「AIバブルが怖い人のための“新興国という逃げ道”」

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◆ AIバブルが怖い人は、どこに逃げればいいのか?

ウォール街は「AIはバブルじゃない」と繰り返しています。
しかし、実際にお金を動かす投資家の中には、

「さすがに高すぎない?」

と不安になっている人も少なくありません。

今回の記事で登場するのは、英銀HSBCのグローバル株式ストラテジスト、アラステア・ピンダー氏です。
同氏が提案しているのは、

「AIは持ち続けた方がいい。でも、それを新興国株でやるのもアリですよ」

という、ちょっとひねりのあるアプローチです。


◆ 新興国株でもAIに乗れる理由

記事によると、HSBCの分析ではこんな事実が示されています。

  • 新興国株のうち約45%がAIテーマに何らかの形で関わっている
    → この比率は米国株とほぼ同じ水準

  • HSBCがスクリーニングした「新興国AI関連株バスケット」の予想PERは18倍

  • 一方、S&P500全体は予想PER25倍

つまり、AI関連エクスポージャー(関与度)はほぼ同じなのに、バリュエーションは新興国の方がかなり安い、という構図です。

ピンダー氏はこう語っています。

「AIトレードがちょっと怖いというなら、新興国はAIエクスポージャーを持ちながら、
全面崩壊したときのダウンサイドリスクを、米国株ほどには負わずに済むかもしれない」

これは、AIを完全に“降りる”のではなく、
「持ち方を変える」というリスク管理の提案だといえます。


◆ 今年はそもそも「ex-U.S.(米国以外)」の年だった

ここで重要なのが、2025年の株式市場の実績です(記事ベース)。

  • MSCI ex-U.S.(世界株:米国除く)
    → 年初来 +27%

  • S&P500(米国株)
    → 年初来 +16%

つまり、今年は「米国最強!」ではなく、
**「米国以外が米国をアウトパフォームした年」**だった、という事実があります。

それでもなお、多くの投資家はポートフォリオの過半を米国株に寄せたままで、
ピンダー氏いわく、

「国際株は依然として“アロケーション不足”で、相対的に割安だ」

と見ています。


◆ それでも「安いから買え」は危険だとHSBCは言う

ここが今回の記事の良いポイントですが、
HSBCは決して、

「アメリカはダメ。安いヨーロッパや新興国に行こう」

とは言っていません。

ピンダー氏ははっきりと、

「“米国は悪くて欧州は安いから買い”という発想は、よい理由ではない」

と述べています。

彼の見立てはこうです(ここは記事で述べられた内容の要約):

  • 世界的な景気刺激策(stimulus)の効果

  • ドル安(weaker dollar)の進行可能性

  • 株式の希薄化(dilution)の低下

  • 海外からの資金流入(foreign inflows)の回復

こうした具体的なカタリストが、国際株の再評価(rerating)を後押しし得ると見ているわけです。

要するに、

「割安+追い風材料が揃いつつあるから、ex-U.S.に目を向けよう」

というロジックです。


◆ 「AIを捨てるな、持ち方を変えろ」が今回のメッセージ

記事の結論に近い部分では、こんな趣旨のメッセージが書かれています。

  • FRBの利下げ(Fed easing)

  • 希薄化の減少(falling dilution)

  • ドル安(weaker dollar)

  • 海外からの資金流入(renewed foreign inflows)

これらが揃えば、国際株の上昇余地はまだある。

ただしウォール街全体からのメッセージは、

「AIエクスポージャーを完全に手放して防御に走るな。
“守りながら、AIは持ち続けろ”

というものだ、と記事はまとめています。

ここから先は私の意見ですが、
AIテーマを「全部かゼロか」で考えると、どうしても極端なポジションになりがちです。

今回のHSBCのスタンスは、

  • AIそのものは長期テーマとして維持

  • ただし「米国グロース一極集中」は崩し、

  • 新興国・欧州など複数の土台に分散してAIを持つ

という考え方で、「AI長期&バブル警戒」の両方を両立させようとする提案とも読めます。


まとめ

今回のメイン記事をひと言で整理すると、

「AIから降りるのではなく、“米国から一歩はみ出したAI”を持とう」

という話です。

事実として記事が伝えているのは:

