AIバブルの“裏面”は欧州軍事株?――J.P.モルガンが語る「第二のAI」とFRBプロレス劇場

TECH:meme

深掘り記事|J.P.モルガンが見る「欧州ディフェンス=もう一つのAI」

今回のメインは、J.P.モルガン・プライベートバンクの2026年アウトルックに出てきた、ちょっと意外な投資テーマです。

「米国AI株が揺れるなか、“欧州ディフェンス”こそ、AI並みの長期テーマだ」

と彼らは言っています。

■ 防衛予算=もはや“テック予算”

まずポイントはこれです。

  • 防衛予算は、もはやテック予算だ

  • 特にヨーロッパでは、

    • ロシアの脅威に備えた防衛強化

    • AIブームで増える電力需要への対応
      という二つの理由から、「防衛」=「ハイテク+インフラ」になってきている

J.P.モルガンの米国投資戦略責任者ジェイコブ・マヌーキアン氏は、

「市場は欧州ディフェンスを、AIのような**“世俗的成長(セキュラー・ストーリー)”**としてまだ織り込んでいないが、
実はレベル感としてはAIと同等だと見ている

とコメントしています。

ここでいう「世俗的成長(secular)」は、
景気循環や一時的な政策ではなく、10年スパンで続く構造変化のイメージです。

彼らの見立てでは、

  • 欧州の防衛支出は、今後「倍増」してもおかしくない水準

  • それに伴って、

    • 電力インフラ(送配電、電力安定化)

    • 産業用電化(electrification)

    • 伝統的な軍需企業

まで、かなり広い範囲で投資チャンスが出てくるとしています。

■ もう始まっている「年3」の相場、でもまだ10年トレンドの序盤

欧州ディフェンス株は、すでに年初来+20%超の上昇と記事にあります。
AI株売り・“Sell America”の流れの中で、

  • 「アメリカAIテックは高すぎる」

  • 「でも、AI関連の恩恵は取りたい」

という資金が、欧州ディフェンスやインフラに流れてきている面もあります。

J.P.モルガンはこれを、

10年トレンドの3年目に入ったところ」

と表現しています。

つまり、

  • 足元の上昇は、あくまで立ち上がりフェーズ

  • 今後10年かけて、
    各国の防衛・電力・インフラ投資が積み上がる本番が来る

というストーリーです。

ここで重要なのは、

市場はまだ、欧州ディフェンスを“AI並みテーマ”として評価していない

とJ.P.モルガンが見ている点です。

AI銘柄はすでに、
「将来の利益をかなり先まで織り込んだバリュエーション」になっていますが、
欧州軍需・インフラ関連は、

  • 需要の伸びに対して

  • まだ“評価不足”の余地がある

というのが、彼らの主張です。

■ 電気料金が高い欧州で、AIは“二重苦”を連れてくる

なぜ「防衛×電力×AI」が欧州でセットになるのか。
記事は、エネルギー面の構造問題をこう整理しています。

  • 卸売電力価格が高く、電気料金は米国より割高

  • ロシアのウクライナ侵攻後、
    ロシア産パイプラインガスの30〜40%を失った

  • そこへAI需要で電力消費が爆増する可能性

その結果として、

  • LNG輸入ターミナル建設など、
    新たなエネルギーインフラ投資が不可避

  • 電化(electrification)、送配電網強化、再エネ+バックアップ電源…
    といった分野で、巨大な投資が積み上がる

という見立てです。

つまり、J.P.モルガンが描いているのは、

「AIが電力を食いまくる → 電力インフラ投資が爆増 →
それが欧州の“防衛的インフラ再構築”とリンクする」

という長期ストーリーです。

■ 「AI一本槍」のリスクを下げる“欧州ディフェンス”という分散

もう一つ、J.P.モルガンが強調しているのが**分散(diversification)**です。

同社グローバル投資戦略共同責任者スティーブン・パーカー氏は、

「欧州企業への投資機会は、
米国ストーリーとは質的に違う(differentiated)

とコメントしています。

さらに、マヌーキアン氏は、

「世界の超大国がグローバル化から一歩退こうとしている今こそ、
国際分散投資の重要性は一段と増している

と指摘。

要するに、

  • 米国AI株に集中しすぎたポートフォリオに、

    • 欧州ディフェンス

    • エネルギーインフラ

    • 産業電化関連
      を組み入れることで、

  • AIテーマと相関しつつも、中身が異なる収益源を持てる

というメッセージです。

■ 日本の個人投資家視点:どう咀嚼するか?

