🥪「TACO相場」再び?—“今回は辛口”な市場が怖い理由

TECH:meme

深掘り記事

結論(ファクト)

  • 米中の貿易摩擦が再燃しました。中国がレアアース輸出の新規制を発表→トランプ大統領が対中輸入品に最大100%の追加関税を示唆。

  • 先週、株式市場は1日で約2兆ドル分売られる急落。その後は押し目買いで戻すも、再び緊張が高まる展開です。

  • ウォール街では「TACO(Tariffs Are Coming, but he’ll chicken Out)=“関税を言うだけで最後は引っ込める”という期待」が株価の下支えになってきましたが、今回は中国側のエスカレーションが強く、同じパターンが通用しない可能性が指摘されています(Unlimited FundsのBob Elliott氏)。

筆者の見立て(意見)

  • 今回の相場は、いわば“同じタコスでも辛さ倍増”。「言うだけ番長で終わる」というTACO相場のプロレス的構造が崩れれば、AI期待で持ちこたえてきた株式市場にも素の地力が問われます。

  • 労働市場の弱含み(政府統計が止まる中、民間データが示唆)や生活必需品の物価高が家計のストレスに。住宅・小売など実体経済に近いセクターが先行して鈍るなら、大型テックにも逆風が波及しやすい構図です。


1)TACO相場の“効き目”が薄れるメカニズム

ファクト

  • Elliott氏は「中国側が先に踏み込む局面が増え、解決の主導権が米国側にない」ことをリスク視。TACOは“最後は大統領が引っ込める”ことが前提ですが、相手が積み増してきたら、米国単独の“引き”だけでは収まらない可能性が高まります。

  • さらに、雇用の減速感・消費者の不満(生活必需品の高止まり)・住宅や小売の鈍化など、景気の地合い自体が前回より悪い。AIテーマは熱いものの、**今のキャッシュフローの大半は広告・小売など“旧来のリアル経済”**から来ています(Elliott氏)。

補足(注釈)

  • TACO相場:2018年以降の米中摩擦期に市場で半ば“ネタ化”した投機的期待。関税を示唆→市場が下落→政権がトーンダウン→反発…の繰り返しに賭ける取引のこと。

  • レアアース:ハイテク・防衛・EV等のキーパーツ。採掘より精錬・加工のボトルネックが多く、供給ショックが価格と供給網に波及しやすい素材群。

筆者の見立て(意見)

  • “TACOの期待値”が下がる=ボラティリティ(値動きの荒さ)が上がる。AI一本足打法の市場で、実需セクターの失速が“本丸(大型テック)”の再評価を呼び込む展開は要注意です。


2)消費の“ひび”を銀行が先に嗅ぎ取る

ファクト

  • JPMorganは貸倒引当金を34億ドル計上(前年比+10%)。貸倒(チャージオフ)も26億ドルに増加、主因はカードとホールセール(法人向け)

  • サブプライム自動車ローンのTricolor破綻で、同行のIB部門は5.67億ドルの打撃、うち1.7億ドルが当該破綻関連。

  • ダイモンCEOは「“ゴキブリ”は1匹見えれば他にもいる」と警鐘。プライベートクレジット(非上場・非銀行の直接融資)についてもアンダーライティングの質の不透明さを懸念。

注釈

  • プライベートクレジット:銀行以外の貸し手(ファンド等)が直接企業に資金を出す市場。規制・開示が相対的に緩いため、問題が顕在化するまで見えにくい。2008年以降に3兆ドル規模まで肥大化。

筆者の見立て(意見)

  • 家計のカード延滞とサブプライム周辺の微細な“ほつれ”は、景気の転換点に先行して出ます。信用の縮み→消費・投資の鈍化→利益率の圧迫という負の連鎖を、プライベートクレジットの調整が加速させるリスクは頭に置くべきです。


3)それでもディールは動く——“利下げ待たずに”好調な投資銀行

ファクト

  • ゴールドマン、JPM、シティ投資銀行(IB)フィーは前年比で増加。利下げが来なくても、M&A・IPO・社債発行の回復が手数料収益を押し上げています。

  • ただし、これは「資本市場が強い=実体経済も磐石」を意味しません。信用の亀裂は多くの場合、“盛り上がっている最中”に水面下で進行します。

筆者の見立て(意見)

  • “表の賑わい(IB)”と“裏のひび(信用)”のコントラストが、今期決算の最大の読みどころ。TACO期待が外れ、家計が鈍るなら、バリュエーションの再調整は避けにくいでしょう。


まとめ

事実(本文出典に基づく)

  • 米中の緊張は、中国のレアアース規制強化→米国が最大100%関税の可能性という双方向の応酬で再点火。株式市場は1日2兆ドルの時価総額蒸発を経験。

  • ウォール街の一部は「TACO(最後は引っ込める)」に依然期待するも、今回は中国が主導的に強化しているため、収束の主導権が米側にないとの指摘(Elliott氏)。

  • 労働市場は政府統計の空白で不確実性が増し、民間指標は採用の弱含みを示唆。消費者は物価高に疲弊、住宅・小売など**“リアル経済”連動セクター**に鈍化の兆し。

  • JPMは引当金増額カード・法人向けで貸倒が増加。Tricolor破綻がIBに波及し、ダイモンCEOはプライベートクレジットの不透明さに警鐘。「ゴキブリは1匹ではない」という比喩で、点在する信用リスクの連鎖を示唆。

