語る「意外な耐性」
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2018年末から2019年初頭にかけての35日間の閉鎖:雇用はむしろ平均以上の伸びを示しました(22.1万人増 vs 年間平均16.6万人)。
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2013年の16日間の閉鎖:22万人の雇用増加で、その年の平均を上回りました。
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失業保険申請件数も通常の範囲に収まり、GDPや小売売上も目立った悪影響なし。
つまり、閉鎖自体は「マクロ経済への直撃弾」にはなってこなかったのです。
今回が違う理由
しかし今回の閉鎖は、従来型の「一時停止」では終わらないかもしれません。トランプ政権は恒久的な公務員削減をちらつかせています。
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政府閉鎖を口実に「非必須」とされた職員をそのまま解雇する可能性。
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これが現実化すれば、雇用統計に表れにくい「じわじわ型の景気悪化」を招きかねません。
FRB(連邦準備制度)の悩み
閉鎖で統計発表が遅れると、金融政策の判断材料が不足します。
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雇用統計やCPI(消費者物価指数)が出なければ、利下げや利上げの判断は「霧の中の航海」。
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民間データや代替指標に頼らざるを得なくなり、政策決定が「政治のノイズ」に左右されやすくなる。
投資家にとっての意味
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短期投資家:市場はデータよりも“噂”や“政治発言”に反応しやすく、ボラティリティが急上昇。
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中長期投資家:閉鎖が一時的なら、実体経済への影響は限定的。ただし「恒久的な人員削減」シナリオが出てきたら要注意。
結論:今回の閉鎖が「恒例行事の茶番」で終わるのか、それとも「経済構造に食い込むリスク」へと変質するのか。ここが最大の注目点です。
まとめ
政府閉鎖は歴史的に見れば「不便」ではあっても「壊滅的」ではありませんでした。データが遅れ、政府機能が一時的に止まっても、雇用や消費はほぼ通常運転を続けてきたのです。
しかし今回の閉鎖は従来と違い、トランプ政権が「解雇」というカードを切る可能性が指摘されています。もし数万人規模の職が恒久的に失われれば、それは単なる統計上の遅延ではなく、米経済の持久力そのものに影を落とします。
FRBは「データを基に利率を決める」と繰り返しますが、そのデータが出てこなければどうにもなりません。過去にも2013年の閉鎖では「統計の質が半年にわたり落ちた」との記録があります。つまり閉鎖の影響は短期的な数字だけでなく、政策判断の精度を鈍らせるという二次的リスクを孕んでいます。
投資家にできることは2つ。
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短期的なノイズに踊らされすぎないこと。
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閉鎖が“人員削減シナリオ”に進むかどうかを見極めること。
この2点を押さえておけば、たとえ統計が数週間遅れても、相場を読む目は大きく狂わないでしょう。
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小ネタ2本
① トランプ政権、映画に100%関税?
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② 紙の年金通知が終了
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編集後記
政府閉鎖のニュースを追っていると、「結局いつもの政治ショーじゃないか」と冷笑したくなる一方で、今回は妙に生々しさを感じます。理由はやはり「大量解雇」の可能性が議論に出てきているからでしょう。
数字が出ない相場というのは不思議なもので、普段は「数字に振り回されて疲れる」と愚痴る投資家も、データが止まると急に「不安で仕方ない」と言い出す。人間は結局、情報の有無そのものより「安心感」を欲しているのだと思います。
私自身も相場の世界を離れて、朝の一杯のコーヒーがいくらになったかで景気を測ってしまうことがあります。統計の代わりに生活感覚で経済を読む。これもまた、閉鎖が教えてくれる“逆説的なデータ”なのかもしれません。
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