深掘り記事|ハキーム・ジェフリーズ vs「マムダニ革命」:民主党内戦のいま
■ いまアメリカの左派が狙っている“本丸”
今回のメイン記事は、アメリカ民主党の内部抗争、
その新しい標的として下院少数党院内総務(野党リーダー)のハキーム・ジェフリーズが浮上している、という話です。
記事によると、
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進歩派(プログレッシブ)の一部は、
→ 「できるだけ多くの“エスタブリッシュメント民主党議員”を予備選で落としたい」
→ 特にニューヨーク選出議員を狙っている -
元プログレッシブ・コーカス共同議長のマーク・ポカン議員は、
→ 「人々は怒っていて、悲しんでいて、心配している」とコメント
そして、この動きに名前がつきつつあります。
それが、記事が引用している**「マムダニ革命(Mamdani revolution)」**です。
ある下院民主党議員はこう言います。
「若い理想主義者は皆、『ゾーラ・マムダニにできるなら、自分にもできる』と思っている。
彼が特別な才能だという点は棚上げして」
ここで出てくるのが、
**ニューヨーク市長選で勝利したゾーラ・マムダニ(Zohran Mamdani)**です。
彼の勝利が「自分も既存権力に挑める」と多くの若手に火をつけた、という構図です。
ただし当人のマムダニは、
ジェフリーズへの挑戦については距離を置いていて、
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ニューヨーク市議のチ・オセ(Chi Ossé)がジェフリーズへ挑戦する可能性について問われ、
→ 「いまはそうした予備選に踏み出すタイミングではない」とコメント
と、ややブレーキを踏んでいる点も記事はきちんと押さえています。
一方で、プログレッシブ系の政治団体Justice Democratsのスポークスパーソンは、
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「マムダニの勢いの上にさらに積み上げることに非常に関心がある」
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「今後数週間で、より多くのニュースが出てくると考えてほしい」
と述べており、組織としては攻める気満々です。
■ 誰が狙われているのか:ニューヨーク民主党の“標的リスト”
今回の動きは、ジェフリーズ個人だけの話ではありません。
記事が具体的に名前を挙げている“標的候補”は、かなりの顔ぶれです。
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グレース・メン(Grace Meng)下院議員
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元ニューヨーク経済開発公社スタッフのチャック・パークが出馬表明
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リッチー・トーレス(Ritchie Torres)下院議員
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元州議会議員で民主党全国委員会(DNC)副議長も務めたマイケル・ブレイクが挑戦
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ジョージ・ラティマー(George Latimer)下院議員
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本人いわく「民主的社会主義者(DSA)に支援された予備選の対抗馬が出てきても驚かない」
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アドリアーノ・エスパイアット(Adriano Espaillat)下院議員
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ヒスパニック系議員連盟の議長だが、プログレッシブ系コンサルタントによると「標的になりそう」
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ダン・ゴールドマン(Dan Goldman)下院議員
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彼の選挙区は、マムダニが大差で勝利した地域
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ニューヨーク市会計監査官のブラッド・ランダー、市議のアレクサ・アヴィレスの名前が、
可能性ある挑戦者として取り沙汰されている
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ここにジェフリーズ自身への挑戦が重なると、
**「ニューヨーク民主党 vs 左派チャレンジャー軍団」**という様相を呈してきます。
記事では、ベテラン議員ジェリー・ナドラー(Jerry Nadler)の発言も紹介されています。
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当初、彼は「ブラッド・ランダーが勝つ」とコメント
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しかしその後記者に電話をかけ直し、
→ 「実際のところ、誰が勝つか分からない」
→ 「見た世論調査に反応しただけだし、そもそもランダーが出馬するかも分からない」
と大きくトーンダウンしているのが、人間味があって印象的です。
一方で、現職のゴールドマン陣営は強気で、
「この7カ月間で挑戦してくる誰に対しても、議会での実績を堂々とぶつけるつもりだ。
ブラッドであれ誰であれ、挑戦するなら一生で一番ハードな戦いになるだろう」
とコメントしています。
■ これは“左 vs 右”ではなく、“ムーブメント vs 組織”の戦い
ここからは私の見方ですが、この構図は単純な**「左派 vs 中道」**以上に、
「ムーブメント型の政治 vs 組織・実務型の政治」
という構図が強いように見えます。
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マムダニを象徴とする若い進歩派
→ 草の根の動員力
→ SNSを通じたムーブメント形成
→ 「変わらないエスタブリッシュメントをひっくり返したい」という感情の受け皿 -
既存のニューヨーク民主党エスタブリッシュメント
→ 長年の組織基盤
→ 資金力・人脈
→ 「議会で実務を回せるのは自分たちだ」という自負
日本でいうと、
「旧来型の大物議員 vs 若い市民派・無所属候補」の構図を、
かなりハイパワーにしたバージョンと考えるとイメージしやすいかもしれません。
