深掘り記事|なぜここまで市場は怖がっているのか
■ 史上最強クラスの「材料」揃いのはずが…
今回の英語記事のメインテーマは、ひと言でいうと
「これだけ好材料が出ているのに、なぜ市場はまったく安心していないのか」
です。
まず、事実を整理します。記事が挙げている“良いニュース”は3つ。
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世界最大級の小売企業 ウォルマート:通期見通しを上方修正
→ EC(ネット通販)が2ケタ成長と報告 -
アメリカの9月雇用統計:+11.9万人の雇用増
→ 政府シャットダウンで公表が遅れていましたが、
想定より「悪くなかった」ことが判明 -
世界最大の企業となったNvidia:決算・ガイダンスともに上振れ
→ CEOジェンセン・フアンはBlackwellチップの需要を
「off the charts(常識外れのレベル)」と表現
普通に考えれば、
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個人消費を支えるウォルマート好調
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雇用はまだ増えている
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AI投資の中心であるNvidiaも絶好調
なので、**「景気もAIブームもまだまだいける!」**と
市場が乗ってきそうな組み合わせです。
実際、このニュースが出た直後の朝は、
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S&P500:+約2%
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ナスダック:+約2.6%
と、株式市場はそれなりに強いリバウンドを見せました。
…が、その後が問題です。
引けにかけてすべて反転し、「大幅安」で終わる。
投資家のセンチメント(心理)は、
「良いニュースが出ても、すぐには信じられない」
というモードに入っていることがはっきりしました。
■ 「AIバブル」と「良すぎる雇用」が怖い
なぜ、ここまで市場はビビっているのか。
記事が示しているポイントは大きく2つです。
① AIバブル懸念は、ぜんぜん消えていない
Nvidiaの決算そのものは、客観的に見て“怪物級”です。
CEOは堂々と「AIバブルではない」と主張していますが、
投資家の頭の中にはこんな疑問がこびりついています。
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「AIインフラへの投資、いつまで続けられるの?」
-
「Nvidia、クラウド大手、AIスタートアップが
お互いに株を持ち合い、お互いのサービスを買い合う構図は大丈夫か?」 -
「もしどこか1社でも投資を絞ったら、
ドミノ倒し的に需要が崩れないか?」
つまり、
「決算はいい。でもストーリーが怖い」
という逆説的な状態です。
② 「良い雇用」は「利下げ期待の後退」に直結
もう一つのやっかいな点が、**雇用統計の“良さ”**です。
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9月の雇用増:+11.9万人
→ 今年4月以来のかなりしっかりした伸び
本来なら「雇用が増えて良かったね」で済む話ですが、
今のマーケットにとっては、
「あ、これだと利下げが遠のくかも」
という裏メッセージに聞こえてしまう。
株やビットコインのような**リスク資産(リスクオン資産)**にとって、
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低金利 → バリュエーションを支える
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高金利 → 割高感が意識されやすくなる
という構図があるため、
強い雇用=善と素直に喜べないのが現実です。
記事はこれを、
「good news is sometimes bad news」
と表現しています。
■ 11月相場を襲う“全面リスクオフ”:ビットコインに直撃
記事の第2セクションでは、
11月相場の「リスクオフ(リスク回避)」が
とくに暗号資産に強く出ていることが指摘されています。
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ビットコイン価格:
→ 本文では87,000ドル割れ(直近24時間で▲3.5%) -
10月6日に史上最高値126,080ドルをつけてから下落が加速
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11月だけで3回、90,000ドル割れをトライ
→ 今回が一番深く落ち込んでいる
今年は、
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ETF経由の買い
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上場企業が財務資産としてビットコインを保有
といった新しい参加者が増えた結果、
「高値で買った新規投資家が、
リスク調整のために投げ始めている」
という構図です。
ここで重要なのは、「ビットコインだけが悪い」のではなく、
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S&P500:▲約4.6%
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ナスダック:▲約7.2%
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ビットコイン:▲約21.4%
と、株もクリプトもまとめて売られているという点です(記事中のチャートより)。
つまり、11月のテーマは明確で、
「みんな一度、リスク資産の持ち高を減らしておこう」
というポジション調整の月になっているわけです。
■ 「世界最大の小売+世界最大の企業+世界最大の経済」でも足りない期待値
今回の記事タイトルは象徴的です。
Fear prevails(恐怖が勝っている)
ウォルマート、Nvidia、米雇用統計という
「世界最大級トリオ」の“悪くないニュース”が並んでも、
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AIバブル懸念
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利下げ期待の後退
-
年末を前にした利益確定・リスク圧縮
