「メタバース撤退戦とAI全振りモード」

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深掘り記事

◆ ザッカーバーグ、ついに「夢」から現金回収フェーズへ

今回のメインテーマは、Meta(旧Facebook)のメタバース大減速&AIシフトです。

記事によると、Bloombergはこう報じています。

  • Metaは来年、メタバース関連の予算を最大30%カットする方向

  • 早ければ**1月にもレイオフ(解雇)**が発生する見通し

  • 対象は、

    • QuestというVRヘッドセットのチーム

    • Meta Horizon Worldsという“没入型オンライン空間”のチーム

つまり、2021年に会社名まで変えて宣言した

「メタバースはモバイルインターネットの後継だ」

という大号令から、わずか数年で、実質的な撤退戦に入った格好です。

Horizon Worldsについては、2023年の時点で
「誰もいない幻想世界(deserted fantasyland)」と評されており、
肝心のユーザーから愛されなかった現実が記事でも紹介されています。

また、メタバースを担当するReality Labs部門は、
2021年以降で700億ドル超の損失を出してきたとBloombergは伝えています。
日本円換算はここでは置いておくとしても、
「会社の未来」と呼んだプロジェクトとしては、
かなりヘビーな“授業料”になっているのは間違いありません。


◆ 投資家は「歓喜」、株価は即+3%

面白いのは、市場の反応です。

  • メタバース予算の3割カット報道を受けて、
    Metaの株価は一日で3%超上昇

  • 時価総額ベースでは「数十億ドル」が一気に上乗せされたことになります。

つまり投資家は、

「ついにザッカーバーグがあの高コストプロジェクトから足を引き始めた」

とポジティブに受け取ったわけです。

メタバースは、

  • 投資家からは「金食い虫」

  • 規制当局やウォッチャーからは「子どもの安全にとって危険な無法地帯予備軍」

として長らく疑いの目で見られてきました。

ザッカーバーグ本人も、今年に入ってからは
メタバース関連の話題を公の場や決算説明でほとんど口にしなくなり
Reality Labs部門の従業員もすでに100人以上レイオフされています。

ここまで来ると、

「メタバースやるやる詐欺だったのか」

とツッコミたくもなりますが、
少なくとも今の株式市場は、

  • 「夢を語るザッカーバーグ」より

  • 「コストを切って利益を出すザッカーバーグ」

を求めている、ということがはっきりしました。


◆ そしてAI全振りモードへ:Llama 4のリベンジなるか

では、削った予算はどこへ行くのか。
記事は、その答えとして**「AIへの全振り」**を示唆しています。

  • Metaの最新チャットボットLlama 4は、ユーザーから見ると期待外れと受け止められている、と記事は書いています。

  • その巻き返しのためにも、
    メタバース側からAI側へ、人的・資金的リソースを移す狙いがある、と報じられています。

AI領域は、

  • インフラ(NVIDIAなど)

  • 基盤モデル(OpenAI、Google、Anthropicなど)

  • アプリケーション(各種SaaSやプロダクト)

で熾烈な競争になっていますが、
Metaは「広告モデル+AI」という、すでに収益構造の見えている土俵を持っています。

メタバースと違い、

  • 「AIで広告のパフォーマンスが上がりました」

  • 「クリエイティブ生成でROASを改善しました」

というような**“キャッシュに直結するストーリー”**を投資家に示しやすいのも事実です。

記事は断定していませんが、
この予算シフトは、

「見えない未来(メタバース)」から
「見えやすい未来(AI+広告+プロダクト)」へ

という、かなり合理的な資本配分だと読むこともできます。


◆ 生き残った“夢”は、顔にかけるRay-Ban

一方で、記事はRay-Banのスマートグラスに触れています。

  • このRay-Banコラボのスマートグラスは、
    ミックスドリアリティ(MR)系ウェアラブルとして好調だと記載されています。

  • Apple、Google、Snapchatなどが、
    これまでウェアラブル・ミックスドリアリティの分野で苦戦してきた中、
    MetaのRay-Banは比較的うまく滑り出している、としています。

皮肉なことに、

  • VRヘッドセット(Quest)+仮想空間(Horizon Worlds)という
    「フルセットのメタバース体験」ではユーザーを掴めず、

  • 見た目はほぼ普通のサングラスであるRay-Banのほうが、
    「日常に溶け込むテクノロジー」としてユーザーの支持を得ている、という構図です。

ここから読み取れるのは、

「人々は“未来の世界に飛び込む装置”より、
“今の生活を少しだけ便利にする道具”のほうを選ぶ」

という、ごく当たり前の事実です。


◆ 日本のビジネスパーソンへの示唆

事実ベースの話はいったんここまでとして、
ここからは意見も交えつつ、日本向けのヒントを3つだけ。

① 「社名を変えるレベルの大戦略」でも撤退はありうる

  • Metaは、会社名を変え、投資額も公表し、世界に向けて「後継テクノロジー」と宣言しました。

  • それでも3〜4年で「予算3割カット」まで舵を切っています。

つまり、

「一度大きく張ったから、もう後戻りできない」

というのは、ただの思い込みだ、ということです。
むしろ「引き際まで設計しておく」ことが、本当の大戦略なのかもしれません。

② “夢の大箱”より、“小さく日常に入り込むプロダクト”

