深掘り記事
今日のテーマはシンプルに見えて、ものすごく複雑です。
「コンテンツ(中身)」「器(配信プラットフォーム)」「お金を払う人は誰か」が、全部ごちゃまぜで再編され始めています。
登場人物はざっくり3つの勢力です。
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映画・ドラマ・ニュースといった“伝統メディア”を抱える企業
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それを配信する巨大プラットフォーム(YouTube TVなど)
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そしてもう一群、社長自身がメディア化してファンも広告も売ってしまう「経営者=インフルエンサー」モデル
まずは、一番ドラマチックなところからいきましょう。
ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(以下WBD)です。WBDは映画スタジオと巨大な番組ライブラリ、そしてHBO Max(ドラマの強いサブスク系ストリーミング)などを抱える、言わば“ハリウッドの原石倉庫+配信口”みたいな存在です。
このWBDをめぐって「本気で取りに行きたい」という企業が複数名乗りを上げている、とアナリストたちは見ています。候補として名前が挙がっているのは、いわゆるレガシー(昔からの)メディア企業だけではなく、Comcast(米ケーブル・メディア大手)や、Apple、Amazon、Netflixのようなテック・ストリーミング勢、さらにはプライベートエクイティ(投資ファンド)などです。
WBDはすでにParamount(米メディア企業)からの複数の打診を断っているとされていて、むしろ「だったら他にもっといい条件を出せるところいない?」と市場にサインを出すことで、競り合い=ビッディング・ウォーを起こそうとしている構図に見えます。アナリストからは「これは株主価値を最大化するチャンスだ」という声も出ています。つまり「うちをほしいなら、もっと積んで?」というわけです。
ここで1つわかるのは、「映画スタジオ」「ライブラリ(著作権の塊)」「配信権」をセットで持っている会社は、今や将棋の“飛車角”クラスの駒だ、ということです。なぜなら、コンテンツは今後AIでいくらでも要約され、切り抜きされ、字幕や音声が多言語で再配信される時代。だからこそ「オリジナルを生み出せる権利」と「そのオリジナルを直接届ける権利」を同時に持っている企業は、巨大テックにとっても喉から手が出るほど魅力的なインフラになっているのです。
ただし、これは資本力と政治力のゲームでもあります。
どんな買収でも最後は規制当局(独禁法など)を通さなければいけないからです。たとえばParamountはすでにSkydanceとの合併プロセスを経ており、新しい体制(Paramount Skydance CEOはDavid Ellison氏)と、その背後にある資本・人脈が政権と近い、といった見られ方もしています。こういう“ワシントン筋への顔パス”は、メディアM&Aでは昔から超重要な差になります。つまり、お金と権利だけでなく「政治的にOKか」までセットで勝負しないと、コンテンツ帝国は買えない。
実務の話に落とすと、これは日本企業にとっても大きなヒントです。
「うちはコンテンツ企業ではないから関係ない」ではなく、いまメディア資産(映画・番組・スポーツ中継・ニュースブランドなど)は普通の“事業部”ではなく、国家や大手プラットフォームの交渉カードになっています。つまり、メディアはますます“戦略兵器”化している。事業ポートフォリオの再編・スピンオフ・合弁で、「どの資産を残す? どの資産は売る? どこは分社化して価値を高く見せる?」という資本戦略こそがトップマター(経営課題のど真ん中)になるということです。
WBD側は、自分たちの価値を最大化したい。一方でParamount側は、Skydanceとの大型再編を済ませた今、次はコストカット(要するにリストラ)が待っていると報じられています。社内ではCBSニュースなど複数部門でレイオフ(解雇)が予定されており、16年続いた看板アンカーが離れるというような動きも出てきています。買収・合併・再編は、きれいごとではなく「明日、誰が席に残れるのか」という血の話でもあるのです。