といった心理要因の前には、押し切る力が足りなかった、というのが記事の見立てです。
言い換えると、
「材料の善し悪し」よりも、「投資家がどれだけ疲れているか」が
マーケットを動かしている局面
とも言えます。
日本の投資家としては、
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「ニュースが良いのに株が下がる」のはなぜか
-
「悪材料が出ていないのにビットコインが下がる」のはなぜか
を理解しておくことで、無用なパニック売りを避けることができます。
まとめ|「ニュース」と「値動き」が逆走する相場にどう向き合うか
ここで、記事のポイントとビジネス・投資への示唆を整理します。
まず、事実の部分から。
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ウォルマートは、ECの2ケタ成長を背景に通期見通しを上方修正しました。消費者の足元の動きは、少なくとも「崩壊」ではなく、堅調といえる内容です。
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9月の米雇用統計は、+11.9万人の雇用増。政府閉鎖の影響で発表が遅れたものの、労働市場が思ったほど悪くなかったことが確認されました。
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Nvidiaは、AI向けBlackwellチップの「off the charts」な需要を背景に、売上・利益ともに市場予想を上回り、次の四半期の見通しも上乗せしました。データセンター向け売上が引き続き好調で、AIインフラ投資はなお続いています。
一方、マーケットの反応はどうだったか。
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好材料を受けて、朝方の米株市場はS&P500が約2%高、ナスダックが約2.6%高と大きく反発しました。
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しかし、最終的には全面反落で大幅安。投資家心理は、「安心した」どころか、むしろ「やっぱり怖い」という方向に振れています。
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11月全体で見ると、S&P500とナスダックがそれぞれ数%の下落、ビットコインは2割超の下落と、リスク資産全般に調整圧力がかかっている状況です。
ここから言えるのは、「ニュースの善し悪し」と「値動きの方向」が、必ずしも一致しない局面が来ているということです。
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AI関連では、Nvidiaの決算自体は極めて好調ですが、「このペースの投資を企業がいつまで続けられるのか」「AI企業同士の資本関係・取引関係が循環的になりすぎていないか」といったバブル懸念がくすぶっています。
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雇用統計は、景気の基礎体温としてはポジティブですが、今のマーケットにとっては「利下げ期待が後ろにずれる」という意味を持ち、結果的に株や暗号資産にマイナスに働きます。
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新規投資家が多く参入したビットコイン市場では、高値圏で購入した投資家がリスク調整のために売り始めていると記事は指摘しています。これは、過去の株式市場でも繰り返されてきた“定番のパターン”です。
日本のビジネスパーソン・投資家にとっての示唆は、次の3つに集約されます。
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「ニュースが良い=株価が上がる」という単純な図式は一度捨てる。
金利・バリュエーション・ポジション状況を意識しないと、「なぜ下がっているのか」が永遠に分かりません。 -
AI関連・暗号資産など“期待先行セクター”は、ニュースよりも「ポジションの重さ」を見る。
決算が良くても、「みんなすでに持ちすぎている」なら、売りが優先されます。 -
年末に向けては、「儲ける」より「生き残る」モードも選択肢。
無理にリスクを積み増すのではなく、「どこまで下がったら冷静に拾うか」という“待ちの戦略”を持っておくことが重要です。
ニュースと値動きが逆を行く——そんなややこしい相場ほど、
「自分のルールを持っている人」と「持っていない人」の差が大きくなるタイミングでもあります。
気になった記事|ディック・チェイニーの葬儀が映す「アメリカ保守の1つの時代の終わり」
サブ記事として取り上げたいのが、
元副大統領ディック・チェイニーの葬儀の話です。
記事によると、ワシントン大聖堂で開かれた葬儀には、
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元大統領:ジョー・バイデン、ジョージ・W・ブッシュ
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元副大統領:カマラ・ハリス、マイク・ペンス、アル・ゴア
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娘である元下院議員リズ・チェイニー
など、党派を超えた「ワシントンの大物たち」が顔をそろえました。
まさにアメリカ政治エスタブリッシュメントの総出演です。
一方で、
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トランプ大統領は招待されていない
という事実も、記事ははっきり書いています。
チェイニー家とトランプは激しく対立していた関係であり、
ここにも“旧来の保守”と“トランプ流ポピュリズム”の断絶が表れています。
ブッシュ元大統領は弔辞の中で、
チェイニーが政治人生を振り返って語った言葉として、こう引用しています。
「政治と政府の世界での一生を振り返って、
いちばん大切なのは“友情”だったと言えるなら、
それはきっと悪くない人生だろう」
善悪や評価は別として、
「冷戦〜対テロ戦争」という時代を象徴する一人が去り、
その葬儀に“旧時代の主役たち”が集まり、
“新時代の主役”であるトランプは不在——。
これは、
「アメリカ保守政治の一つの時代が、
静かに幕を下ろした瞬間」
として記憶されるかもしれません。
日本からニュースで見ると「昔の人の葬儀」の一行ですが、
ビジネスパーソン目線でいえば、
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政治のプレーヤーが変われば、