  • メタバース空間は大失速しましたが、

  • 普通のRay-Banに近いスマートグラスは、静かに存在感を増しています。

DXや新規事業でも同じで、

  • 壮大な「バーチャル店舗」「メタバースイベント」より、

  • 日々の業務の“ちょっとした不便”を解消するツールのほうが、
    社内の支持を得やすい、というのは日本企業でも同じ構図でしょう。

③ 「夢」より「回収ストーリー」を投資家は見る

記事が描くのは非常に正直な世界です。

  • メタバース強化 → 株価は冷ややか

  • メタバース削減 → 株価+3%

投資家は、
「夢そのもの」よりも**“その夢がキャッシュフローにどう繋がるか”**を見ています。

日本企業も、

  • 生成AI

  • メタバース

  • Web3

などのキーワードを掲げるとき、
「それがP/Lのどこに効くのか」を筋道立てて説明する力が、
ますます求められそうです。


まとめ

今回のメイン記事と周辺のニュースをまとめると、
キーワードは**「撤退の技術」と「現実への回帰」**です。

まずMeta。

  • 2021年に会社名まで変えて宣言した“メタバース構想”。

  • その中枢を担うReality Labsは、2021年以降で700億ドル超の損失を計上。

  • 目玉サービスのHorizon Worldsは、「人がいない幻想世界」とまで言われる始末。

  • そして2026年に向けて、
    メタバース関連予算を最大30%カットし、レイオフも視野に入れている。

この決断に、市場は冷ややかどころか拍手喝采で、
株価は3%超上昇しました。

「メタバースやめます」とは誰も言っていませんが、
実態としては、

「未来の大きな夢」から
「今の収益を支えるAI・広告・プロダクト」への回帰

を意味します。

一方で、
Ray-Banのスマートグラスは静かにヒットの兆しを見せています。

  • ゴツいヘッドセットではなく、
    ほぼ普通のサングラスに見えるデバイス。

  • Apple、Google、Snapchatが苦戦する中で、
    メタのグラスは日常生活に溶け込む形でミックスドリアリティを浸透させつつあると記事は評価しています。

つまり、今回のニュースは

「バーチャル世界そのもの」より、
「現実世界を少し拡張する技術」のほうが、
いまの市場と生活者にはフィットしている

という流れを象徴しているとも言えます。

この構図は、
メディアや政治のニュースにも共通しています。

  • 2026年W杯の組み合わせ抽選会は、
    48カ国に拡張された“巨大イベント”となり、
    トップ4が準決勝まで当たらないように組まれるなど、
    現実のビジネスと政治の思惑が絡み合ったショーになっています。

  • 一方で、NYタイムズは、
    ペンタゴンの新しい取材ルールが
    「恣意的な運用を許し、異議申し立ての手段もない」として提訴。
    現場の記者は、「建物に入れなくても取材は続ける」としています。

どちらも、
「巨大な物語」と「地に足のついた現実」のせめぎ合いです。

日本のビジネスパーソンにとっての教訓を、あえて一言でまとめるなら、

「大きな夢を語るのは悪くない。でも、撤退ラインと現実の稼ぎ方まで含めて設計しておこう」

ということかもしれません。

  • どこまで投資をするのか

  • どこで減速するのか

  • どんな形なら、日常に溶け込んで使われるのか

Metaの方向転換は、
その“線引き”を考える良い材料になりそうです。


気になった記事

NYタイムズ vs ペンタゴン──「情報の扉」を誰が握るのか

個人的に一番気になったのは、
ニューヨーク・タイムズ(NYT)がペンタゴン(米国防総省)を提訴したニュースです。

事実関係を整理すると:

  • ペンタゴンは新しいメディアポリシーを打ち出した。
    その内容には、

    • 記者が国防総省関係者に対し、
      “事前にペンタゴン側が公開を許可していない情報”を求めることを禁じる条項

    • 建物内の一部エリアに、
      同伴者なしで立ち入ることを禁じる条項
      が含まれていた。

  • これに対し、NYTは

    • このポリシーは米国憲法修正第1条(表現・報道の自由)に反する

    • バッジ剥奪に対する異議申し立ての仕組みがなく、
      恣意的な運用を可能にしている
      として、国防総省と国防長官ピート・ヘグセットを提訴。

  • ウォール・ストリート・ジャーナル、Fox News、Newsmaxなど、
    合計30の主要メディアも新ルールを拒否し、
    バッジ返上=ペンタゴンから締め出される道を選んだ