日本の個人投資家にとっても、この話は他人事ではありません。

  • 「AI関連=米国ハイテク数銘柄」のワンベット

  • 「日本株=自国市場だけ」のホームバイアス

どちらも、長期的にはリスクが高い構造です。

一方で、

  • 欧州ディフェンス株

  • 欧州エネルギー・インフラ株

となると、多くの日本人投資家にとっては情報ハードルが高いのも事実です。

ここは、

  • 個別株で無理に攻めるのではなく、
    **「欧州株インデックス+ディフェンステーマETF」**のように
    少しずつエクスポージャーを持つ

  • あるいは、
    日本国内でも

    • 防衛

    • 電力インフラ

    • 産業電化
      に関わる企業を、「AIの裏テーマ」として再評価する

といったアプローチが現実的かもしれません。

この記事が教えてくれるのは、

「AIバブルが怖いなら、AIの“周辺で稼ぐ産業”を見よ」

ということでもあります。

メインカジノのルーレット台(NVIDIA)で勝負するだけが、
AI時代の投資ではない、という発想の転換ですね。


まとめ|AI一本足打法から「防衛×電力×分散」へ

今回の一連の記事から見えてくるのは、
**「AIバブル不安」と「世界の分断」と「一極集中のリスク」**という三つのテーマが、
思った以上に深く結びついている、という構図です。

