■ トピック
——マイクは落とされ、シリコンは熱く、空気は冷たい。
AIチップの王者・NVIDIAと、挑戦者・AMD。
この2社のライバル関係が、ここにきて冷戦のような緊張感を帯びてきました。
きっかけは、AMDがOpenAIに最大10%の株式を提供するという大胆な提携を発表したこと。
これに対し、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOはCNBCのインタビューで一言。
「まだ製品ができてもいないのに、会社の10%を渡すなんて驚きだね。」
まるで“優等生が隣の席の転校生を軽くディスる”ような皮肉です。
この発言が火に油を注ぎ、業界は一気にざわつきました。
AMD株は前日比+24%の暴騰。OpenAI向けに6ギガワット分のGPU供給契約を発表し、
一方でNVIDIAはすでに最大1000億ドルをOpenAIに投資しており、
AIデータセンター建設に拍車をかけています。
つまり、OpenAIをめぐる構図はこうです。
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NVIDIA: 投資 → チップ供給 → Oracle経由でAI運用支援。
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AMD: 株式供与 → GPU供給 → 自前のAI生態系を構築。
お互いがOpenAIという“AIの心臓”をめぐって、血液(資金)を循環させる。
もはやテック界は「AI冷戦」ではなく、**AI軍拡競争(Arms Race)**です。
Wedbushのアナリスト、ダン・アイヴスはこう評します。
「これはテック界の1996年。インターネットが誕生した時と同じ瞬間だ。」
AMDは“勢い”で勝負、NVIDIAは“体力”で包囲。
市場価値ではまだNVIDIAの10分の1ですが、
AMDの挑戦は、AI市場を一段と面白くしています。
■ まとめ
「AI時代の勝者は誰か?」という問いに、いま明確な答えはありません。
ただひとつ確かなのは、半導体企業が新しい“通貨”を握っているということです。
2020年代の資本主義において、金やドルよりも価値を持つのは「計算能力(Compute Power)」です。
データセンターの電力、チップの供給量、モデルの訓練速度──
それらすべてが新しい時代の経済指標になっています。
今回のNVIDIAとAMDの争いは、単なる企業間競争ではありません。
OpenAIという「知能のプラットフォーム」を誰が支配するか。
それはAI時代のインフラ主権争いです。
NVIDIAはチップ設計・供給・投資を一気通貫で抑え、
AMDはOpenAIに“株式”を渡すことで、まるで「血盟」を結んだような形を取っています。
皮肉なのは、どちらも最終的には同じ目的──AI覇権の維持──に向かっていること。
NVIDIAが1000億ドル投じたのも、AMDが10%差し出したのも、
根底にあるのは「AIを支配する者が、次の経済を支配する」という確信です。
かつての石油戦争が“エネルギーの覇権”をめぐる争いだったように、
今は“計算資源”という見えない石油を奪い合う時代。
データセンターは新しい油田であり、GPUはそのポンプ。
OpenAIを中心に、NVIDIA・AMD・Microsoft・Oracleが絡み合う構図は、
一種の**「AI版OPEC」**に見えなくもありません。
■ 気になった記事
📡 Verizon、宇宙に進出
VerizonがAST SpaceMobileと提携し、衛星経由のスマホ通信サービスを2026年にスタート予定。
地上ネットワークと衛星を統合し、どこにいても通信できる仕組みを目指します。
ASTはすでに株価+285%(年初来)。
一方でライバルのSpaceX(Starlink)もT-Mobileと組み、170億ドルの周波数契約を締結済み。
宇宙も通信も、結局は“誰が先に電波を握るか”の争いです。
■ 小ネタ① 🤖 ソフトバンク、またロボット買う
ソフトバンクがスイスのABB社の産業ロボット部門を54億ドルで買収。
孫正義氏は「次の成長の柱は物理的AI」とコメント。
AIが頭脳なら、ロボットは手足。
もはや彼の野望は“地球ごとペッパー化”しそうな勢いです。
■ 小ネタ② 💊 Amazonが薬の自販機を設置
Amazon PharmacyがロサンゼルスのOne Medicalクリニックに処方薬キオスクを設置。
診察後すぐに薬を受け取れる仕組み。
もはやAmazonは「本を売る会社」ではなく、「時間を売る会社」になりました。
■ 編集後記
——NVIDIAとAMDの喧嘩を見ていると、まるで学生時代の優等生バトルみたいです。
「成績トップの座を譲らないNVIDIA」と「奨学金で追い上げるAMD」。
どちらも必死だけど、どこか楽しそう。
結局、こういう競争が世界を前に進めるんですよね。
とはいえ、AI市場の“熱量”はもう人間の感情を超えてきています。
1000億ドル単位の投資が飛び交い、電力は国家レベルで奪い合い。
ここまでくると、**「知能を作るために人間が疲弊する」**という本末転倒な構図すら感じます。
でも面白いのは、AI時代になっても結局やってることは昔と同じなんです。
「アイツより速く、うまく、安く」──ただそのスケールが宇宙規模になっただけ。
人間の競争心って、本当にしぶとい。
フアンCEOの「10%も株渡すなんて驚きだね」というコメント、
あれ、たぶん半分は本気で、半分は嫉妬です(笑)。
ビジネスの世界は、才能よりもタイミングと皮肉のセンスがモノを言う。
結局この“AI冷戦”も、最後に笑うのはたぶんユーザーです。
チップの性能が上がり、AIが進化すれば、我々はもっと楽になる。
だから少しだけ、フアンとAMDに感謝しておきましょう。
彼らのケンカのおかげで、私たちは今日も快適にChatGPTを使えているのです。
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