「アップルの“離職ドミノ”とAI迷走 ティムはまだCookできるのか」

TECH:meme

深掘り記事

◆ ティム・クックの「右腕たち」が次々と離脱

今回のメインテーマは、
**「アップルの幹部流出とAI出遅れへの不安」**です。

記事が伝えている事実だけを整理すると、ここ1週間のアップルはかなり激しい動きを見せています。

  • ティム・クック直轄の幹部クラスから、4人の退任が一気に発表

    • Alan Dye:インターフェイスデザイン担当VP → ライバルのMetaに転職

    • Kate Adams:法務トップ(General Counsel) → 来年退任

    • Lisa Jackson:環境・政策・社会イニシアチブ担当VP → 来年退任

    • John Giannandrea:AI担当トップ → 来年退任

  • さらにBloomberg報道として、

    • 自社チップ開発を率いるJohny Srouji(ハードウェアテクノロジー担当SVP)も
      「環境を変えることを検討している」とされ、
      アップル側が慰留に動いていると伝えられています。

アップルは1997年以降のCEOが

  • スティーブ・ジョブズ

  • ティム・クック

の2人だけという「超・長期政権」企業です。その直下の幹部が、ここまで短期間にまとめて動くのは**「かなりのボラティリティ」**と言わざるを得ません。

記事はそこに、
「AIで躓いたアップル」と、「人材流出」の二重苦を重ねて描いています。


◆ AIトップの“更迭”と、静かに進む人材流出

記事によると、AI部門トップのJohn Giannandrea氏は「押し出されるかたち」での退任です。

  • アップルは、

    • Siri

    • Apple Intelligence
      といった領域で、
      ハードウェア優位を十分にAI競争力につなげられなかったとされ、

  • その結果として、
    ChatGPT(OpenAI)やGemini(Google)に主導権を奪われた、という評価につながっています。

さらに記事は、

  • 研究者・エンジニアがMeta、OpenAI、AIスタートアップへ流出している

  • それがアップルのAI推進に、さらに大きなダメージを与えている

と伝えています。

ここまではあくまで「事実として記事が書いていること」です。


◆ ティム・クックの続投確率は「50%」?

CEO本人については、記事は次のように書いています。

  • ティム・クックは65歳になったばかりだが、
    すぐに退任する見通しはないとされています。

  • 本人は、今後の製品ラインアップについて前向きな姿勢を見せているものの、
    業界のウォッチャーからは疑念も出ていると記事は指摘。

  • 予測市場(prediction markets)では、
    「2026年末時点でクックがまだCEOに留まっている確率は、およそ五分五分」
    と見られている、としています。

つまり記事は、

「今すぐクビ」という話ではないが、
「このままの体制でAI時代を乗り切れるのか」という疑問は
市場にも業界にも広がり始めている

というトーンです。


◆ なぜここまで揺らいでいるのか:構造的なポイント(ここから意見)

ここからは、この記事を読んだうえでの私の見解です。
(※ここから先は事実ではなく「解釈・意見」です)

1)「ハード屋アップル」と「ソフト屋AI」のギャップ

記事は直接は書いていませんが、
本文を読んでいると、暗に見えてくる構図があります。

  • アップルは長年、
    ハード+OS+エコシステムを垂直統合で磨き上げる会社として成功してきました。

  • 一方、今のAI競争は、

    • 巨大モデル

    • クラウドインフラ

    • 研究者コミュニティ
      という、ソフト・クラウド中心のゲームになっています。

記事が強調するのは、

「アップルはハードウェアの優位を、AIやSiriの覇権へ十分つなげられていない」

という評価です。
このギャップが、幹部や研究者のモチベーションを削ぎ、
「外へ出たほうがAIにフルコミットできる」
という空気につながっていても不思議ではありません。

2)AI人材にとって「アップルでやる理由」が薄れている?