まずJ.P.モルガンは、
米国AI株への過度な依存に対する“出口”として、

  • 欧州ディフェンス株+エネルギーインフラ+産業電化

を「第二のAIプレイ」として提示しました。

そこには二つのロジックがあります。

  1. 構造的な支出増が、10年単位で続く見込み

    • ロシアの脅威に対応するための防衛費増

    • AIブームで増大する電力需要への投資
      → どちらも、政権が変わっても簡単には止まらない

  2. 市場がまだ“AI並みテーマ”として織り込んでいない

    • 年初来+20%とはいえ、
      AI銘柄ほど期待先行のバリュエーションではない

    • 「10年トレンドの3年目」という表現が象徴的で、
      まだ“初級編”というスタンス

同時に、FRBの利下げをめぐっては、

  • 議長・副議長・NY連銀総裁に加え、
    トランプ指名の3名の理事が「利下げ支持」に回る可能性

  • それでも過半数を取るには、
    バイデン指名の理事からあと1票が必要

という、かなり込み入った「票読み」が展開されています。

特に象徴的なのが、

  • トランプが解任しようとしているリサ・クック理事が、
    その“決め票”になり得るという、何とも皮肉な構図です。

一方で、トランプ自身の発言をきっかけに
民主党議員への死の脅迫が急増しているというニュースは、

  • 政治的分断

  • 言葉の暴力のエスカレート

  • 安全確保のための警備強化

といった、民主主義の根幹に関わる問題を浮き彫りにします。

そして共和党内では、

  • エプスタインファイル公開法案

  • 関税小切手

  • フィリバスター(議事妨害)の扱い

  • 州レベルでの選挙区割り

などをめぐり、
トランプ、議会指導部、個々の議員の間であちこちに亀裂が走っています。

これらを全部まとめて眺めると、

経済:AI+防衛+エネルギーに“偏る”世界

政治:一人のリーダーの言葉が暴力を呼び、
一つの党の中が細かく分断される世界 中銀:数票の差で金利が決まり、市場が一喜一憂する世界

という、「一極集中と分散のねじれた関係」が見えてきます。

日本のビジネスパーソンにとって重要なのは、
ここから引き出せる三つの教訓です。

  1. AI一本足打法からの脱却

    • AIど真ん中(NVIDIAなど)だけでなく、
      その周辺の“インフラ系テーマ”も視野に入れる

    • 欧州ディフェンスのような“地味だが構造的”な分野に、
      少しずつエクスポージャーを持つ

  2. 政治リスクは「数字」に出る前にポートフォリオに反映される

    • 死の脅迫、党内分裂、ルール改正の動きは、
      すぐには指標に現れません

    • しかし、それが積み重なると、
      政策の予見可能性・法の安定性をじわじわ蝕みます

  3. 金利・為替・株価の“プロレス”を、感情ではなく構造で見る

    • 「利下げ=株高」という単純図式ではなく、
      「なぜ利下げが必要なのか?」を問う

    • AIバブル不安も、
      「バリュエーションが高いから怖い」で終わらせず、
      「どのセクターにどんな歪みが溜まっているのか」に目を向ける

AI、欧州、防衛、FRB、トランプ、政治暴力。
一見バラバラなキーワードですが、
共通しているのは、

「どこか一箇所に期待とリスクが集中しすぎている」

ということです。

だからこそ、私たちの仕事もお金も、
できる限り「一極集中」から遠ざけておく。
それが、2026年に向けた一番の防衛策なのかもしれません。


気になった記事|「史上いちばん皮肉なFOMC投票」シナリオ

サブ記事として取り上げたいのは、
**「The funniest possible FOMC outcome(もっとも“笑える”利下げ決定シナリオ)」**です。

内容はかなりシュールです。

  • 今回のFOMCは、利下げをめぐって例年以上に割れている

  • ふつうはコンセンサスで決まるが、
    今回は1票差が状況を大きく変えうる

記事が描く“おもしろ最悪”シナリオはこうです。

  1. 中心メンバー(パウエル議長、ジェファーソン副議長、NY連銀ウィリアムズ総裁)が
    「利下げしよう」と決断

  2. そこにトランプ指名の3人の理事(ボウマン、ミラン、ウォーラー)が
    賛成に回れば、計6票

  3. しかしFOMCは12票なので、あと1票必要

ところが、

  • 今回投票権を持つ地区連銀総裁4人
    (グールズビー、コリンズ、ムサレム、シュミッド)は
    表向きどれも「利下げ慎重」なコメント

  • さらにバイデン指名の理事マイケル・バーも、
    インフレ警戒で利下げに消極的

となると、残る“キャスティングボート”はただ一人。

リサ・クック理事
(バイデンが任命し、しかも今まさにトランプが解任しようとしている人物)

