■ トピック
——ワシントンでは、いまも電気が消えたまま。
米政府の一部閉鎖が続くなか、上院多数党院内総務ジョン・スーン(共和党)が新たな一手を検討しています。
それは「省庁ごとに単独法案を出して、政府を少しずつ再開させる」という、なんとも手作業感あふれるプラン。
つまり、政府全体をまとめて再開させる「一括予算案」ではなく、
防衛省・農務省・教育省…と部門ごとに手動で再起動していくという方法です。
彼が最初に狙っているのは「国防予算」。
兵士の給与を支払う法案を単独で可決させようという狙いですが──
民主党の同意が必要なため、現実的にはかなり険しい道です。
スーン氏はこう言いました。
「デモクラッツが何もさせてくれないなら、こっちはできるところから動くしかない。」
彼を支持するのは、上院歳出委員長のスーザン・コリンズ(メイン州)。
「通過済みの法案からすぐに処理すべき」としてスーン案を後押ししています。
しかし、民主党側のパティ・マレー上院議員は冷静です。
「それをやったところで、結局は下院と大統領のサインが必要。どこにも近づいていない。」
要するに、スーンの“省庁別再開作戦”は、政治的なアピールにはなるけれど、
現実には「動いてるフリ」にすぎない。
一方で、兵士たちは来週にも初の給料未払いに直面します。
共和党は「兵士を救うための法案だ」と強調しますが、
民主党がそれを通せば“政府閉鎖の交渉カード”を失うため、簡単には動けません。
結局、どちらも人質を取っている。
そしてその人質は、給料を待つ軍人たちです。
■ まとめ
アメリカの政治は、いまや「交渉」ではなく「演出」になっています。
かつて政府閉鎖は「国家の危機」でしたが、いまは定番イベントです。
与党も野党も「責任をなすりつける構図」に慣れ、国民の怒りももはやルーティン。
今回のスーン案も、その延長線上にあります。
「軍人を助けるための法案」という名目は立派ですが、
実際は“俺たちは動いている”と見せるためのパフォーマンス。
なぜなら、もし本気で再開したいなら、最初から短期予算案(CR)を可決すれば済む話だからです。
スーンもマレーも、コリンズも、誰も本気で戦っていない。
彼らが戦っているのは、世論と“責任の矢印”です。
議会内では「誰が悪いか」を決めることが仕事のようになり、
「どうやって動かすか」は二の次。
アメリカ政治は、責任の劇場化という新しい段階に入っています。
それでも、現場は止まっています。
兵士の給与は滞り、官庁は閉まり、空港は遅延し、
市民は「またか」とため息をつく。
民主主義の終わりは暴力や革命ではなく、
「期待しないこと」から始まる。
そして、それがいま静かに進行しているのかもしれません。
■ 気になった記事
🍜 タイ料理と政治
民主党のジャンヌ・シャヒーン上院議員(引退予定)は、
共和党議員たちとこっそり**タイ料理店で“和平交渉”**をしていたことが判明。
メニューの辛さより、政治のスパイスが効いた夜でした。
彼女はこう語ります。
「政府を開けるには、まず口を開くことからよ。」
本当にうまいこと言います。
ワシントンでは、レッドカレーよりレッドテープ(官僚主義)の方が辛い。
■ 小ネタ① 💣 共和党内も亀裂
下院では、マイク・ジョンソン議長に対して不満が噴出。
「もう休会はやめて働け」と叫ぶ声まで。
兵士の給与支払い法案を止めたことで、党内の穏健派が激怒しています。
政治の世界も、もはや上官より部下の方が怒っている。
■ 小ネタ② 😤 国会ヒートアップ3連発
・民主党議員が「新人を就任させろ」と叫ぶも、共和党が強制終了。
・共和党のマイク・ローラーが民主党リーダーのジェフリーズに「市長候補を支持するのか」と詰め寄る。
・アリゾナ勢の怒号が飛び交う議場は、まるで中学校のHR状態。
こうなると、議会の空気は冷房より冷たいのに、態度は真夏です。
■ 編集後記
——アメリカの政治を見ていると、だんだん国会中継がコメディに見えてきます。
誰も仕事をしていないのに、全員が「働いてる感」だけは全力。
上院ではスーンが“省庁ごと再開プラン”を出して拍手喝采、
下院ではジョンソンが「兵士の給与は後回し」と言って炎上。
もう脚本家がいそうな展開です。
思えば、アメリカ政治はずっと「ショー」なんですよね。
演説はプレゼン、委員会はドラマ、選挙はリアリティ番組。
有権者は観客で、拍手かブーイングを送るだけ。
だけど、その舞台装置の裏で、本当に困っている人たちがいる。
給料が止まる軍人、保育所が閉まる家庭、補助金が止まる地方自治体。
**「政治家のゲームの犠牲者」**という言葉が、いまほどリアルな時代はない。
それでもテレビでは今日も「どっちが勝つか」ばかり。
まるで国の運営が“試合”みたいに語られている。
でもね、国はスポーツじゃないんです。
勝ち負けより大事なのは、止めないこと。
誰かが働き、税金が動き、暮らしが続くこと。
それを思い出させてくれる政治家が、今のワシントンには何人いるでしょうか。
――おそらく、タイ料理店の片隅で静かに話している人たちくらいです。
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