では次の勢力、プラットフォーム側を見てみましょう。
今アメリカで、一番“テレビ局っぽい顔”をしているのは、実はテレビ局ではありません。YouTube TVです。YouTube TVというのは、YouTubeが提供する有料の“ネット経由のテレビサービス”で、すでに800万人以上の契約者を抱え、月間のテレビ視聴全体のうち12.6%もの視聴時間を取るレベルに達していると示されています。これは、NetflixやDisney+といった配信サービスよりも、アメリカの視聴時間という意味では圧倒的に大きい存在感です。
で、こうなると何が起きるか。
答え:従来型のチャンネル(ESPN、ABC、ディズニー系エンタメチャンネルなど)が「そのまま配信していい条件」をめぐって、YouTube TVとすさまじい交渉になるわけです。いまDisneyは「条件まとまらなかったら、うちのチャンネルごとYouTube TVから消えるかもしれないよ?」と、ユーザーに直接警告しています。つまり視聴者を巻き込んだ人質交渉です。これ、地上波やケーブルの“再送信料交渉”のネット版です。
YouTube TV側は「別に全部丸ごといらないよ、スポーツだけ別パッケージでもよくない?」という再編のアイデアも持っているとされます。ESPNのトップも「ビジネス条件次第では、ジャンル特化パッケージもありだよ」と話しています。つまり、いよいよコンテンツが“チャンネル”ではなく“カテゴリ別サブスク”にバラされようとしている。スポーツはスポーツで別料金、ニュースはニュースで別料金…という分売の世界です。
これ、日本の視聴習慣に当てはめると、地上波キー局とDAZNとアベマTVとNetflixと、ケーブルスポーツ専門チャンネルと…を自分好みに組み合わせて払うということに近いです。もはや「リモコンのチャンネル順」ではなく「自分の財布の優先順位」が編成表になる。プラットフォームは“誰のコンテンツを抱えるか”で力を持つ一方、コンテンツ側も「おたくに配信してもらえなきゃ困る視聴者規模だけど、安売りはしたくない」という駆け引きを続けることになります。
しかもYouTube TVのような“バーチャルなテレビ局”は、昔のケーブルTVに課されていたのと同じ規制を必ずしも受けていません。だからこそ、契約条件も柔軟に再設計できる余地があり、結果的に従来メディア側は防戦になりやすい。この非対称性が、これからの放送・スポーツ権利の価格を決めていく可能性が高いのです。
そして3つめ。
メディア企業のトップが、自分自身を「コンテンツ」として売り出し、その個人ブランドを会社の収益源に組み込む動きが、はっきり顕在化してきました。
たとえば米誌The AtlanticのCEOであるニコラス・トンプソン氏。彼はただの経営者ではなく、ランニングをテーマにした本を出し、LinkedInには160万人超のフォロワーがおり、毎日「テックで一番おもしろいこと」を短い動画で発信し、月刊のニュースレターも50万人近い購読者を持っています。ここがポイントで、そのニュースレターはスポンサーを取っていて、The Atlanticにとって直接の売上チャネルになっていると説明されています。さらに、AIに関する発信をもとにPwC協賛のポッドキャストまで展開し、The Atlanticのブランド価値(=知的・上質・時流に強い)をCEO自身の“顔”を通じてマネタイズしています。
このモデルは、かつてのメディア経営者像とまったく違います。「社長は裏方、表には出ない」はもう過去の話。むしろ今は「社長が看板インフルエンサー」であり、その社長の発信が会社の営業・採用・ブランド戦略と直結します。The Atlanticだけではありません。AxiosのCEO、The InformationのCEO、PunchbowlのCEO、The Free PressのCEOなど、米メディアのリーダーたちが自分の声や番組やコラムを“本体コンテンツ”に織り込んでいます。
これが意味することは2つ。
1つ目は、“メディア企業そのもの”よりも“メディア企業の顔”に対して広告主がつく流れが強まっていること。つまり「会社」より「人」。
2つ目は、トップ自らブランドの価値を具現化することで、社長が直接マーケと営業まで背負うようになったこと。これは冷静にいうと、めちゃくちゃハードワークです。経営もしつつ、毎日SNSと動画、そして書籍やポッドキャストで露出し続けるわけですから。