しかも今回は、
ターゲットが下院の野党リーダー(ジェフリーズ)クラスにまで及んでいるのがポイントです。
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通常、党のトップ級ポストについた議員は“安全地帯”になりやすい
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しかし、プログレッシブはそこにも遠慮なく挑戦しようとしている
つまり、
「この路線のまま民主党をエスタブリッシュメントが握り続けるなら、
むしろトップから入れ替えたい」
というメッセージでもあります。
■ 日本のビジネスパーソンにとっての意味
政治の内輪揉めに見えるかもしれませんが、
日本にいる私たちにとっても無関係ではありません。
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政策の振れ幅リスク
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もし進歩派が勢力を伸ばせば、
→ 財政・税制・規制の方向性が、より「再分配・規制強化」寄りになる可能性 -
一方で、エスタブリッシュメント側が勝てば、
→ 現在の「中道〜中道左派」路線が続く
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ビジネスにとっての“読みづらさ”が増す
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同じ「民主党政権」でも、
→ 誰が主導権を握るかで、
対中政策・テック規制・金融規制・労働政策が大きく変わり得る
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「ムーブメント政治」が経済にも波及する時代
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ESG、DEI、気候変動、ビッグテック規制など、
→ 一見“価値観の議論”に見えるテーマが、
→ 実際には企業業績や株価に直結している
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今回の「マムダニ革命」は、
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単なる“民主党の内ゲバ”ではなく、
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**「政治がムーブメント化している国でビジネスをするとはどういうことか」**を考える材料でもあります。
日本でも、
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社会運動的なテーマ(気候、ジェンダー、格差など)が
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投資家・消費者・従業員の振る舞いに影響を与え始めています。
アメリカ民主党の内部抗争は、
私たちに**「政治のムードが変わるとき、ビジネスはどこまで巻き込まれるのか」**という問いを投げかけているように思えます。
まとめ
今回の記事は、一見バラバラなニュースの寄せ集めに見えますが、
背後に共通しているテーマは**「揺れる中で、誰がコストを払うのか」**という点だと感じます。
まずメインのジェフリーズ vs マムダニ革命。
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進歩派は、
→ ニューヨークの既存民主党エスタブリッシュメントに「NO」を突きつけようとしている -
Justice Democratsのような組織は、
→ マムダニの勝利を“成功事例”として、次々に予備選で挑戦者を立てようとしている -
対するエスタブリッシュメント側は、
→ 「自分たちこそが実務を回せる」と主張しながら、
→ 予備選での防衛戦に追い込まれつつある
これは、
**「誰が民主党というブランドの“中身”を決めるのか」**をめぐる権力闘争です。
2つ目の大きなテーマは、医療費補助(ACA税控除)の延長問題。
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2,200万人の人々をカバーしている拡充された補助が、年末で期限切れ
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上院での延長には13人の共和党票が必要だが、
→ 共和党はまとまって反対の構え
→ トランプ大統領も延長に反対 -
民主党内では、
→ サンダースが「1兆ドルの共和党の医療カット撤回+メディケア拡充+薬価引き下げ」といった、左派寄りパッケージを提案
→ 穏健派は「少数の共和党を取り込める現実路線」を模索 -
しかし、委員会の公聴会はいつもの党派的な応酬で終わり、
→ 超党派交渉は進んでいない -
最終的には、
→ 民主党案と共和党案が“並行して採決(side-by-side vote)”される見通しで、
→ 「本格的な妥協より、選挙に向けた“立場表明合戦”になる」と記事は示唆
ここには、
「財政の制約が厳しくなる中で、
誰に医療費の負担・恩恵を配分し直すのか」
という冷徹なテーマがあります。
その他のニュースも、実は同じ線上にあります。
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Lowe’sがプロ向け売上とECを伸ばして株価が好反応 →
→ 一方で、ライバルのHome Depotは先日、減速が話題に -
MLBはESPN・NBC・Netflixと3年契約 →
→ どこが放映権を握るかで、スポーツビジネスのマネーの流れが変わる -
オランダ政府は、中国系半導体メーカーNexperiaの“接収”命令を解除 →
→ 自動車メーカーからの「半導体不足になる」という警告が影響 -
元財務長官ラリー・サマーズは、エプスタインとの関係が改めて問題視されOpenAI取締役を辞任 →
→ 「ガバナンス」と「レピュテーション(評判)」の問題が、AI企業の中枢にも押し寄せている
そして極めつけが「牛のハグの副業」です。
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関税などでコスト増に苦しむ酪農家が、
→ 牛と“抱き合う”セラピー的サービスで副収入を得始めている -
30分15ドルの「モ〜ふもふ」サービス
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コロナ禍で一度人気が出たが、最近また需要が戻っている
笑い話に見えますが、ここにも
「コストが上がる中で、
誰がどこで新しい付加価値をひねり出すのか」
という、ビジネスそのもののテーマが含まれています。
政治の世界では、
