深掘り記事|Nvidia決算が教えてくれる、本当に怖い“AIリスク”とは
■ 「AIバブル崩壊」懸念はいったん先送り
今回のメインは、いま世界のマーケットの空気を支配している**「AIバブルか否か」論争**です。
そのど真ん中にいるのが、もちろんNvidia。
記事によると、直近四半期(Q3)の決算はまさに“モンスター級”でした。
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売上高:570.1億ドル(予想 549.2億ドルを上回る)
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うちデータセンター売上:512億ドル(予想 490.9億ドルを上回る)
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次四半期の売上見通し:650億ドル(市場予想 616.6億ドルを上回る)
ジェンセン・フアンCEOは、
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次世代Blackwellチップの売上は「off the charts(桁外れ)」
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クラウド向けGPUは「sold out(売り切れ)」
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「AIエコシステムは急速にスケールしている」「AIはあらゆる産業・あらゆる国に広がっている」
と、テンション高めのコメントを連発しています。
決算発表を受けて、Nvidiaの株価は時間外で5%上昇。
ここ数週間、「AIバブルでは?」という疑心暗鬼で売られてきた空気を、
ひとまず**“黙らせる”内容**になりました。
■ それでも市場がソワソワしていた理由
この決算の前まで、市場はかなりナーバスでした。
記事が整理しているように、
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ピーター・ティールのヘッジファンドは、
→ Nvidia株をすべて売却 -
2008年の住宅バブル崩壊を“当てた”ことで有名なマイケル・バーリは、
→ Nvidia株のプット(下落に賭けるオプション)を購入
→ 「AIバブル」への警鐘も発していた
こうした“バブル監視人”たちの行動が重なり、
市場は「さすがにやりすぎでは?」という空気に包まれていました。
そこに今回の決算です。
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売上も利益もまだ伸びている
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次の四半期も伸び続ける見通し
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しかもデータセンター売上は予想以上
ということで、
「少なくとも“いまこの瞬間”はバブル崩壊じゃないよね」
という共通認識が、一気に強まった形です。
■ 問題は「集中」と「循環」:AIマネーはどこから来ているのか
しかし、ここからが本質的に怖いところです。
記事は**「Big Tech同士の依存関係」**にしっかり触れています。
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2022年10月以降、S&P500の上昇分の**75%**は
→ いわゆる「マグニフィセント・セブン」と呼ばれるごく一部の大型テック株で説明できる -
その“セブン”のうち、Amazon、Alphabet(Google)、Metaの3社だけで、
→ Nvidia売上の40%超を占めている
つまり、
「指数は一部の巨大テックで上がっている」
「そのテック企業の設備投資はNvidiaに集中している」
という超・一点集中構造になっています。
さらにややこしいのが、記事も指摘している**“循環構造”**です。
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OpenAI、Nvidia、CoreWeave、AMD、Microsoft、Oracle などが
→ 互いに株を持ち合い
→ 互いのクラウド・GPU・インフラを購入し合っている
結果として、
「AI企業がAI企業に投資し、そのAI企業がまた別のAI企業のGPUを買う」
という、ぐるぐる構造が出来上がりつつあります。
これ自体は、
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新興分野ではわりとよくある姿(エコシステム形成)でもありますが、
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マクロ的にみると、
「もしどこか一社が減速したら、連鎖的に投資がしぼむのでは?」
というチェーンリアクション(連鎖反応)リスクでもあります。
■ 「AIバブル」が弾ける前に、まず“景気の足元”が揺らぐかもしれない
記事は最後に、静かに不穏な一文を置いています。
「AIバブルへの懸念はいったん脇に追いやられたものの、
景気の足元への不安は、遅れている雇用統計によって
逆にあおられる可能性がある」
具体的には、
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9月分の雇用統計(Jobs Report)が政府閉鎖の影響で遅延
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Fed(FRB)内部でも、
→ 「雇用の弱さを重視すべきか」
→ 「インフレを優先すべきか」
で分裂している -
12月の利下げをどうするか、判断材料となるデータが揃わない
という、データの“目隠し運転”状態に近づきつつあります。
AI関連株の一喜一憂に比べると地味ですが、
本当に怖いのはこの
「政策判断の不確実性 × マーケットの高バリュエーション」
の掛け算です。
Nvidiaの決算は、
短期的には市場にとって“救い”となりましたが、
同時に**「AIに頼り切った今の相場構造」を改めて浮き彫りにした**とも言えます。
日本のビジネスパーソンとしては、
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「AIに乗る」はもちろん重要
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ただし「どこまでAI関連に集中して良いのか」
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「自社のAI投資は、収益モデルとちゃんとつながっているか」
を、いま一度冷静に見直すタイミングかもしれません。
まとめ
今回の記事を、ビジネス視点でざっくり整理すると、ポイントは次の4つです。
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AIバブル懸念はいったん“先送り”
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NvidiaのQ3決算は、
→ 売上・利益ともに市場予想を上回り
→ 次四半期も高い成長見通し -
ここ数週間の「AI関連株売り」は、
→ 少なくとも“決算ベースでは行き過ぎだった”と市場は受け止めつつある
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しかしリスクの“質”はむしろハッキリした
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S&P500の上昇を牽引しているのは「マグニフィセント・セブン」というごく少数の超大型株
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その一角であるAmazon/Alphabet/Metaが、Nvidia売上の40%以上を占めている