記事は、研究者やエンジニアが

  • Meta

  • OpenAI

  • AIスタートアップ

へ移っている事実だけを挙げていますが、
その裏には、

  • 「AIに全力投球したい人材」が

  • よりピュアにAIに賭けている組織へ流れている

という構図があります。

アップルの良さは、

  • プライバシーの重視

  • デバイス体験の美しさ

ですが、その分、クラウド中心での実験やスピード感ある展開がしづらい側面もあります。

「ハード起点でのAI」か、
「AI起点でのプロダクト」か。

この記事に登場する人材の動きは、
後者に賭ける人が増えている兆候として読むこともできます。

3)「ティムを降ろすか」ではなく「ティムの周りをどう再構成するか」

もう一つ重要なのは、
記事が**「クックはすぐには辞めない」**としつつ、

  • その周りの幹部がごそっと入れ替わる

  • 主要ポジションに空席と不安が広がる

という、“中間層の崩れ”を指摘している点です。

トップの交代はニュースとして分かりやすいですが、
実は企業にとって深刻なのは、

「CEOの右腕・左腕がごそっと抜ける」

タイミングだったりします。

今回アップルで起きているのは、
まさにそこです。


◆ 日本のビジネスパーソンへの示唆

最後に、このニュースを
日本のビジネスシーンに引き寄せると、
見えてくるポイントがいくつかあります。

  1. 「AI時代の幹部」は、役職よりも「どのテーマに賭けられるか」で動く

    • 肩書がどれだけ立派でも、
      自分がやりたいテーマ(AIなど)に本気で振り切れない組織からは、
      優秀層ほど静かに去っていく。

  2. 「成功したモデル」が強すぎるほど、次の一手が遅れる

    • アップルのように「ハード+エコシステム」で成功しすぎた企業ほど、
      AIのような“土俵が違うゲーム”へのピボットは難しい。

  3. 「トップの年齢」より、「トップ周りの新陳代謝」が重要

    • ティム・クックが65歳かどうかより、
      その周りにどれだけAIネイティブな幹部を引き寄せられるか——
      そこに、この記事の本質的な問題提起があるように感じます。


まとめ

今回の記事全体をざっくりまとめると、
**「テック大手の揺らぎ」と「世界の変なニュース」が一つの紙面に同居している」**感じです。

メインはアップルの話でした。

  • ティム・クック直轄の幹部4人が、
    ここ1週間で

    • 競合Metaへの転職

    • 来年の退任

    • AIトップの“押し出し型”のリタイア
      といった形で相次いで離脱。

  • さらに、チップ開発を率いる幹部も
    「環境を変えることを検討」と報じられ、
    アップルは慰留に動いているとされています。

  • AI領域では、
    SiriやApple Intelligenceが十分な優位を築けず、
    OpenAIやGoogle Geminiに主導権を奪われたと記事は評価。

  • その結果、
    研究者やエンジニアがMeta・OpenAI・AIスタートアップに流出し、
    アップルのAI体制はじわじわと細っている、と描かれています。

  • CEOティム・クック本人は65歳になったばかりながら、
    すぐの退任予定はないとされ、
    製品ラインアップにも前向き。
    しかし予測市場では、
    「2026年末にまだCEOかどうか」は五分五分と見られている、と記事は伝えます。

一方で、紙面の後半は
「世界のいま」を映す小さなニュースが並んでいます。

  • アートの世界では、
    NFTバブルを象徴したアーティストBeepleが、
    アートバーゼル2025で**“犬型ロボットがAIフィルター写真を“排出”し、
    一部がNFTになる”**という、
    デジタルとフィジカルを繋いだ新作を披露。
    1体10万ドルのロボ犬は完売という“現実”が報じられています。

  • 自動車では、
    トランプ大統領が「アメリカでTINY CARSを認可した」と投稿し、
    日本の**軽自動車(kei car)**に言及。

    • 全長約11フィート

    • 幅約4.9フィート

    • 高さ約6.6フィート
      というサイズ感のこのカテゴリーは、
      現行の米国安全基準は満たさないため、
      車両側・規制側の両方に手を入れる必要があるとされています。

  • 交通長官は、
    「高速道路にはたぶん向かない」としつつも、
    市場があるならメーカーにチャンスを与えたいとコメント。
    しかし、米国の自動車市場全体は
    「より大きく、豪華なクルマ」へ向かっており、
    新車1万ドルクラスの超小型車を、
    メーカーが本気で作りたがるかは不透明だと記事は締めています。