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再分配をめぐって、
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誰が負担し、誰が救われるのかで殴り合いが続く。
ビジネスの世界では、
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需要とコスト構造が変わる中で、
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誰が新しい利益プールを見つけられるかが勝負になる。
その両方が同時進行しているのが、いまのアメリカです。
日本からニュースを眺めるときも、
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「どっちの党が勝ちそうか」ではなく、
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「その結果、誰にコストが回ってくるのか」
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「そのとき、自分と自社はどちら側に立っているのか」
という視点で見ていくと、
ビジネスに活かせる“読み”がかなり変わってくるはずです。
気になった記事|ACA補助金の“延長ほぼムリ”問題:22万人ではなく、2200万人
サブ記事として掘り下げたいのが、
「ACA(オバマケア)の拡充補助(税控除)が延長できそうにない」という話です。
記事によると:
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対象は2,200万人
→ 彼らは、現在の「上乗せされた税控除」によって保険料の負担を軽減されている -
しかし、その拡充措置は年末で期限切れ
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延長には、上院で13人の共和党議員の賛成が必要
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上院民主党指導部の一員であるブライアン・シャッツ議員(ハワイ)は、
→ 「共和党が13票も出すなんて、ほぼ幻想に聞こえる」とコメント
つまり、現時点では
「このままいけば、2,200万人の医療費補助が年末で終わる可能性が高い」
という状況です。
民主党内でも戦略は割れています。
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バーニー・サンダース(無所属だが民主党左派の顔)は、
→ 「共和党の医療費カット1兆ドルを撤回」
→ 「メディケアの拡充」
→ 「薬価引き下げ」
を一体化した“大きなパッケージ”を提案 -
一方で、穏健派は、
→ なんとか少数の共和党議員を取り込めそうな“現実路線”の案を模索
しかし、
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上院財政委員会の公聴会は、いつもの党派的な口撃合戦に終始
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水面下の“超党派協議”も進展ゼロ
最終的にどうなりそうかというと、
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共和党指導部のシェリー・ムーア・カピト議員(ウェストバージニア)は、
→ 「来月、党派ごとの医療法案を**並べて採決(side-by-side)**することになるだろう」
→ 「超党派の“乗り物(vehicle)”を今つくるのは現実的ではない」
と、**「ガチで妥協する気はあまりない」**姿勢を示しています。
日本のビジネスパーソンにとって、この話のポイントは2つです。
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「医療」は政治リスクの塊である
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補助が出るか出ないかは、
→ 消費者の可処分所得
→ 労働市場への参加
→ 企業の福利厚生コスト
に直接影響
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「期限付き政策」はいつでも“人質”になる
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コロナ関連支援、住宅ローン減免、教育ローン返済猶予など、
→ 期限付きの制度は、
「延長と引き換えに、別の政策譲歩を迫るカード」になりやすい
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2,200万人分のヘルスケア補助が、
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「延長されれば財政負担」
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「切れれば生活不安と政治リスク」
というダブルバインドの中にある。
アメリカ経済を読むうえで、この“社会保障の政治化”は見落とせないポイントです。
小ネタ①|Lowe’s vs Home Depot──プロ需要とオンラインが明暗を分ける
短めの1本目は、ホームセンター業界の話です。
記事によると:
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Lowe’s(ロウズ)の株価が上昇
→ オンライン売上が伸びたこと
→ そして、これまでHome Depotが強かったプロ向け(工務店・業者向け)売上が伸びたことが好感された
Home Depotはこれまで、
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「プロ=Home Depot」
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「DIY一般客=Lowe’s」
というイメージでしたが、
ロウズがオンラインとプロの両方で伸ばしている、という構図です。
日本でも、
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BtoCの印象が強い小売企業が、
→ 水面下でBtoB(プロ向け)を伸ばしているケースは結構あります。
景気が不透明になる局面では、
「目立たないが安定したプロ需要」と
「波の大きい一般消費」
どちらを取りに行くか、というポートフォリオ戦略が重要になります。
ロウズのニュースは、
「BtoC企業でも、実はBtoBの足場づくりが効いてくる」
という好例として読めそうです。