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さらにOpenAI、Nvidia、Microsoftなどが互いに出資・利用し合うことで、
→ 「AIマネーの循環」ができている -
これは、成長ドライバーである一方で、
→ 「どこかで投資が止まると連鎖的に減速する」構造でもある
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マクロ側では“情報不足”のまま政策が動きかねない
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Fedは前回の会合で利下げを決めたものの、
→ 「雇用を重視すべきか、インフレを重視すべきか」で内部が割れている -
そこへ政府閉鎖の影響で、
→ 10月分の雇用統計が完全版としては公表されないという異常事態 -
12月の利下げ判断時にも、
→ 本来あるべきデータが揃わない可能性がある
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実体経済には“疲れ”のシグナルも出ている
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記事後半では、Targetの売上不振と株価35%下落、
→ 新CEOによる50億ドルの投資計画が紹介されている -
12四半期連続で売上が弱含むということは、
→ 「アメリカの中間層の財布」が、
少なくとも大手ディスカウントチェーンでは十分開いていない、というシグナルでもある
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総じて言うと、
「AI関連の数字はまだ伸びている。
ただし、その伸びを支えている実体経済は、
ところどころヒビが入り始めている」
という状況です。
投資家目線では、
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「AIだから買う」から
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「AI“なのに”どこまで買うのか」へ
軸足を移すタイミングに来ています。
事業会社の経営目線では、
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「AIを入れることそれ自体」ではなく、
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「どこで売上・利益・コスト削減と結びつくのか」
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「自社のキャッシュフローや顧客基盤に対して、AI投資のサイズは適切か」
という**“地に足のついたAI戦略”**が求められていると言えるでしょう。
気になった記事|トランプの「2000ドル配りたい」案と、共和党の本音
サブ記事として、**「関税収入で2000ドルの小切手を配る」**というトランプ案に対する共和党の反応を取り上げます。
記事によると:
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トランプ大統領は、
→ アメリカ人に1人あたり2000ドルの“小切手”を配る構想を打ち出している
→ 財源は関税収入 -
しかし、上院共和党は軒並み冷ややか
コメントはかなりストレートです。
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ケビン・クレイマー上院議員(ノースダコタ):
→ 「あまり乗り気じゃない(I’m not nuts for it)」 -
ジョン・スーン院内総務(サウスダコタ):
→ 関税収入は「かなり大きい」ので、
「債務返済など、有益な用途に使うべきだ」 -
シェリー・ムーア・カピト(ウェストバージニア):
→ 「関税収入は赤字・債務の返済に使うべき」 -
バーニー・モレノ(オハイオ):
→ 「赤字を減らすべき(I think we should pay down the deficit)」
要するに、
「低所得者に一時金を配るのも分かるが、
それより国の借金を減らせ」
というのが共和党上院側の大勢です。
一方で、手続き面ではこんなやり取りも。
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ジョン・ケネディ上院議員(ルイジアナ)は、
→ 「これは議会を通す必要があると思う」と発言 -
しかしホワイトハウス側は、
→ 議会の承認なしにチェックを送る方法を検討中
クレイマー議員は、
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「確かに低所得のアメリカ人が一息つけるという議論もできる」
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ただし、「インフレを悪化させる可能性がある」とも懸念
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トランプが議会承認を必要とするかどうかについては、
→ 「きっと試すだろう(He’ll test it)」とコメント
日本から見ると、
「またアメリカは給付金バラマキか」
とツッコミたくなりますが、
今回のポイントはむしろ、
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財政赤字への危機感が、共和党内でかなり共有されている
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それでもトランプは、
→ 有権者に直接アピールできる“現金給付カード”を手放す気はない
という、選挙政治 vs 財政規律の構図です。
ビジネス的には、
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「いつまた大規模な給付金や減税が出るのか」
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「それがインフレや金利にどう跳ね返るのか」
を読むうえで、
こうした**“政権と議会の温度差”**は要注意ポイントになりそうです。
小ネタ①|ターゲットの迷走:12四半期連続“パッとしない”売上
大手ディスカウントチェーンTargetのニュースも、実はかなり重たいシグナルを含んでいます。
記事によると:
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直近四半期も売上は低迷・減少が続き、
→ これで12四半期連続で弱い数字 -
株価は年初来で約35%下落
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それでも新CEOのマイケル・フィデルケは逆張りで、
→ 来年50億ドルを投資すると表明
→ 店舗・デジタル・商品を改善し、巻き返しを図る -
アナリストには、
→ 「最近の業績にフラストレーションを感じているなら、我々も同じだ」とコメント
つまり、
「お客さんの財布は軽くなっている。
でも、ここで投資を止めたら本当に終わる」
という、かなりしんどい局面です。
日本でいえば、
イオンやニトリが12四半期連続で売上弱いのに、
『ここでさらに大型投資します』と言っているようなものです。
これをどう評価するかは投資家次第ですが、
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「守りに入る小売」と
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「攻め続ける小売」
の差は、数年後にかなり大きな経営格差になっていそうです。
小ネタ②|クリムト236億円、アート市場は“超富裕層バブル”再開?