でも、これが今の“指名買い”時代には効きます。BtoBでもBtoCでも、「どの会社ですか?」より「誰がやってる会社ですか?」が買い手の判断基準になることが増えました。特にAIやメディアのような“信頼がすべて”の領域だと、最終的に信用できるのは「この人が言ってるから」という名前と顔です。日本企業も他人事ではありません。生成AI、メディアビジネス、新規SaaS。どれも、「会社の理念」より「この人が責任者だから買いたい/使いたい」という買われ方に確実に寄っています。
まとめると、WBDをめぐる買収合戦、YouTube TVとディズニーのチキンレース、そして“社長インフルエンサー化”。これらは別々の話のようで、実は1本の線でつながります。
その線とは、「誰が視聴者と直接つながっているのか?」です。
・WBDクラスの巨大コンテンツ資産を手にする企業は、視聴者の“時間”をまとめて押さえられる
・YouTube TVのような巨大プラットフォームは、視聴者の“入口”を押さえられる
・CEOがインフルエンサー化する会社は、視聴者の“信頼”を個人の顔で押さえられる
時間・入口・信頼。この3つを押さえたプレイヤーが、メディアの主導権を握る時代に、私たちは入りつつあります。
まとめ
今回の主役は、表向きは「エンタメ業界の話」に見えます。でも、実質は「どこが世論と消費をコントロールできるのか」という超ストレートな権力争いです。
まずワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)。映画スタジオ+名作ライブラリ+HBO Maxのようなプレミア級コンテンツを抱える巨大メディア企業に対して、Paramount、Comcast、Apple、Amazon、Netflixといった企業群が“手を挙げるかもしれない”とみられる状況になっています。WBD側は、Paramountからの打診を複数回はねつけたとされ、逆に「もっといい条件を持ってこられる人いない?」という姿勢を取り、いわばオークション状態をつくろうとしている。これがアナリストの言う「ビッディング・ウォー(入札合戦)」の観測です。株主的にいうと、これは価値最大化のチャンスでもあるわけです。
ただしお金だけでは決まらず、政治と規制がからんできます。なぜかというと、メディア大再編は必ず独占禁止法の審査を通るからです。Paramount側はSkydanceとの合併で新体制になっており、規制当局と丁寧に“お付き合い”してきた好印象があると言われています。これがもし買収提案の場面でアドバンテージになるなら、つまり「どこがどれだけワシントンにパイプを持ってるか」でディールの通りやすさすら変わるということです。コンテンツはもはや政治資産でもある、というわけです。
次にYouTube TVとディズニーの交渉です。YouTube TVは、いわば「ネット版ケーブルテレビ」。すでに800万人以上が契約し、全米のテレビ視聴時間の12.6%を押さえる巨大なゲートウェイです。これだけの視聴導線を握ると、ESPNやABCといったディズニー系チャンネルでさえ「お願いだからうちの番組をちゃんと配信させて」とは言えません。むしろYouTube TV側が「スポーツだけ別パッケージにしたいんだけど?」と条件を提示する立場にもなれる。従来はケーブル会社がコンテンツを束ねてチャンネル番号順に売っていましたが、今はプラットフォーム(YouTube TV)が主導で、ジャンル別のサブスク構成を考えています。
これは“テレビ=チャンネルの並び順”という時代の終わりを意味します。視聴者のほうも、もはや「総合編成のチャンネル」をありがたがらない。スポーツだったらスポーツだけ、ニュースならニュースだけにお金を払いたい。つまりテレビのバラ売りが、いよいよ制度設計レベルで現実になってきた。結果、コンテンツ側は「フルセットで高く売りたい」、プラットフォーム側は「分解して安く仕入れたい」というガチ交渉が常態化しつつあるわけです。ディズニーが「契約が更新できなければ、ESPNもABCもYouTube TVから抜けるかもよ?」とユーザーに警告するのも、まさに視聴者を巻き込んだ圧力戦術です。
