「好調データ」と「不安な実感」——アメリカ経済の二重構造

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🙀 数字は強いのに、人々はなぜ暗い気分なのか

アメリカ経済は数字だけを見れば絶好調です。失業率は4.3%と低水準、株価は上昇を続け、GDP成長率も年率3.8%と力強い伸びを見せています。インフレ率も2.9%と比較的落ち着いている。それでも、多くのアメリカ人が経済に悲観的な見方をしています。

世論調査の結果

  • 65%が「毎月の生活費に圧迫感あり」(Axios Vibes調査)

  • ミシガン大学消費者信頼感指数は、2008年リーマンショック期より低い水準へ

  • コンファレンスボード消費者信頼感指数も低下し、2022年インフレピーク時を下回る

実感とデータのギャップ

  • 物価は緩やかでも「基盤価格」が高止まり → 牛ひき肉+12.8%、卵+10.9%、コーヒー+20.9%(前年比)

  • 給与の伸びが物価上昇に追いつかず、実質購買力が低下

  • AIやデータセンター投資がGDPを押し上げても、雇用効果は限定的 → 電気料金上昇という逆風も

政治的な要素も無視できません。トランプ政権への支持・不支持によって回答傾向に差があり、民主党支持層はより悲観的。しかし、共和党支持者でも2020年より大幅にネガティブな回答をしており、「体感景気の悪化」が党派を超えて広がっているのは確かです。


まとめ

「経済は好調」と言われても、人々の財布が軽くなれば不安は募ります。今回の調査が示すのは、統計と生活実感の乖離です。

まず、物価の「水準」問題があります。インフレ率は鈍化しているといっても、過去数年の急騰で押し上げられた価格は戻りません。牛ひき肉や卵、コーヒーといった日常的に購入する食品が大幅に値上がりしており、日々の買い物のたびに「高くなった」という感覚を突きつけられます。

次に、賃金の伸び悩みです。数年前は給与の伸びがインフレを上回っていましたが、現在は逆転。名目賃金が少しずつ上がっても、実質的な生活水準は下がるという「見えない圧迫感」が広がっています。

さらに、恩恵の偏りも不満の源です。株価は上昇しているものの、株を持たない層には無関係。AIやデータセンター投資はGDPを押し上げますが、雇用を増やすわけではない。結果として、「数字は明るいのに、自分の暮らしは良くなっていない」という不公平感が募ります。

こうした背景から、アメリカ人の景気認識はリーマン危機時と同等の水準に沈んでいます。とはいえ、調査結果が必ずしも「消費行動の急ブレーキ」に直結するわけではありません。近年は「不安を口にしながらも消費は続ける」という傾向が強まっており、景気そのものは堅調さを保っています。

つまり、今回のポイントは「統計が強くても、人々の心はついてこない」こと。数字だけを追うのではなく、生活者の実感に寄り添った視点がますます重要になっています。


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編集後記

「経済データの好調」と「生活者の不安」という、相反するテーマを取り上げました。統計を見れば景気は堅調ですが、日常の買い物で「前より高い」と感じる瞬間が増えれば、数字だけでは測れない不安が広がるのは当然です。

一方で、民間雇用の減少や金融政策の行方など、不安を増幅させる要因もあります。強いGDPや株高といった華やかな数字の裏で、静かに進む変化をどう受け止めるかが問われています。

こうしたときに大事なのは、統計や政治の大きな動きに振り回されすぎないことだと思います。もちろん無関心ではいられませんが、自分の生活を守る小さな判断や習慣が、やがて確かな力になります。心の火を小さくても絶やさずに持ち続けること。その積み重ねが、先の見えない時代を歩む支えになるはずです。

経済の見出しがどんな色合いでも、私たちが選べるのは日々の暮らしの中での小さな一歩。

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