という、めちゃくちゃ皮肉な構図になります。

  • トランプ派理事3人+パウエル+ジェファーソン+ウィリアムズ+クック
    → かたまりとして利下げ可決

  • その「決め票」を握ったのが、
    トランプがクビにしたがっているクック理事

というオチです。

もちろん、この記事自体が言っているように、
これは**「あり得る一つの可能性」**にすぎません。

ただ、

  • FRBの内部政治

  • トランプの影響

  • バイデン指名の理事の立ち位置

が絡み合うことで、
金利決定が「客観的な経済分析」だけでなく、
かなり政治色を帯びた票読みゲームにもなり得ることを示しています。

日本のビジネスパーソンとしては、

「利下げ/据え置き」の結果だけでなく、
「誰が賛成・反対したか」にも
少し目を配っておく価値がありそうだ

というのが、この話からの教訓かもしれません。


小ネタ①|「死刑に値する」発言のあと、議員への脅迫が急増

一つ目の小ネタは、かなり重い話です。

  • 民主党議員たちの事務所に、脅迫が“数百〜千件規模”で殺到

  • きっかけはトランプ大統領の投稿

「彼らの発言は**“死刑に値する(punishable by DEATH!)”**」

という一文でした。

元になったのは、
民主党の上院・下院議員たちが出した動画。

  • 軍人に対して、「違法な命令には従わないでほしい」と呼びかけた

  • それに対し、トランプが「反逆」「国家への裏切り」と激しく批判

  • SNS上で「逮捕すべき」「絞首刑に」といった投稿も拡散

その結果として、

  • エリッサ・スロトキン上院議員は、
    「24時間体制での警備」が付く状況に

  • 他の議員も、
    「脅迫が急増している」と一斉に証言

  • 一部の議員事務所は、
    トランプ本人の投稿についても捜査を求める書簡を出した

という流れです。

ここで大事なのは、

「大統領本人の言葉」が、脅迫・暴力のトリガーになっている

と議員側がはっきり認識している点です。

日本でも、「政治家の一言」が
世論や行政の現場を大きく動かすことはありますが、

  • 「死刑」

  • 「反逆」

といったワードが、
現役大統領の口からSNSで飛び出す世界は、
やはり別次元だな…と感じざるを得ません。


小ネタ②|共和党内プロレス:トランプvs議会vs議員たち

二つ目の小ネタは、共和党内の“内ゲバ”祭りです。

記事に出てきた「反乱ポイント」を並べると、なかなか壮観です。

  • エプスタイン・ファイル公開法案
    → トランプは「でっち上げだ」と反対してきたが、
    最終的にほぼ全ての共和党議員が賛成票

  • 関税小切手(2,000ドル)
    → トランプ&ホワイトハウスは前向きだが、
    議会共和党は「その金は赤字削減に回すべき」と冷淡

  • フィリバスター廃止
    → トランプが何度も「60票ルールやめろ」と迫るも、
    上院議員たちはあっさりスルー

  • インディアナ州の選挙区割り
    → 州議会共和党は、トランプの「再区割りせよ」という声を無視

さらに、
上下両院のリーダーであるジョンソン下院議長と、
スーン上院多数党院内総務の間にも軋轢がにじみます。

  • スーンが、
    「議員の電話記録が秘密裏に押収された場合に訴える権利」を
    認める条項をこっそり政府予算案に差し込む
    → ジョンソンは「そんな話聞いてない」と困惑

  • エプスタイン法案でも、
    ジョンソンは修正を求めたが、
    スーンは「このままがベスト」と譲らずそのまま可決

  • ロシア制裁の法案も、
    スーンが「これは下院発でやるのがいい」と
    ジョンソン側に“丸投げ”

一方ジョンソンは、
ベース議員のための数少ない武器である**ディスチャージ・ペティション(強制上程)**について、

「ルール変更も検討したい」

と発言し、
共和党議員から「そんなことを口にすること自体が危険だ」と
反発を受けています。

トランプvs連邦議会、
上院vs下院、
指導部vs平議員。

「マガ(MAGA)が全部を支配している」というより、
中でかなり激しいプロレスをしている

というのが、この記事から見えてくるリアルな姿です。


編集後記|「第二のAI」を探す前に、自分の“第一のワンベット”を疑ってみる

J.P.モルガンが
「欧州ディフェンスはAI並みの長期テーマだ」
と言い出したのを読みながら、
少しだけ苦笑いしてしまいました。

「みんなAIに突っ込みすぎたから、
次の“AIっぽくて、AIほど高くないもの”を探している」

という、人間らしい欲望が透けて見えたからです。

もちろん、ロシアの脅威、エネルギー構造、AIの電力需要。
どれをとっても、
欧州ディフェンスや電力インフラが長期テーマになるのは、
理屈としてはとてもよく分かります。

でも同時に、

  • 「AI」

  • 「GLP-1薬」

  • 「EV」

  • 「半導体」

  • 「ディフェンス」

どのテーマも、
「第二の〜」「○○バブルの裏側」とラベルが貼られた瞬間から、
“物語としての魅力”が先行し始めるのも事実です。

マーケットはいつも、

  • ひとつの物語に集中しすぎて

  • それに飽きると「次の主役」を探し

  • しばらくして「やっぱりリスク取りすぎてた」と反省する

というループを続けています。

個人的に一番怖いのは、
その「ループ」が、
自分の中でも回っていることです。

  • この銘柄だけは絶対大丈夫

  • このスキルさえあれば安泰

  • この取引先とだけ組んでいればビジネスは回る

そうやって、知らないうちに
自分の人生やキャリアを**“ワンベット・ポートフォリオ”**にしてしまう。

ニュースを追っていると、
アメリカもヨーロッパも、
そして日本も、
どこも「一箇所に賭けすぎている」ように見えます。

  • FRBは数票の差で利下げ/据え置きが決まる構図に縛られ

  • トランプの一言で、議員の身辺警護が強化され

  • デンマークのGDPは一社の薬に大きく依存し

  • 米株指数はAI数銘柄で説明できてしまう

そんな世界で、
私たちの持てる武器は案外シンプルで、

  • 収入源を分散する

  • スキルセットを分散する

  • 投資先を分散する

  • 「物語」と「数字」を分けて見る

くらいしかないのかもしれません。

J.P.モルガンのレポートを読んで、
「よし、欧州ディフェンスETFを買おう」と思う前に、
一度だけ立ち止まって、

「いま、自分の人生で一番“集中しているリスク”はどこか?」

を考えてみる。
それはもしかしたら、銘柄ではなく、

  • 健康

  • 家族

  • 仕事

  • 時間の使い方

といった、もっと身近なものかもしれません。

AIも、欧州も、防衛も、FRBも、トランプも。
どれも面白い話ですが、
最終的に守りたいのは**自分の生活の“ダウンサイド”**です。

その意味では、
「第二のAI」を探すゲームに参加しつつ、
自分の人生だけは**“分散ポートフォリオ”**であり続けること。

それが、
このカオスな2025〜26年を
そこそこ穏やかに乗り切るための、
一番地味で、一番効く戦略なのかもしれません。

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