結果として、
ペンタゴンにはいま、

  • トランプ政権に好意的なデジタルメディア中心の新しい記者団が入っており、

  • 伝統メディアは建物の外から取材を続けていると記事は説明しています。

これはアメリカ国内の話ですが、
日本のビジネスパーソンにとっても他人事ではありません。

  • IR説明会の参加条件

  • 自社イベントや記者会見の取材ルール

  • 行政の会見での質問制限

など、情報の“入口”をどう設計するかは、
企業や政府にとって大きな権限であり、
同時に「透明性への評価」と直結するポイントでもあります。

NYTの動きは、

「ルールを守るか、出禁を受け入れるか」

ではなく、

「ルールそのものの正当性を問う」

という姿勢をはっきり示した例です。

もちろん、
どこまでの行動が正しいかは国や状況によりますが、

「アクセスのために、質問の中身まで制限されるのはおかしいのでは?」

という問題提起は、
日本の報道・企業広報のあり方を考えるうえでも、
静かに効いてくるテーマだと感じました。


小ネタ2本

小ネタ①:W杯2026抽選会、トランプとともにカオスへ

スポーツ欄には、2026年W杯の組み合わせ抽選会の話題。

  • 開催地はアメリカ・カナダ・メキシコの3カ国共催

  • 参加国は従来の32から48カ国に拡大

  • しかも、本大会出場枠の一部は来年3月末まで確定しないため、
    抽選会では“技術的に”64チーム分のボールが使われるという、ややカオスな仕様です。

ルールもなかなか複雑で、

  • 各チームはFIFAランキングに基づいて4つのポットに振り分け。

  • ポットから1つずつボールを引き、4チームずつのグループを編成。

  • グループ内で総当たりし、上位チームが32強のノックアウトラウンドへ進む。

さらに今年は、

  • スペイン

  • アルゼンチン

  • フランス

  • イングランド

というトップ4が準決勝まで当たらないように調整された新システムが導入されます。
興行的には大変わかりやすい仕掛けです。

おまけに政治的な香りも強く、

  • 抽選会の会場はワシントンD.C.のケネディ・センター

  • そこにトランプ大統領が議長として出席

  • さらにFIFAのインファンティーノ会長が、
    ノーベル平和賞を逃したトランプを推して、
    FIFA初の“平和賞”を授与する可能性があると記事は伝えています。

サッカーと政治とイベント興行が、
これでもかとミックスされた“ワールドカップらしいカオス”と言えそうです。


小ネタ②:FBI、ついに「パイプ爆弾事件」の容疑者を逮捕

2本目は、かなり重たい小ネタです。

  • FBIは、2021年1月6日の米連邦議会襲撃事件前夜に発見されたパイプ爆弾事件の容疑者として、
    ブライアン・コール・ジュニア氏(バージニア州ウッドブリッジ在住)を逮捕。

  • 当時、ワシントンD.C.の民主党本部と共和党本部の外で爆弾が見つかり
    幸い爆発はしませんでしたが、
    当局は「爆発すれば死者が出た可能性が高い」と説明していました。

  • 記事が伝える範囲では、

    • 動機

    • 1月6日の暴動との直接の関係

  • 司法長官パム・ボンディ氏によると、
    コール氏は爆発物関連の罪で起訴されており、
    追加の罪状が加わる可能性もあります。

この事件は、約5年間にわたり陰謀論も含めて様々な推測を呼んできましたが、
ようやく「容疑者の名前」が公表された形です。

政治と暴力、治安と司法。
アメリカの“裏側”がにじむニュースでした。


編集後記

メタバースからの撤退、
AIへの全振り、
W杯抽選会に出てくる大統領、
ペンタゴンに訴えられる国防総省。

なんというか、
**「2020年代、情報と現実のバランス感覚がだいぶおかしなことになっている」**と感じるラインナップでした。

メタバースに700億ドル以上つぎ込んで、

「やっぱりちょっと減らします」

と言った途端に株価が上がる会社があり、

現実世界のサッカー大会の抽選会に、
なぜか大統領と“FIFA平和賞”の話が出てくる国があり、

その同じ国で、
報道機関は国防総省に出入りするためのルールをめぐって裁判を起こし、
建物に入れなくても取材を続けている──。

冷静に並べると、
なかなか壮大なコントです。

日本も他人事ではなくて、

  • 「メタバース展示場を作ります」

  • 「生成AIで働き方改革です」

  • 「DXで新しい顧客体験を」

といったスローガンと同時に、
現場では

  • Excelファイルはメール添付

  • 承認は紙+ハンコ

  • 会議は今日も対面で90分

みたいなギャップが、まだ普通に存在します。

今回のMetaのニュースが教えてくれるのは、

「大きな言葉はいくらでも言える。
でも、お金を払う人と使う人は、
もっと“地に足のついた何か”を見ている」

という、当たり前の事実です。

そして、これは個人にもそのまま返ってきます。

  • 将来のために投資しなきゃ、と焦りながら、
    NISA口座を開いただけで満足してしまう。

  • 新しいスキルを勉強しなきゃ、と本を買って、
    積ん読タワーを築いていく。

メタバースに700億ドルつぎ込んで、
結局Ray-Banのグラスが一番評価されているMetaを見ると、

「あ、これ、個人の人生でもよくあるやつだ」

と少しだけ親近感すら湧いてきます。

  • 壮大な“人生のビジョン”より、

  • 日々の習慣を1つ変えるほうが効く。

会社も個人も、
結局はそこに戻ってくるのかもしれません。

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