そして最後に、「社長がインフルエンサー」化です。The Atlanticのニコラス・トンプソンCEOは、単に会社を運営するだけでなく、毎日テックの話題を短尺動画で発信し、50万人規模のニュースレターでスポンサーを獲得し、本を出し、ポッドキャストでAIテーマの番組をスポンサー付きで展開しています。つまり、CEO自身のコンテンツが、そのまま会社の収益源になっている。AxiosのCEO、The InformationのCEO、PunchbowlのCEO、The Free PressのCEOなども同様に「トップ本人が顔」として会社ブランドを引っ張っています。
これ、何が起きているかというと、メディア企業は「誰の言葉なら信じる?」の部分までビジネスとして設計し直しているということです。もう“会社の公式声明”だけでは弱い。経営陣が毎日SNSで話し、動画で語り、ポッドキャストで議論し、その信頼をもとにスポンサーがつく。つまり、経営陣がマスパーソナリティ兼営業兼編集長を兼ねる時代が現実になっている。良くも悪くも、企業の信頼と収益のパイプは「法人」ではなく「個人の顔」を通るようになってきました。
では日本のビジネスパーソンにとって何がポイントか。
1つ、コンテンツ資産(映像・スポーツ・ニュース)は、もはや単なる“宣伝素材”ではありません。M&Aの核であり、規制の対象であり、政治カードです。
2つ、配信のゲート(視聴の入口)を握る者は、従来のテレビ的な規制の外で交渉できるので、条件決定権が極端に強い。これはプラットフォームと権利ホルダーの力関係に直結します。
3つ、信頼は「企業ブランド」より「人」にひもづいて売られる。トップや看板人材のパーソナルな発信が“自社の営業パイプ”になる時代です。
この3つ——資産、ゲート、顔。このセットをどれだけ自社が押さえられるかで、これからのメディア・コンテンツ戦略の勝敗は決まる、と言っても大げさではないと思います。
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ディズニー vs YouTube TV:「スポーツの値札」を誰が決めるのか
ディズニーが「もし合意できなければ、ESPNやABCなどをYouTube TVから外れるかも」とユーザーに警告しました。これ、単なる値上げ交渉ではありません。ここで争われているのは、「スポーツ中継は“必須インフラ”として丸ごと抱えて提供すべきなのか、それともジャンル別のサブスクとして分売すべきなのか」という値札のルールそのものです。
背景にあるのは、YouTube TVがすでに米国で800万人以上の加入者を持ち、全視聴時間の12.6%を押さえる規模にまで成長したという事実です。これは、もはや「新興サービス」ではなく、日本でいう“超巨大ケーブル事業者”に近い影響力といっていいでしょう。時間こそ力。目玉コンテンツであるスポーツを握っているディズニー(ESPN側)に対し、「うちの条件で入る? それとも視聴者ごとごっそり失う?」とYouTube TVは迫れるようになったわけです。
ディズニー側は当然、ESPNを「高付加価値の看板コンテンツ」として扱いたいので、まとめ売りして高い単価で卸したい。一方、YouTube TV側は「スポーツ専用パック」という形で分離・再パッケージしたいという考えがあるとされています。ジャンル別課金にできれば、加入者は自分の好きなものだけ選べるようになり、プラットフォーム側としては“中抜き設計”がしやすい。逆にディズニーからすると、単価を下げかねない構造です。
これ、日本のスポーツビジネスにとっては他人事ではありません。たとえばサッカー、野球、格闘技などで、「大会そのもの」ではなく「配信権そのもの」が最大の収益源になっている領域では、どのプラットフォームの交渉力が一番強いかが、その競技の露出とお金を左右します。かつてテレビ局が持っていた“編成権”が、今やプラットフォーマー(YouTube TVのような存在)に移っているなら、スポーツ団体・リーグ側も、交渉相手として旧来のテレビ局だけでなく、ネット配信事業者の「条件」と「規制リスク」を前提にビジネスモデルを組まざるを得ない、ということになります。
要するに、スポーツの値札は「視聴率」ではなく「プラットフォームのバンドル戦略」で決まる時代に入った。これはかなり大きい地殻変動です。
小ネタ2本
① そのCEO、YouTuberより働いてる説