小ネタ②|牛を抱いて30分15ドル:酪農家の“モ〜ふもふ副業”
2本目は、完全に癒し枠です。
記事によると、
経営に苦しむ酪農家が“牛のハグ体験”を副業にし始めているそうです。
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一部の農家は、
→ 牛に「座って寄り添う」ことを覚えさせ、
→ 抱きしめセッション用に“トレーニング” -
体が小さく、人に慣れやすい子牛(calves)だけを使う農家もある
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中には、
→ 牛が人の膝の上に頭を乗せて眠ったり、
→ 客が牛の胸に耳を当てて心音を聴いたり
という“セラピー感”満載の体験も -
料金は、
→ **30分15ドル(約2,000円ちょっと)**という設定の農家も登場
背景には、
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乳製品の需要低下
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関税などによるコスト増
で苦しむ酪農家の台所事情があります。
コロナ禍で一度人気が出たあと、
最近また再燃しているトレンドだと記事は伝えています。
記者のナサンは、
「干し草の上に座らないといけないの?
匂いは大丈夫?
クレカ払いOK?」
と、完全に客目線でツッコんでいるのも微笑ましいところです。
日本でここまでダイレクトな「牛ハグビジネス」が受けるかは分かりませんが、
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農業×観光
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農業×ウェルビーイング
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農業×体験ビジネス
という発想は、
地方のビジネスを考えるうえで、なかなか示唆に富んでいます。
編集後記
「革命」と「牛のハグ」と、私たちの“現実逃避力”
「マムダニ革命」と聞くと、
なんだか世界史の教科書に出てきそうな物々しい名前ですが、
中身はわりと生々しい**「民主党の内輪揉め」**です。
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若い理想主義者が「オレも既存権力ぶっ壊す」と燃え上がる
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ベテラン議員は「いやいや、政治ってそんなに甘くない」と眉をひそめる
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そしてその間で、
→ 有権者と生活者は「医療費の補助はどうなるの?」と不安になる
構図だけ見ると、日本政治と大差ありません。
ただアメリカの場合、そのスケールが桁違いで、
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2,200万人の医療補助
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何兆円規模の予算
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世界中の金融市場を揺らす政策リスク
が、その「内輪揉め」の結果次第で動いてしまうところが、
なんともややこしいところです。
そんな重たいニュースを読み終えたあとに出てくるのが、
「牛のハグで30分15ドル」という話。
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正直、最初は「なんの冗談か」と思う
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でも読んでいるうちに、
→ 「牛の胸に耳を当てて心音を聞くの、ちょっと良さそうだな…」
とか思ってしまう自分がいる
これこそが、
人間の現実逃避力のたくましさかもしれません。
政治も経済も、
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大きな数字と
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ややこしい利害と
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絶望したくなるような対立
で溢れています。
そこにいきなり差し込まれる、
「牛を抱きしめて癒されませんか?」というニュース。
冷静に考えれば、
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酪農家の苦境
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関税によるコスト増
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低価格競争
という“しんどい現実”が背景にあるわけですが、
それを**「ふれあいビジネス」**としてひっくり返そうとする人間のしたたかさには、
ちょっと勇気をもらいます。
マムダニ革命も、
牛のハグも、
方向性はまったく違うけれど、
「いまのルールのままでは、
自分たちにとってフェアじゃない」
という感覚から生まれている点では、
意外と根っこが近いのかもしれません。
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既存の政治にNOと言う人
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既存の価格体系にNOと言う酪農家
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そして、既存の働き方にNOと言いながら、
毎日満員電車に揺られている私たち
ニュースを読んでいると、
どこか他人事のようでいて、
実は自分の“もやもや”が鏡映しになっていることが多いです。
だからこそ、
政治ニュースも、経済ニュースも、牛ニュース(?)も、
「これは自分のどんな不満や願望とつながっているのか」
という視点で眺めてみると、
ちょっとだけ世界が立体的に見えてきます。
マムダニ革命には参加できなくても、
自分の仕事と生活の中で、
小さな「革命」や「牛ハグ」をどこに仕込めるのか。
そんなことを考えながら、
今日もニュースを材料に、静かに現実と折り合いをつけていきたいなと思います。
今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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