🔥 深掘り記事
正直に言うと、このニュースを最初に見たとき、多くの人はこう思ったはずです。
「え、核融合?」と。
Trump Media & Technology Group(以下、TMTG)。
Truth Socialの親会社であり、ここ数年は「SNS企業」というより「話題先行型の上場会社」として知られてきた企業です。そのTMTGが、核融合企業TAE Technologiesと合併すると発表しました。
まず、事実を整理します。
【事実】
TMTGの株価は、この発表を受けて一時40%超上昇しました。
しかし、その前提として忘れてはいけないのは、この1年で株価は約70%下落していたという点です。
業績面も厳しく、2025年最初の9か月間の売上は300万ドル未満。メディア企業としては、ほぼ「スケールしなかった」と言って差し支えありません。
TMTGは、これまで金融サービス、AI、動画配信など、さまざまな分野に手を伸ばしてきました。ですが、市場の評価を劇的に変えるには至らなかった。
そんな中で打ち出されたのが、**核融合という“究極の未来技術”**です。
合併相手のTAE Technologiesは、決して無名企業ではありません。
【事実】
TAEは25年以上の歴史を持ち、これまでに約13億ドルの資金を調達。出資者にはGoogle、Chevron、Goldman Sachs、Charles Schwabなどが名を連ねています。
核融合とは、原子を割る「核分裂」とは異なり、原子を融合させてエネルギーを生む仕組みです。太陽と同じ原理で、理論上は非常にクリーンで安全なエネルギー源とされています。
ただし、ここが最大の注意点です。
【事実】
核融合は、いまだ商用化されていません。
人類はまだ「安定的に電力を取り出す」段階に到達していない。TAE自身も、すぐに売上が立つとは言っていません。計画では、2026年に合併完了、来年から建設開始、2031年に発電開始を目指すとされています。
それでも市場は、このニュースに強く反応しました。
なぜか。
答えは、核融合そのものよりも、AI時代の構造にあります。
生成AIブームの裏側で、いま最も深刻になりつつある問題。それは電力です。
AIはソフトウェアの塊に見えますが、実体はGPUとデータセンターの集合体。モデルが高度化すればするほど、消費電力は跳ね上がります。
【私見】
これまでAI投資は「どのモデルが勝つか」「どの半導体が強いか」という議論が中心でした。しかし今、市場はその一段下、インフラを見始めています。
「結局、最後に足りなくなるのは電気ではないか?」
この問いに対する、極端で、しかし分かりやすい答えが核融合です。
もう一つ重要なのは、この合併がTMTG自身の変質を示唆している点です。
【事実】
TMTGは合併後、Truth Socialや金融・動画配信事業を抱える持株会社になると説明しています。一方で、関係者は「統合会社はエネルギー専業になる可能性がある」とも語っています。Truth Socialなどの資産は、売却や分離の可能性がある。TAEのCEOは、この点について肯定も否定もしていません。
【私見】
これは「メディア企業が核融合に挑戦する」というより、**「上場企業という器を使って、未来技術に資金を流し込む」**動きに見えます。
上場会社は、資金調達装置です。そこに「人類史級の物語」を載せれば、株価は動く。ただし、物語が先行する相場は、必ず後から現実に追いつかれます。
政治的な要素も無視できません。
【事実】
Donald Trump Jr.が統合会社の取締役に就任予定。核融合は核分裂よりも規制が軽い分野とされており、政治との距離感も注目点です。
最後に、冷静な一文を。
【事実】
核融合が、トランプ政権の在任中に商用化される可能性は低い。記事も明言しています。
つまりこれは、短期の儲け話ではなく、AI時代の電力問題に対する超長期の賭けです。
【私見】
市場は忍耐が苦手です。その市場が、忍耐を必要とする技術に恋をした。
2025年の相場を象徴する出来事だと思います。
🧭 まとめ
今回の「トランプ・メディア×核融合」は、奇抜な企業ニュースに見えて、実はかなり示唆に富んでいます。
ポイントは三つです。
第一に、AI相場の重心がインフラへ移り始めていること。
第二に、未来技術が「上場企業のストーリー」として消費され始めていること。
第三に、市場の忍耐力が試される局面に入ったこと。
核融合は、人類にとって革命的な技術になる可能性があります。しかし、投資家にとって重要なのは「技術が正しいか」よりも、「いつ、どの形でキャッシュフローを生むか」です。
今回のニュースは、「AIの次の制約条件は電力だ」という共通認識が、投資家の間で芽生え始めたサインでもあります。一方で、その認識が先走りすぎれば、期待と現実のギャップは拡大します。
夢を見るのは悪くありません。ただし、夢と決算は別物です。
2026年に向けて、この二つの距離感が、相場の最大テーマになっていくでしょう。
🧪 気になった記事
「イーライ・リリー、“痩せた後”を取りにいく」
イーライ・リリーが発表したのは、肥満治療の次のフェーズを見据えた一手でした。
【事実】
同社は、経口GLP-1薬「orforglipron」について、注射型GLP-1使用後でも体重維持に効果があるという後期臨床試験結果を公表し、FDAに承認申請したと発表しました。
GLP-1注射薬は、最大20%前後の減量効果が期待できますが、コストや副作用で中断すると、多くの場合、体重が戻る。ここが業界全体の課題でした。
【私見】
orforglipronは、「痩せる薬」ではなく「戻らない薬」としてのポジションを狙っています。これは医療的にも、ビジネス的にも非常に合理的。
市場が素直に株価を評価したのは、「次の成長ストーリー」が見えたからでしょう。
☕ 小ネタ①
「中央銀行、もう足並みはそろわない」
今週は主要中銀ウィークでした。
FRBは利下げ、BOEも利下げ、ECBは据え置き、日銀は利上げ見通し。
【私見】
これは異常ではありません。各国経済が、同じ病気ではなくなっただけです。
投資家にとっては、国ごとの金利と為替を、真面目に考えないといけない時代が戻ってきました。
☕ 小ネタ②
「夢は語れるが、時間は買えない」
核融合、AI、肥満治療。
どれも人類にとっては明るい話題です。ただし共通点があります。時間がかかる。
【私見】
相場は希望を織り込むのは得意ですが、待つのは苦手です。
だから未来技術相場は、必ず揺れます。夢を否定する必要はありませんが、夢と決算を混同すると、だいたい痛い目を見ます。
✍️ 編集後記
昔、「未来のエネルギー」といえば原子力でした。
次に再生可能エネルギー。
そして今、核融合です。
どの時代も、人類は「これで全部解決する」という言葉が好きです。でも、全部解決したことは一度もありません。新しい技術は、古い問題を一つ減らし、別の問題を二つ増やす。いつもそうです。
今回のニュースで一番面白いのは、トランプ・メディアが核融合に行ったことではありません。
AIが、ついに“電気”という現実にぶつかったことです。
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