→ 外交・安全保障・エネルギー政策も変わる -
それが、
→ 為替、資源価格、防衛産業、IT規制などにじわじわ効いてくる
という“長い波”の一コマとして捉えておく価値があります。
小ネタ①|子ども向け「AIおもちゃ」にNG宣告
「Catch me up」の中で個人的に気になったのが、
子ども向けAIおもちゃへの懸念です。
記事によると、
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子どもの権利団体や消費者団体が、
→ 今年のホリデーシーズンに向けて
→ 親に対し「AI搭載おもちゃは避けた方がいい」と警告
理由としては、
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発達への影響
-
データ・プライバシー
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大人でも持て余す“会話AI”を子どもに渡して大丈夫なのか
といった不安が背景にあります。
大人は、「AIスピーカーに話しかける子ども、かわいいじゃん」で済ませがちですが、
どんなデータが蓄積され、どう学習に使われるのかは、
正直まだよく見えません。
日本でも、
「タブレット学習+AI先生」のようなソリューションが増えていますが、
便利さと引き換えに、
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子どもの“間”の取り方
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失敗の経験
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退屈と向き合う力
といったものがどう変わっていくのか。
そろそろ真面目に考えるフェーズに入っている気がします。
小ネタ②|“自作自演”の傷害事件という現代の闇
もう一つの記事は、かなりダークな話題です。
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下院議員ジェフ・ヴァン・ドルーの元スタッフが、
→ 自分への暴行を「自作自演」した疑いで起訴 -
捜査当局によると、
→ 自分の顔や首に傷をつけるため、
ボディ・モディフィケーション(身体改造)アーティストに依頼して
切り傷をつけさせていたとされています
詳細な動機までは記事に書かれていませんが、
いまの政治とSNSの世界では、
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「被害者ポジション」を取ることが
→ 短期的な注目や同情を集める“手段”として
誘惑的に見えてしまう場面もあります。
ビジネスの現場でも、
-
「炎上マーケティング」
-
「わざと批判されることで話題化」
のような発想が、冗談ではなく真顔で語られることがありますが、
今回のケースは、その行きつく先の一つを見せられているようでもあります。
「注目されること」と
「信頼されること」は、
似ているようでまったく違う——
そんな当たり前のことを、改めて考えさせられる小ネタでした。
編集後記|“ビビり市場”とどう付き合うか
最近のマーケットを見ていて、
なんとなく**「就活の面接官みたいだな」**と思っています。
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成績(業績)は十分いい
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志望動機(ストーリー)もなかなか魅力的
-
でも最後に一言、「うーん、なんか不安なんだよね」
と言って落としてしまう、あの感じです。
ウォルマートが好決算でも、
Nvidiaが怪物級の数字を出しても、
雇用統計がそこまで悪くなくても、
「いや、でもさ…」
と、必ず“でもさ”がついてしまう。
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「AIバブルだったらどうするの?」
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「利下げが遠のいたら、バリュエーションどうなるの?」
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「ビットコインは結局リスク資産なんでしょ?」
と、完璧な安心材料が出るまで動けない。
でも、そんな日は来ない。
だから、ずっと不安——。
たぶん私たちの側も、少なからず同じ病気を抱えています。
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転職したいけど、“完璧な会社”が見つからない
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新規事業はやりたいけど、“失敗のないアイデア”は出てこない
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投資は増やしたいけど、“絶対に損しないタイミング”は分からない
結果として、
「とりあえず今のままでいいか」
という現状維持バイアスに落ち着きます。
マーケットも、私たちも、案外似たようなところで足踏みしているのかもしれません。
ただ、一つだけはっきりしているのは、
「怖がりながらも、一歩進む人」だけが、
状況を少しずつ変えていく
ということです。
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100%納得はいかなくても、「70点の判断」で小さく動いてみる
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いきなりフルポジションではなく、**「試し玉」**から始める
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間違えたら、「あのときの自分の前提」を後から振り返って修正する
マーケットが“ビビりモード”のときこそ、
「自分だけは強気でフルベットする」必要はまったくなくて、
むしろ
「みんな怖がっているなら、
自分は“怖がり方”を少しだけ工夫しよう」
くらいのスタンスがちょうどいいのかもしれません。
ニュースと値動きが逆に動く混沌のなかで、
ご自身の“怖がり方”の精度を、一緒に上げていけたらと思います。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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