  • そのほか、

    • ロサンゼルス・パシフィックパリセーズ地区で
      山火事後初の入居許可が出た家の話

    • トランプ大統領がケネディセンター・オナーズを主催した話

    • ルーヴル美術館のエジプト考古学関係の図書館で配管が破裂し、
      19世紀のものを含む書籍300〜400点が水に浸かった話

    • そして、2028年の民主党大統領候補になりそうな顔ぶれが
      それぞれどんな動きをしているかの“週刊ゴシップ”風まとめ

などが並んでいます。

テック大手の動揺から、
アートフェアでロボ犬がNFTを“排出”し、
アメリカが軽自動車を「TINY CARS」と呼んでみる——

「AIと政治とポップカルチャー」が、
ごちゃっと一つの紙面に詰め込まれている感じ
が、
いかにも2025年らしいニュースセットだな、という印象でした。


気になった記事

「TINY CARS」でアメリカの車社会は変わるのか?

個人的に一番「お?」と思ったのは、
トランプ大統領が軽自動車(kei car)を“解決策”として持ち出したニュースです。

記事によれば、

  • トランプ大統領はTruth Socialで、

    1. 「アメリカでTINY CARSの製造を認可した」
      と投稿。

  • これは、
    自動車の価格高騰問題を解決する一手かもしれないとして
    言及されたものだ、とされています。

ここで登場する「kei car」とは、記事の説明では:

  • 日本のカテゴリーで、

    • 長さ:最大約11フィート

    • 幅:最大約4.9フィート

    • 高さ:最大約6.6フィート
      の範囲内に収まる小型車・トラック・バンのこと。

  • かつてアメリカでも売られていたガソリン車のSmart Car(最後のモデル)ですら、
    日本基準のkei carには大きすぎ・パワーがありすぎると記事は説明しています。

つまり、
本当に「日本式の軽」をアメリカでやろうとすると、かなり小さいクルマになる
ということです。

ただし、ここで大きな壁として挙げられているのが安全基準

  • 現状のkei carは、
    そのままではアメリカの安全基準を満たさないため、

    • 車両の仕様

    • 規制側のルール
      双方に手を入れる必要があると記事は指摘します。

  • 交通長官Sean Duffy氏は、

    • 高速道路を走りたい人には「たぶん不向き」

    • それでも「そうした車に対する市場があるなら、
      メーカーにチャンスを与えたい」と発言。

一方で記事は、
アメリカの自動車市場全体の流れとして、

「米国市場は、より大きく、よりラグジュアリーな車へ向かっている」

というコメントを引用しています。
そのうえで、

  • 新車で1万ドル程度の“超小型車”を、本気で作りたがる自動車メーカーがどれだけいるのかは不透明
    と指摘しており、
    「大統領の一声=すぐ実現」という雰囲気ではまったくありません。

この記事から見えてくるのは、

  • 価格高騰の問題に対して、
    「小さくシンプルなものを作ればいい」という発想と、

  • 実際の市場が求める
    **「大きくて快適で、かつ安全であること」**とのギャップです。

日本の軽自動車を知っている側から見ると、
「確かにアメリカの都市部で軽が走っていたら面白いな…」と思う一方で、
記事に書かれている通り、

「安全基準」と「ユーザー嗜好」と「メーカーの採算」

という3つの条件を同時に満たすのは、
相当ハードルが高そうだ、というのが正直なところです。


小ネタ2本

小ネタ①:Beepleの「ロボ犬NFT製造機」、しれっと完売

NFTバブルの象徴的存在だったアーティストBeepleが、
アートバーゼル2025に新作を持ってきました。

  • テーマは**「Regular Animals」**。

  • 会場に登場したのは、
    **有名人の顔を付けた“肌色のロボ犬”**たち。

  • モデルとなったのは、

    • Beeple本人

    • Jeff Bezos

    • Mark Zuckerberg

    • Andy Warhol

    • Elon Musk

    • Pablo Picasso
      それぞれ2体ずつ。
      Beepleは各タイプに「アーティストプルーフ」も1体ずつ持っているそうです。

仕組みもなかなかシュールです。

  • 各ロボ犬の胸にはカメラが付いており、
    歩き回りながら写真を撮影。

  • その画像がAIフィルターにかけられ、
    一部が**「犬の後ろ側」からプリントとして“排出”**。

  • 会期中に約1,000枚のプリントが出力され、
    そのうち約256枚にはQRコードが付与され、
    スキャンするとNFTとして引き換えられる——という仕掛け。