  • 新興国株の約45%がAIテーマに絡んでおり、米国株と同程度のAIエクスポージャーがある。

  • その新興国AI関連株の予想PERは18倍で、S&P500全体の25倍より割安。

  • 2025年は、MSCI ex-U.S.指数が+27%、S&P500が+16% と、米国以外が優位な一年だった。

  • それでも国際株はまだアロケーション不足で、割安感が残っている。

  • カタリストとして

    • FRBの利下げ

    • ドル安

    • 希薄化の減少

    • 海外からの資金流入
      などが挙げられる。

  • HSBCは米国株やAIテーマ自体に「弱気」なのではなく、
    米国以外により強気」というスタンスである。

そのうえで、メッセージは明快です。

「AIバブルが怖いからといってAIをゼロにするのではなく、
持ち方をずらしながらリスクを下げるという発想を持て」

ここから先は私の意見ですが、日本の個人投資家にとっても、この視点はかなり使えます。

  • 「米国AIグロース一極」に疲れた人は、
    → 新興国や欧州などにAI+バリュー要素を組み合わせていく

  • ただし、「安いから」という理由だけではなく、
    → 通貨、政策、資金フローといったカタリストの有無もセットで見る

というスタンスが重要になってきます。

教科書的には「世界に分散を」が正解なのですが、
現実には「S&P500だけでいいのでは?」という誘惑も強い。

そんな中で、AIリスクとバリュエーションのバランスをとりつつ“ex-U.S.”を増やすという考え方は、2026年以降の長期戦略として、一度冷静に検討する価値があると感じます。


気になった記事

「キャリアリスク」が国際分散を邪魔する

2つ目の記事は、「国際分散投資は合理的なのに、なぜ広がらないのか?」という問題を、**人間の心理と“クビになりたくない心理”**から切り取っています。

記事に登場するAptus Capital Advisorsのポートフォリオマネージャー、ジョン・ルーク・タイナー氏はこう言っています。

「S&P500と似たポートフォリオを持っていても、クライアントはあなたを解雇しない。
彼らが見ているニュースは米国株の話ばかりだから」

さらに、

「一番早くクビになる方法は、“外国株に強い確信を持って投資すること”だ。
もしそれが正しかったとしても、クライアントはあまり気にしない。
間違えれば、すぐに新しいアドバイザーを探し始める」

と、かなり本音を語っています。

記事はこれを**「キャリアリスク」と「ホームバイアス(自国株偏重)」**の典型例として紹介しています。

一方で、チャールズ・シュワブは動画プレゼンテーションの中で、

  • 米国株と国際株は完全には相関していない

  • 米国市場のボラティリティが、必ずしもそのまま海外市場に波及するとは限らない

  • 米国が長く勝ち続ける局面のあとで、海外市場が優位になる局面もあり得る

と説明しています。

また、欧州株などは、米国株ほどテクノロジー偏重ではないため、
セクター分散と地域分散の両方の意味を持つことも指摘されています。

記事は最後に、「ある家族が数千ドルを払って資産アドバイスを受けた結果、国際株ゼロのポートフォリオを提案された」というエピソードを“極めて個人的な例”として紹介しつつ、
データ上も米国アドバイザーは海外比率をかなり低くしがちだとしています。

教科書は「市場は効率的」と教えますが、
愛国心やニュースバイアス、クビになりたくない心理が入り込むと、
実際のポートフォリオはまったく効率的ではなくなっていく——
そのリアルをうまく切り取った記事だと感じました。


小ネタ2本

小ネタ①:国際投資“30%ルール”へのゆるい入り方

「じゃあ具体的にどう国際分散を始めるの?」という疑問に答えているのが、3本目の記事です。

  • Wellington Managementのマルチアセット・ストラテジスト、ナネット・アブホフ・ジェイコブソン氏は、

    • 国際投資も基本は**「利益成長(earnings growth)」を見ろ**としつつ、

    • 2026年に向けては米国と日本に大きなチャンスがあると述べています。

  • その中でも、

    • バリュエーションの割安さ

    • コーポレートガバナンスの改善

    • 通貨面の効果(円安が続けば追い風)
      などから、わずかに日本を米国より好むスタンスを示しています(円については議論の余地あり、ともコメント)。

  • 国際投資への入り口としては、

    • MSCI ex-U.S.のような広範な国際株インデックスファンドへのドルコスト平均法を推奨。

    • 目標としては、株式ポートフォリオ全体の**30%程度を国際株にする“市場ウェイト”**をじわじわ目指すイメージです。

いきなり全世界にフルベットするのではなく、「インデックス+時間分散」でゆっくり国際比率を上げていくという提案は、精神衛生的にもかなり現実的です。


小ネタ②:民間宇宙飛行士がNASA長官候補に

全然違うジャンルですが、最後のニュースは宇宙の話。

  • トランプ大統領がNASA長官に指名しているのは、
    民間宇宙飛行士で起業家のジャレッド・アイザックマン氏

  • 記事によると、アイザックマン氏は上院の公聴会で、

    • 自身は「私益のためではなく」

    • アメリカ人を再び月に送り出し、さらに深宇宙を目指す
      という方針を語る予定とのこと。

  • 上院商業委員会の委員長テッド・クルーズ上院議員は、

    • 彼を「安定性・説明責任・NASA職員への敬意を重んじる人物」と評価し、

    • 「アメリカは宇宙探査の覇権を維持しなくてはならない」として、早期承認を訴える見込みです。

  • これはアイザックマン氏にとって2回目の証言で、
    4月にも公聴会に出ていますが、いったん指名が取り下げられ、11月に再指名されています。

宇宙開発も、国際分散も、長期戦という意味では同じ匂いがします。
違いは、後者は我々のポートフォリオが月に行かないことくらいでしょうか。


編集後記

「AIバブルが怖いなら、新興国でAI持ちましょう」
——なんだか健康診断で、

「揚げ物は減らしましょう。ただし完全にはやめないでくださいね」

と言われているような感覚になりました。

AIから降りる勇気もないし、
かといって米国グロース一極も怖い。

そんな我々のメンタルを、
「新興国ならちょっと安いですよ」となだめてくるHSBC。
正論なのがまた、悩ましいところです。

一方で、アドバイザー側の本音として語られた

「S&P500に似ていればクビにならない」

という一文は、妙に胸に刺さります。

投資は自己責任と言いながら、
結局は「人からどう見られるか」「外れたときに責められるか」で、
ポートフォリオが決まってしまう場面が多い。

たとえば、

  • AI銘柄が爆上げしているときにAIを持っていない

  • 日本だけ下がっているときに日本株比率が高い

  • 米国以外が強い年に、完全米国一本勝負を続けている

どれも、後から振り返れば「そういう年もある」で済む話なのに、
リアルタイムでは「やってしまった」「置いていかれた」と感じがちです。

今回の記事を読んでいて思ったのは、

「市場そのものより、“他人のポートフォリオ”の方が怖い」

ということでした。

SNSやニュースで、誰かのリターンだけが切り取られて流れてくる。
そのたびに、自分のポートフォリオの“遅さ”が気になってしまう。

でも、HSBCのストラテジストも、Aptusのポートフォリオマネージャーも、
チャールズ・シュワブの運用責任者も、
みんな冷静に「世界に分散しましょう」と言っている。

つまり、プロほど実は「派手さ」より「持続性」を重視している、ということです。

AI、米国、新興国、欧州、日本。
全部を完璧に当てることはできませんが、
せめて**「一点集中で一緒に沈む」だけは避ける設計**は、
自分の頭でやっておきたいところです。

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