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世界最大のゲーム買収劇 ― EAが非公開化へ
『FIFA』『The Sims』『Apex Legends』で知られるElectronic Arts(EA)が、史上最大のLBO(レバレッジド・バイアウト)で非公開化されることになりました。買収総額は550億ドル(約8兆円)。
取引の全貌
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株価:1株210ドル、直前株価から25%の上乗せ
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出資者:サウジ政府系ファンドPIF、米シルバーレイク、クシュナー氏のAffinity Partners
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融資:J.P.モルガンが200億ドルを提供
これは2007年のTXU買収(450億ドル)を超え、世界最大級のLBO案件。そしてゲーム業界では、マイクロソフトのActivision Blizzard買収(690億ドル)に次ぐビッグディールです。
サウジの「次の石油」戦略
今回の買収で注目すべきは、サウジが主導している点。
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若者文化=ゲームをテコに、世界的な影響力を拡大
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石油依存脱却の「経済多角化」の一環
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すでにScopely(49億ドル)を買収済み
ゲームは“娯楽”から“外交カード”に。サウジは**「次世代の石油」**を握ろうとしているわけです。
投資家目線での魅力
EAはもはや「一発ヒット頼み」ではなく、ライブサービス型ビジネスで安定収益を確立。
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Apex LegendsやFIFAの課金要素が巨大なキャッシュフローに
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サブスクサービス「EA Play」で定期収益も拡大
投資家にとっては、石油や不動産のように「読める資産」になっています。
まとめ
EA買収は、ゲームが**「遊び」から「国家資産」へ進化した象徴的な出来事**です。
かつては「任天堂かソニーか?」とハード競争を論じていた業界が、いまや石油国家や巨大ファンドの投資先になっている。これは偶然ではありません。ゲームはSNSよりも長く、映画よりも深く、音楽よりも世界中の若者に浸透しているメディアだからです。
サウジはその影響力を理解しています。EAを手にすることで、単なる収益だけでなく、文化・価値観への影響力を得る。これは中国がハリウッド映画に投資し始めたときと同じ構図です。違いは、ゲームが“インタラクティブ”であるため、プレイヤー自身が物語に参加する=浸透力が段違いという点。
懸念もあります。資本の論理が強まれば、ゲームは「マネタイズ重視」に傾き、斬新なIPやリスクある挑戦は減るかもしれません。ガチャや課金に依存しすぎれば、ユーザーの熱は冷めます。一方で、インディーゲームが“自由な対抗軸”として脚光を浴びる可能性も高い。
結局、この買収は「資本と文化のバトル」の始まりにすぎません。EAが単なる“課金マシン”になるのか、それとも資本を背景に新しいゲーム文化を切り拓くのか。私たちは、ゲーマーの視点で冷静に見守る必要があります。
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編集後記
EAのニュースを読んで、正直「ゲーム=石油」というフレーズが頭に浮かびました。かつては「ゲームは子どものおもちゃ」だったのに、今や国家が外交カードとして奪い合う存在。文化の重みが資産価値に直結する時代に突入しています。
でも、私はひとりのゲーマーとして思います。どれだけ資本が流れ込もうと、**「面白いかどうか」**が最後の勝敗を決める。『Among Us』や『Minecraft』のように、小さなスタジオから世界を席巻するタイトルが生まれるのもゲーム業界の醍醐味です。
サウジがEAを買収しても、コントローラーを握るのは私たち。未来のゲーム文化を決めるのは、資本でも政治でもなく、結局プレイヤー自身だと思うのです。
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