The AtlanticのCEOニコラス・トンプソン氏は、LinkedInで毎日テクノロジーの「一番おもしろいこと」を解説する動画を上げ、50万人規模のニュースレターでスポンサーを取り、ランニング本を出版し、AI関連のポッドキャストをPwC協賛で回しているとのことです。普通に考えて、これほぼ“インフルエンサー”のフル稼働スケジュールですよね。しかも本業は大手メディアの社長。これ、もはや「社長は裏方」どころか「社長は会社最大の広告塔・営業トップ・編集長・広報・ブランドアンバサダー全部やります」時代に突入した感じです。日本企業でも「うちの社長、顔出しNGです」なんて言ってる余裕あるの?という問いになります。つらい。
② 若者、未来への期待ほぼゼロ問題
ウォール・ストリート・ジャーナルの調査によると、アメリカでは「自分はなんとかやれるけど、子ども世代は無理ゲーでは?」と考えている親世代が圧倒的多数だそうです。具体的には、住宅を買えると“自分は”思っている割合が23%なのに対し、“子どもは”それができると信じているのは11%しかいない。さらに、日々の生活費を回せる、急な医療費を払える、老後資金を貯められるといった項目でも、若い世代ほど自信がないというデータが出ています。住宅価格はパンデミック以降で約50%も跳ね上がり、若年層の失業は上昇、と聞けばまあそうなるよね、なのですが。「親が“自分の子どもはもっと豊かになる”と信じられない社会」というのは、消費マインドにも長期投資にも効いてきます。これはアメリカの話ですが、日本でもどこか耳が痛いですよね。特に住宅と教育費。
編集後記
今回の話をぜんぶ並べてみるとちょっと寒気がします。
なにが怖いって、「メディア戦争」というと昔は“コンテンツ対コンテンツ”の殴り合いだったのが、いまは“コンテンツ+規制+政治+プラットフォームの交渉力+トップの個人ブランド”の総力戦に変わっていることです。もうスポーツの放映権で騒いでいた頃の牧歌的な殴り合いではないんですよね。ディズニーがYouTube TVに向けてユーザーを巻き込んで圧をかけるとか、WBDが買収提案を値踏みして「ほか誰かもっといい条件ある?」と市場全体にウィンクするとか、CEOが自分のLinkedInチャンネルを会社の営業チャネルに転化するとか、どれも20年前には考えにくかった動きです。
しかも、これは“米メディアの業界ゴシップ”で片付けていい話ではありません。ここで使われている手札(ユーザー直接巻き込みで交渉、規制当局とのパイプを前提としたM&A、経営者の顔を武器にスポンサーを取る)は、実は日本のあらゆる業界にも輸入可能です。というか、すでに輸入されつつあります。たとえばSaaS企業のトップがYouTubeで毎週発信し、そこからリード(見込み顧客)を取って営業案件にするなんて、もう珍しくないですよね。人材採用でも「社長やCTOがどういう考えの人か」を候補者がSNSで確認してから応募するのは当たり前になっています。もはや“会社パンフレット”より“社長のX(旧Twitter)”のほうが採用力が上、なんて現場の声も普通に聞きます。
同時に、この構図は若い世代の不安とも地続きです。アメリカの調査では、親世代の8割近くが「子どもは自分たちより報われないだろう」と思っている。つまり、これからの消費者・視聴者・有権者は、基本スタンスが「この社会、俺(私)に有利じゃなくない?」からスタートするんです。そんな彼らのアテンションとウォレット(お財布)を取りに行くビジネスは、当然“信頼できる顔”と“納得できる値付け”と“自分にカスタマイズされた体験”をセットで要求されるようになる。プラットフォームは分割型サブスクで「欲しいものだけ買えばいいよ」と言い、CEOは「私はあなたの味方です」と顔を出し、メディア企業は「このコンテンツは我々が責任を持って作りました」と強調する。その全体が、次の消費を形づくろうとしているのだと感じます。
ビジネス視点でいうと、ここにはすごく現実的な宿題があります。
あなたの会社は、どのカードで戦いますか?
・「中身」(独自コンテンツ・IP・ノウハウ)を持っている会社になるのか
・「入り口」(顧客との直接接点=配信・流通・販売チャネル)を押さえる会社になるのか
・「顔」(信用できる人間)を前面に出して、ブランドを人ベースで売る会社になるのか
全部やるのが理想なのはわかっています。でも正直、全部やるのは疲れますし、組織も壊れます。なのでどこを自社の“核”にするのかは、早めに言語化しておいたほうがいい。なぜなら、買収される側になるか、買収する側になるか、どこかと組んで束ねられる側になるかは、その核によってほぼ決まってしまうからです。
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