  • 一方で投資銀行ビジネスは堅調。利下げ無しでもM&A・IPOが回復し、手数料は前年増。市場の**“表の活況”と、信用面の“裏のきしみ”**が共存。

解釈(筆者の意見)

  • 市場が支えにしてきたTACOの「安心神話」は、相手が踏み込む局面では機能しにくい。AI期待が指数を持ち上げても、キャッシュの源泉は広告・EC・端末販売など実体経済。消費の鈍化が広がれば、“AIの物語”と“決算の現実”の乖離に直面します。

  • 信用イベントは往々にして点から線へ。サブプライム自動車やカードの延滞増は“序章”で、プライベートクレジットの選別が始まると、借り手の再調達コストが跳ね、ファンドの評価も揺れます。銀行が早めに引当を積むのは合理的な防御。

  • 企業・投資家にとっての実務的示唆は3つ。①サプライチェーンの対中依存度(特に素材・加工)を棚卸しし、代替ルートの確保を前倒し。②価格転嫁の持続可能性を再点検(消費の粘り弱化に備え、仕様・容量・販促の微調整で“実質値上げ”を抑える)。③資金繰りのダブル・ハッチを用意(銀行線が細る時に私募・社債・棚卸資金の回転率改善で凌ぐ)。

  • マーケット戦略としては、実需感応度の高い銘柄のガイダンスとカード延滞率サブプライム系ABSスプレッドプライベートクレジット関連のディストレス指標の**“同時悪化”に注意。TACOが外れた瞬間、バリュエーションの圧縮**は速いです。

  • まとめると、“前回と同じタコス”ではない辛味増しの地合いでは、守りの設計(在庫・調達・資金・ガバナンス)こそ攻めの布石になります。


気になった記事:「消費のひび」をダイモンは見ている

事実

  • JPMorganは引当金34億ドルチャージオフ26億ドルTricolor関連1.7億ドルを含むIB打撃5.67億ドル

  • ダイモンCEO:「ゴキブリは1匹ではない」「プライベートクレジットの審査の質は見えない」。

  • JefferiesもFirst Brands(オート部品、破綻申請)へのエクスポージャーで観測気球。ただし「十分吸収可能」と説明。

解説(意見)

  • 信用の初動はサテライト市場(自動車・カード・小口与信)に出ます。ここが荒れれば、私募債・LBOローンプライベートクレジットに飛び火。銀行が早めに警戒モードに入ったのは“正常”。

  • 日本企業・投資家は、仕入先・得意先の北米クレジット露出を再点検。回収サイト短縮在庫ファイナンスの更新条件を、いざという時に詰められるよう**“予備交渉”**を。


小ネタ①:DoJ、ビットコインを山ほど押収

事実

  • 米司法省(DoJ)が約150億ドル相当のBTCを押収。同省史上最大の没収作戦

  • 容疑は**“Pig Butchering”型詐欺**(情に付け込んで資金を吸い上げる手口)。プリンス・ホールディングス創業者のChen Zhi氏が関与したとされるが、本人は逃走中

  • 米財務省は同社を犯罪組織指定し、米企業との取引禁止に。

ひとこと(意見)

  • クリプトはKYT(Know Your Transaction)と資金洗浄対策の網が急速に強化。**“資産差押えリスク”**を織り込んだ運用体制が前提に。


小ネタ②:利下げ待たずに動くディール、ただし足元の家計は固くない

事実

  • ゴールドマン/JPM/シティIBフィーは前年比増

  • 一方でカード・サブプラ自動車の指標は悪化傾向。

ひとこと(意見)

  • “資本市場の回復”>“家計の体力”というねじれ見出しは好調、脚はガタ——の図に気をつけたいところです。


編集後記

タコスは好きですが、“TACO相場”は胃もたれします。関税カードがちらつくたびに、マーケットは「どうせ最後は引っ込める」とタカをくくる——その油断が今回いちばんの敵かもしれません。
AIの物語は美しい。けれど、現金のにおいはもっと正直です。大型テックのキャッシュは、広告、サブスク、EC、端末販売など、私たちが毎日払っているお金から湧いています。財布の紐が固くなれば、物語よりレシートが強い。

ダイモンの「ゴキブリは1匹じゃない」は、言い得て妙。私たちの現場でも同じです。コスト超過の“1匹目”を見つけたら、企画・物流・与信・在庫のどこかに**“兄弟”**がいます。
だからこそ、景気減速の入り口でやることはシンプルです。在庫の回転、与信の見直し、価格条件の再交渉。華やかな生成AIのデモより、地味な棚卸しのほうが効きます。

TACOが外れたらどうするか。——“辛味”に耐える配合を、レシピに加えるだけです。調達先を一つ増やす、契約の見直し条項を一つ差し込む、支払い条件を一週間前倒しする。どれもニュースにはならないけれど、決算には効く

最後に、相場に効く魔法の言葉をひとつ。「想定内にする」。想定外は市場の大敵ですが、**想定内になった瞬間、それはリスクでなく“変数”**になります。TACOも、プライベートクレジットも、サブプラ自動車も。変数化してしまえば、怖さは半分。
タコスはおいしく、TACO相場は冷静に。

コメント

タイトルとURLをコピーしました