お値段は1体10万ドル
そして完売

Beepleは2021年に、
「Everydays: the First 5,000 Days」というコラージュNFT作品を
約6,930万ドルで売ったことで知られていますが、
その後NFT市場が冷え込むなか、
今回は**「フィジカル×デジタル」の連携作品**へとピボットしています。

アートなのか風刺なのかビジネスなのか、
よく分からないところが、
2025年っぽくて非常に良いです。


小ネタ②:パリのルーヴル、美術品ではなく“本”が水没危機

世界有数の美術館ルーヴルからは、
「絵画ではなく本が危ない」というニュース。

記事によると:

  • 先週の洪水の影響で、
    エジプト古代美術部門の図書室の一室で配管が破裂

  • その結果、

    • 300〜400冊の書籍

    • ビジュアル系の定期刊行物

    • 考古学雑誌
      などが水浸しになりました。
      中には1800年代のものも含まれるとのこと。

  • 現在、被害点数の正確な把握が進められており、
    職員が乾燥・除湿作業に追われているといいます。

もともとルーヴルでは、
2026年9月から空調設備(HVAC)の大規模改修が予定されており、
今回被害を受けたエリアもその対象に含まれていたそうです。

フランスの美術史家Didier Rykner氏は
La Tribune de l’Artで、

  • エジプト部門は以前から、
    天井裏を走る老朽化した配管の危険性を指摘し、
    書籍を守るための予算措置を再三求めていた

と書いており、
「知っていたけれど、手当てが遅れた」
という典型例のようにも見えます。

絵画や彫刻に比べると、
「図書室の本」はニュースとしては地味ですが、
研究者にとっては代替のきかない一次資料でもあります。

AIだメタバースだと騒ぐ一方で、
物理的な紙と配管1本で、
文化資本が簡単に危機に晒される——
そんな2025年の現実も、
静かに突きつけられたニュースでした。


編集後記

アップルのニュースを読んでいて、
一番じわっと来たのは「予測市場では、2026年末までクックが続投している確率は五分五分」というくだりでした。

冷静に考えると、

  • 売上は依然として巨大

  • キャッシュも潤沢

  • ブランド力も依然高い

そんな企業のCEOが、
「2年後にまだいるかどうか」で50%

AIの競争ゲームに入った瞬間、
企業の「時間の流れ方」が、
人間の感覚とまったく合わなくなってきている感じがします。

一方で、アートバーゼルでは
ロボ犬がAIフィルター写真を“排出”し、
一部にQRコードを付けてNFTに変えるという、
高度に資本主義的で高度にくだらない作品が完売しています。

自動車の世界では、
日本の軽自動車が「TINY CARS」として
アメリカの物価高の「解決策」として持ち上げられつつ、
記事のトーンは

「いや、それ本当に作りたいメーカーどれくらいいるの?」

と、わりと冷めています。

そしてパリでは、
華やかな展示室の裏で、
老朽化した配管が破裂し、
19世紀からの書籍がびしょ濡れになっている。

AI、NFT、大統領令、予測市場。
いろんな“未来っぽいワード”が並ぶなかで、
結局ニュースの芯にあるのは、

  • 「人材が抜ける」

  • 「誰かが決断を先送りする」

  • 「古いインフラが、そのまま放置される」

という、とても人間くさい話です。

アップルの幹部流出も、
ルーヴルの配管も、
日本の中小企業の後継者問題も、
構造はそんなに変わらないのかもしれません。

  • 「今は大丈夫そうだから」

  • 「もう少し様子を見てから」

  • 「そのうちちゃんと対応しよう」

そうやって先送りしているうちに、
気づいたらロボ犬は10万ドルで売れ、
軽自動車は“国家プロジェクト風のネタ”になり、
自分の足元のパイプだけが、静かに軋んでいる。

このメルマガを読んでいる方の多くは、
経営者だったり、
チームを率いる立場だったり、
あるいは自分のキャリアを
自分で舵取りしないといけない世代だと思います。

ニュースに出てくるのは、
いつも「どこか遠い世界」の人たちの話ですが、
その裏にあるのは、
「決めないでいると、だいたい悪い方向に転がる」
という、身も蓋もない真実です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました