【深掘り記事】
「1,000倍の夢」は終わった──2025年、ビットコインが静かに示した“成熟の現実”
2025年のビットコインは、久々の“静かな一年”でした。
10月に史上最高値を更新したにもかかわらず、その後は急落し、12月時点では 10万ドル割れ。
年初からの上昇分はほぼ溶け、1,000ドル投資 → 1,072ドルという、誤差のようなリターンしか残っていません。
「いや、まだ上がるはずだ」
「これは押し目だ」
「いや、もう終わった」
投資家の間に広がるのは、いつもの“暗号資産あるある”ではなく、もっと冷静な空気です。
背景に何があるのか?
今後どうなるのか?
そして、なぜ「100倍時代の終わり」がこんなに重く受け止められているのか?
専門家コメント、投資行動の分布、そして構造的な成熟ポイントから、ビジネスパーソン向けに整理します。
1|今年のビットコインは“弱い”のではなく“成熟した”
Galaxy Research のリサーチ責任者 Alex Thorn は、こう述べています:
「1000倍、100倍、あるいは10倍のBTC上昇は、おそらくもう終わった」
暗号資産界の“信仰告白”のようなこの発言は、
2025年ビットコイン市場が「新しいステージ」に入ったことを示します。
① 上昇はしたが“過去の熱狂と比べると凡庸”
-
年初1,000ドル → 現在1,072ドル(+7.2%)
-
米国債よりは上だが、株式指数に大きく劣後
-
10月の最高値から急落し、投資家心理は冷却
仮想通貨黎明期の「何倍にもなる世界」は、
ETF化・金融機関参入・機関投資家のヘッジ運用によって、急速に“株式市場化”しています。
2|それでも“ほぼ全員が利益”という謎の構造
興味深いのは、
オンチェーンで保有されているBTCの大部分が“含み益”だという事実。
つまり、
-
短期勢(取引所・ETF) → 損切り・微益
-
長期勢(ウォレット保有者) → ほぼ全員が利益
という“二層構造”が完成している点です。
③ 長期保有者の中央値は2.5年
短期のノイズでは動かない。
むしろ今回の下落も“何度も見た風景”として淡々と握っている。
これは「成熟市場の証拠」です。
3|投資家の“決断の年”──ここからどう動くべきか
今がまさに分岐点です。
A|乗り続ける人
-
ビットコインは“価値保存手段”へ移行
-
含み益があるため売り圧力が限定
-
ETF運用が底堅さを作る
→ 長期資産として保有し、ポートフォリオの一部に組み込む
B|降りる人
-
“100倍の夢”は終わった
-
リスク対比リターンが株式・債券と同水準になりつつある
-
ボラティリティの割に旨味が減少
→ リスク資産としての優先順位が低下
どちらが正しいという話ではありません。
むしろ重要なのは、
ビットコインが「投機から資産」へ変わったことを、投資家側がどう理解するか
です。
**4|2026年に向けた“静かな大問題”
──AIバブルの波とBTCの相関が急上昇**
TSMCの売上成長鈍化が報じられたように、
AIブームの“持続性”に疑問が出始めています。
2024〜2025年はAI熱狂でNASDAQが牽引した結果、
BTCとAI銘柄の相関が高まっていました。
つまり今後:
-
AI設備投資が鈍化
-
半導体需要が調整
-
金融引き締め局面が再来
という展開になると、BTCにも“逆風”が吹きやすい。
ビットコイン単独の問題ではなく、
“マクロ資金循環の波”と連動し始めているわけです。
**5|結論
──ビットコインは“日本円でいう金(ゴールド)”に近づいた**
今日の重要ポイントはこれです。
ビットコインは「夢の投機商品」から「現代の金」へシフトした。
-
リターンは落ち着く
-
長期資産として扱われる
-
急騰・急落はあるが、上値余地は“現実的”に
-
ETF経由で資金が継続流入
もはやビットコインは“宝くじ”ではない。
“金”に似た存在になり、成熟市場として動き始めています。
【まとめ】
停滞は終わりではなく、成熟のサイン──“これからのBTC”の見方を整理**
今回のビットコイン下落は、
ニュース的には「100,000ドル割れ」でセンセーショナルに扱われています。
しかし、その裏側にある本質は、
ビットコインという資産の成熟化
に他なりません。
以下の3点が重要です。
1|短期的な停滞は、市場が“正常化”している証拠
ETF化、金融機関の参入、資金の層の厚さ……
こうした要因によって、ビットコインは「株式市場と同じ構造」になりつつあります。
つまり:
-
上がり続けることはない
-
何倍にもなる構造ではなくなる
-
しかし“急落してゼロに戻る”ことも減る
極端な上下が“減る”という、成熟市場の特徴が表れているわけです。
2|実はほとんどの保有者が含み益
オンチェーン分析では、
BTC保持者の大半が“利益状態”。
短期の取引所ユーザー(ETF含む)が損を抱え、
ウォレット保有者(ガチホ勢)が利益を維持するという構図。
“ビットコインは売られない”
と言われる理由はここにあります。
3|BTCは“金に近づいた”──長期資産への変貌
2020年代初頭までのビットコインは「投機の象徴」でした。
しかし2025年以降は、
-
リターンは落ち着く
-
長期保有が増える
-
機関投資家の比率上昇
-
マクロ要因との連動強化
と、性質が完全に変わっています。
つまり、
BTCは“暗号の金”と呼ぶべきフェーズに入った。
夢の100倍銘柄ではないが、
長期資産としての役割はむしろ強化されている。
【気になった記事(1本解説)】
Visa・Mastercardの“カード拒否時代”が到来する可能性**
20年続いた訴訟に、ようやく決着の兆し。
両社は interchange fee(加盟店手数料)を 0.1ポイント引き下げる提案を提示しました。
ただ、衝撃なのはここです:
加盟店が“特定カテゴリのカードを拒否できる”ようになる
これは金融業界的に非常に大きい変化です。
① リワードカード(ポイント還元カード)が拒否される
手数料が高いため、
高還元カードほど加盟店の負担が大きい。
つまり今後は、
-
店:「ポイント3%のカードは使えません」
-
客:「え?」
という時代が来る可能性がある。
② 小売団体は強く反発
特に National Retail Federation などは、「不十分だ」と反対。
裁判はまだ続く可能性が高い。
【小ネタ①】
TSMC、AIブームに“息切れ感”が出てしまう**
2024年以降、AI特需で最も勝った企業 TSMC の売上成長が、
2024年2月以来の低水準に落ち込み再び議論を呼んでいます。
“AIは永遠の成長ではない”という象徴ニュース。
【小ネタ②】
Targetの店員がやたら優しい理由が判明**
米小売大手 Target が導入した新ルール:
-
10フィートで笑顔
-
4フィートで話しかける
レタスを買うだけで笑顔とコミュニケーションがついてくる。
アメリカの「接客のプロレス感」は年々増している気がします。
【編集後記】
“100倍じゃないビットコイン”をどう扱うかという話**
ビットコインの記事を読むと、
かつての熱狂を知る世代からはよくこんな声が聞こえます。
「なんだよ、全然上がらないじゃないか」
でも私は思うのです。
むしろ、これこそが正常では?
冷静に考えると、本来の資産とは:
-
ゆっくり増える
-
一瞬で暴落しない
-
長く持つことで報われる
-
生活や社会に影響される
という性質を持っています。
ビットコインが成熟し、株式市場のように動き始めたということは、
“健全化のプロセス”と言えます。
もちろん、
「夢がなくなった」という気持ちも分かります。
でも、夢がなくなった代わりに得たものがあります。
資産としての信頼性です。
投機の刺激が薄れる代わりに、
“長期保有の積立資産”としての役割はむしろ強まっています。
そして投資家にとって最も大事なのは、
「成長する市場」に投資することよりも、
「続く市場」に投資することです。
ビットコインはその“続く側”へ確実に移行しています。
投資の世界は、
一撃必殺より、長期継続の方が圧倒的に強い。
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