折りたたみ元年:Apple参戦でスマホ戦線が変わる

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折りたたみiPhone、いよいよ現実味——“追随するApple”が勝つ理由

Android勢が道を切り拓いてきた折りたたみスマホ市場に、ついにAppleが参戦する見込みです。コードネームはV68。ブック型で開くと小型タブレットになるタイプで、2026年9月ごろ/約2,000ドルの価格帯が有力と報じられています。Samsung・Motorola・Googleが先行するこの領域で、なぜ今Appleなのか。結論から言うと、**「遅れて出して主導権を取る」**のがAppleの常套手段だからです(Apple Watchが好例)。

先行組が整えてくれた“レール”

  • 完成度の底上げ:最新のGalaxy Z Fold 7は“普通のスマホの延長”と評される出来。中国メーカーHonorは“世界最薄級”ブック型を投入。

  • 欧州での初週販売が倍増:HonorのMagic V5は前モデルの約2倍と発表。市場が温まり始めたシグナルです。

  • 市場規模:折りたたみはまだ**シェア1〜2%**のニッチ。ただし技術的ハードルが下がり、量産・歩留まり(製造の成功率)が改善。

Appleが“敢えて後出し”する狙い

  • ユーザー体験の作り込み:ヒンジ、折り目表示、重量・厚み、アプリの2画面最適化など“最後の5%”が体験を左右。

  • エコシステム連携:iPad/Macとの連携UI、iCloud、AirDrop、Apple Pencil的アクセサリまで含めて**“面”の価値**を出すのが得意。

  • 価格と差別化:標準iPhoneより高価格でも、Proより“新しさの物語”が強い。過去のMacBook Airがそうだったように、初代が物足りなくても世代重ねで“定番化”するのがAppleの流儀。

それでも課題は山積み

  • 電池と薄さのトレードオフ:薄く軽くするとバッテリー持ちに響く。折りたたみは可動部の故障率・修理費も高止まり。

  • 価格バンド:約2,000ドルはiPhone最上位を超える設定。“何で差額を回収するか”(生産性・創作・ゲーム・マルチタスクの具体ユース)が鍵。

  • Vision Proの教訓“高価格×用途未整備”は失速のリスク。折りたたみは明確な日常ユース(分割マルチタスク、外出先の資料チェック等)を打ち出せるか。

日本の読者が知っておくべき“買い時”の勘所

  • 第1世代は“実験台”:ヒンジ耐久・折り目の見え方・外装強度は2〜3世代目で一気に改善が通例。

  • アプリの最適化状況:ブラウザ・Office・PDF・SNS・動画編集など、分割表示に最適化しているかを確認。

  • 下取り・保険:修理費が高いためAppleCare等の保証下取り価格が重要(総保有コストの管理)。

  • 仕事ユースの実益:**“小型iPad的な使い道”**を日常でどれだけ持てるか。会議・出張・移動時間の効率化に刺さるなら投資価値大。

用語補足:歩留まり=製造時に良品として出荷できる割合。折りたたみは可動部・柔軟OLEDの難度が高く、コストに直結します。


要点の箇条書き

  • 折りたたみ市場は1〜2%のニッチだが完成度は急上昇

  • Appleは後出しで体験を作り込み、エコシステムで包む戦略。

  • 最大の壁は電池・価格・修理コスト。用途の明確化が勝敗を分ける。

  • 第1世代は見送り、第2〜3世代で本命買いが現実的。


まとめ

折りたたみスマホは、長く“理想のカタチ”として語られてきました。画面は広く、持ち運びは小さく。この当たり前の願いを真正面から叶える発想だからです。一方で、ヒンジの耐久性、画面の折り目、重量、そして価格。理想と現実のギャップが“最後の5%”として残り、**「面白いけど、日常で使い切れるか?」という問いに、明確な答えを出せないままでした。ここに来てSamsungやHonorの完成度が一段上がり、欧州の売れ行きにも芽が出てきた。市場はようやく“温度が上がる予兆”**を見せています。