文化面からの小ネタは、アートオークション市場の復活です。
記事によると:
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クリムトの「エリザベート・レーダラーの肖像」(1914–1916)が、
→ サザビーズで**2億3,640万ドル(約236億円弱)**で落札 -
これにより、この作品は
→ サザビーズ史上最高額の落札作品
→ 20世紀アートとしても史上最高額
→ オークション全体でも、ダ・ヴィンチの「サルバトール・ムンディ」(4.5億ドル)に次ぐ歴代2位
レーダラー家は、ナチス侵攻前のウィーンで有数の大富豪でしたが、
ナチスによって多くの美術品を略奪された歴史があります。
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ただし家族の肖像画だけは残り、
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エリザベート本人は、
→ 自分がクリムトの子孫だとナチスに信じ込ませ、迫害を逃れたと伝えられています(記事の記述に基づくエピソード)。
現在のアート市場も絶好調で、
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サザビーズとクリスティーズは、それぞれ7億ドル超を売り上げ
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地政学リスクや関税不安などで
→ しばらく財布の紐が固かったコレクターたちが、
→ 再び“本気モード”で買いに来ている、とウォール・ストリート・ジャーナルは伝えているとのことです。
インフレ、金利、株価、為替——
普通の人には頭の痛いテーマばかりですが、
超富裕層は今日も静かに“別のゲーム”をしている、という現実を思い出させてくれるニュースでした。
編集後記
「AIがバブルじゃない」と聞いて、なぜか少し怖くなる理由
Nvidiaの決算を見て、
「AIバブルはまだ弾けてなさそうですね、よかったですね」と言われると、
なぜかあまり“よかった”感じがしないのは私だけでしょうか。
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GPUは売り切れ
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Blackwellはoff the charts
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AIエコシステムは世界中でスケール中
数字だけ見れば、たしかに景気のいい話です。
ところが同じ紙面の中で、
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Fedはデータ不足で頭を抱えつつ利下げ判断
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雇用統計は政府閉鎖の余波で欠測
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ターゲットは12四半期連続で元気がない
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でもクリムトは236億円で売れる
この組み合わせを眺めていると、
「これは“バブル”というより、
ただの世界の分断なんじゃないか」
という気持ちになってきます。
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AIと金融市場の上の方だけが、猛烈なスピードで回り続ける世界
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その下で、Targetのような“庶民の日常”を支えるビジネスがじわじわと疲れていく世界
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さらにそのずっと下で、雇用統計の“抜け落ちた数字”に含まれているはずの人たちの生活がある世界
そして、その全部をひっくるめて「景気は堅調」とか「ソフトランディング」とか呼ばれていく。
統計って、便利ですね。本当に。
そんな中でトランプは「関税で稼いだお金を2000ドルの小切手にして配りたい」と言い出し、
共和党の上院議員たちは「いいから借金返せ」と冷たく突き放す。
どちらも一理あるけれど、どちらも“ちょっと違う気もする”あたりが、
いかにもアメリカ政治らしいところです。
日本でも、
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「AIで生産性向上」
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「デジタル投資」
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「人的資本経営」
といった、きれいなスローガンが並ぶ一方で、
現場では
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「その投資、誰の残業で回すんでしたっけ?」
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「結局AI使ってるの、資料作成と議事録だけでは?」
という、静かなツッコミが飛び交っていたりします。
たぶん、完全に整合的な世界なんて来ません。
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どこかが過熱して、どこかが取り残されて、
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どこかがやけにうまくいって、どこかが全然うまくいかない。
そのアンバランスを**「まあ、そんなもんか」**と受け止めつつ、
自分のポジションだけはじわじわ調整していくのが、
ビジネスパーソンにできる現実的な防衛なのだと思います。
AIがバブルかどうかより、
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自分の仕事や事業にとって、
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「どのAIに、どの程度依存して良いのか」
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「もしそこがこけたとき、どこまで耐えられるのか」
このあたりを、
数字と感覚の両方で考えておくほうが、
よほど“バブル対策”として効く気がします。
Nvidiaの決算に一喜一憂しつつ、
スーパーでの買い物や決算短信の行間にもちゃんと目を通す。
そんな地味で、でもしぶとい視線を持ち続けたい——
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