トピック
シューマー案に進歩派がブチギレ
米国議会で再び政府閉鎖が目前に迫るなか、**チャック・シューマー上院少数党院内総務(民主党)**が浮上させた「7〜10日間だけの暫定予算案」構想に、進歩派が猛反発しています。
進歩派の怒りポイント
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交渉力を失う:閉鎖後に短期延長を飲めば、共和党に主導権を握られる。
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“小出し対応”の繰り返し:3月の資金繰り騒動と同じ展開になる恐れ。
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支持基盤への裏切り:最低賃金や医療支援拡充など進歩派の優先政策が後回しに。
プログレッシブ議員団(Progressive Caucus)のグレッグ・カサール下院議員はSNSで「Hell no!」と即拒否。インディビジブル(市民運動団体)も「小指の約束と引き換えに交渉権を捨てるなんて戦略じゃない」と痛烈批判。
民主党内部の亀裂
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下院の一部議員は「シューマーが本気なら反乱も辞さない」と発言。
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無名議員からは「なぜ“おじいちゃん”がこんなことを?民意とズレている」との辛辣コメントも。
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シューマー側は「時間がない」と強調するも、具体策は示さず。
一方で、共和党のジョンソン下院議長は「俺たちに大義あり」と豪語。民主党が内輪揉めしている間に、主導権を握ろうとしています。
まとめ
アメリカの「政府閉鎖」は、もはや恒例行事のようになっています。しかし今回の騒動は、単なる与野党対立ではなく、民主党内の亀裂が前面化している点で注目です。
シューマー案の本質は「とりあえず閉鎖を回避して時間を稼ぐ」こと。しかし進歩派から見れば、それは**譲歩の連鎖を招く“自爆戦略”**です。結局、共和党に有利な条件で妥協させられ、最低賃金、医療、気候対策といった自らの旗印政策を棚上げにされる。だからこそ「Hell no」という強烈な拒否反応が出ているわけです。
また、進歩派は単なる理想主義者ではありません。彼らの支持基盤である若年層・都市部の有権者にとって、「闘わない民主党」ほど失望を買うものはない。大統領選や中間選挙を控え、党内で「妥協派 vs 戦闘派」の構図が鮮明になるのはリスクです。
一方、共和党のジョンソン下院議長は「道徳的にも戦術的にも我々が優位」と豪語。さらに「募金パーティー禁止令」を議員に出し、閉鎖回避より献金優先と叩かれる口実を封じています。このしたたかさと対比すると、民主党の内輪揉めは余計に目立ちます。
結局のところ、政府閉鎖そのものの経済的影響は限定的とされます。問題は「政治的な印象」。進歩派が妥協を許さず、シューマーが短期延長を強行した場合、民主党支持者の士気低下は避けられません。
今回の騒動は、閉鎖リスクそのものよりも「民主党が自らの分裂を世間にさらけ出すか否か」という点で重要です。つまりこれは、単なる予算問題ではなく、**次の選挙に直結する“党内アイデンティティの戦い”**なのです。
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ジョンソン議長「募金禁止令」発令
マイク・ジョンソン下院議長は、政府閉鎖が迫る中で議員に対し「今週は募金イベント禁止」と通達。共和党が「自分たちは閉鎖阻止に集中している」と主張する材料に。皮肉なことに、上院共和党は予定通り**ジョージア州でリトリート(合宿)**を実施予定というユルさ。
小ネタ2本
① シャヒーン上院議員、影の公聴会を開催
医療保険の補助金(ACAプレミアム補助)が年末で切れると保険料が急騰する―。これを訴えるため、ジャンヌ・シャヒーン議員が「影の公聴会」を企画。民主党は来年の中間選挙で「医療費高騰」を武器にする構えです。
② ACA補助金、共和党からも妥協の芽?
保守派のロジャー・マーシャル上院議員(カンザス州)が「所得上限を設けるなら延長に賛成もあり」と発言。これまで強硬だった右派からも歩み寄りのシグナル。医療費問題は、超党派妥協の“突破口”になるかもしれません。
編集後記
シューマー案をめぐる今回の騒動は、アメリカ政治の「永遠のジレンマ」を思い出させます。すなわち、理想を貫くか、現実で妥協するか。日本の国会でも似た構図を見ますが、アメリカの場合は「政府閉鎖」というリスクが現実化する分、ドラマ性が増します。
個人的には、進歩派の「Hell no!」という反応には共感する部分があります。短期延長で先送りばかりでは、結局何も変わらない。とはいえ、閉鎖で一般市民が被害を受けるのも事実。このジレンマをどう解くかは、政治家ではなく有権者が何を選ぶかにかかっているのかもしれません。
「おじいちゃんは時代遅れ」と言われたシューマーですが、逆に言えば「現実政治のベテラン」でもある。進歩派の怒りと現実政治の板挟み―これこそがアメリカ民主主義の縮図なのでしょう。
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