そんなタイミングでApple。彼らの強みは、個別機能の競争ではなく、体験の編曲にあります。折りたたみのマルチタスクを、iPad・Mac・AirPods・iCloudと繋げ、「やることが速く終わる」という実益に落とし込む。アクセサリやアクセシビリティまで詰めて、“高いけど毎日使う”道具に仕立てるのが最も得意です。とはいえ、価格は約2,000ドル。Vision Proのように用途が定着しない高級ガジェットは失速のリスクがある。だからこそ、Appleは発売までにビジネス・学習・創作・エンタメの具体シナリオを積み上げてくるはずです。

私たちユーザーの「買い時」は、第2〜3世代が現実的。ヒンジ・折り目・重量・電池・アプリ最適化が揃う確率が高いからです。それまでの間は、ブラウザ2枚+メモ、PDF校正、出張のスライド修正など、**自分にとっての“日常ユース”が本当に多いかを見極めましょう。“新しさ”ではなく“時間短縮”が言い切れるなら、投資回収は早い。逆にSNSや動画視聴が中心なら、標準iPhone+大きめiPadの二刀流の方が快適かもしれません。結局のところ、折りたたみは“画面を増やすことで、何を減らせるか”**の勝負。バッグの荷物や作業時間、移動ストレス——あなたが減らしたいものに、ぴたりと当てはまるなら、そのときが“買い”です。


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クルマの“全部タッチ化”に逆風——ボタン回帰の兆し

運転中のタッチ操作は危険——反応速度は、合法範囲のアルコールや大麻、さらにはテキスト送信よりも遅れるとの調査結果が出ています(TRL)。それでも97%の新型車(2023年以降)に画面が搭載されるのは、コスト安・共通プラットフォーム・OTA更新(ソフトの無線配信)に有利だから。
ただし、89%のドライバーが物理ボタンを好むという調査(What Car?)。最近はVW・スバル・ヒュンダイが、空調や音量など“盲操作”が必要な機能に物理ボタンを戻す
方針を示し、欧州の安全評価機関Euro NCAPタッチ画面の影響を評価に反映へ。日本でも、ナビはタッチ、走行系はダイヤル・ボタンという**“ハイブリッドUI”**が主流になりそうです。

チェックポイント

  • 走行中によく触る機能(温度・風量・音量・デフォッガー)はワンプッシュで届くか。

  • ハンドルの物理ショートカットが有効か。

  • OTAアップデートでUI改善の余地があるか。


小ネタ1

来年の“ぱっと見”を決める色:Pantoneの存在感

Pantoneは毎年“時代のムード”を映すカラー・オブ・ザ・イヤーを選定。色は購買を左右する——その事実を企業に再確認させるためでもあります(そしてコンサルもやってます)。過去には2色同時の年も。D2Cや飲料・コスメの新商品はこのトレンドに敏感。日本でも季節限定パッケージが色で話題化→SNS露出→棚取り強化、の流れは鉄板です。


小ネタ2

“グレー外壁+サンセリフ体”は悪なのか?——“ジェントリフィケーション・デザイン”論争

街の表情が同じグレーの箱無機質なサインに染まる——そんな嘆きから生まれたのが“ジェントリフィケーション・フォント”という皮肉。代表格はNeutraface(Shake Shackでお馴染み)。開発・管理コスト、HOA(管理組合)ルール、テレビ番組の画一化影響など経済合理性の副作用で、“同じ顔の街”が増殖。もっとも、低コストで建てられる“グレーの箱”が低所得向け住宅にも拡張され、見た目だけでは“高級化=追い出し”と単純に断じられない現実も。見た目と社会的影響を分けて議論したいテーマです。


編集後記

折りたたみiPhoneの話題、ガジェット好きにはたまりませんね。個人的に一番の関心は**“時間がどれだけ短くなるか”です。新しい道具は、最初の1週間は楽しくても、その後は「面倒が増えたか、減ったか」で評価が決まります。メールを見ながら資料に注釈、地図と予約画面を並べて旅程調整——この“並べて同時に済ます”体験が、どれだけ滑らかに、指の記憶に馴染むか。ここにAppleの真骨頂が出るはず。
一方で、車のUIに“ボタン回帰”の流れも象徴的でした。便利=安全とは限りません。最先端と人間の感覚の
ちょうどいい境界**を、企業もユーザーも探っている段階。読んでくださって、ありがとうございます。

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